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債権法改正、保証債務(その1) のページ

民法 第3編 債権
第1章 総則
第3節 多数当事者の債権及び債務
第5款 保証債務

             第1目 総則

446条 ~ 465条

[経過措置]施行日前に締結された保証契約に係る保証債務については、旧法が適用される(附則21条1項)。

  保証契約の分類(文献③396頁)

1 保証契約の成立過程による分類

① 主債務者からの委託を受けて保証人となる場合

② 主債務者からの委託を受けないで保証人となる場合

ⅰ 主債務者の意思に反しない場合

ⅱ 主債務者の意思に反する場合

2 保証人の属性による分類

ⅰ 個人保証 保証人が自然人である場合

  保証人保護の要請が働く。   

ⅱ 法人保証 保証人が法人である場合

  そのうち、保証を業とする法人による保証を

  「機関保証」という。

3 主債務と保証債務との関係による分類

ⅰ 普通保証 ⅱでないもの

ⅱ 連帯保証

4 主債務と保証債務との関係による分類

ⅰ 普通保証 ⅱでないもの

  特定の債務を担保する保証

ⅱ 根保証

 一定の期間に継続的に生ずる不特定の債務を担保する保証

a 信用保証

  継続的取引から生ずる不特定の取引上の債務の保証

b 不動産賃貸借の賃借人が賃貸人に負う債務の保証

c 身元保証

 雇用契約の被用者が使用者に損害を与えた場合の保証

5 主債務の内容による分類

ⅰ ⅱでないもの

ⅱ 主債務=事業のために負担する債務[事業債務]

6 主債務の内容による分類

ⅰ ⅱでないもの

ⅱ 主債務=金銭の貸渡し又は手形割引を受けることによって負担する債務(貸金等債務)

 

○ 民法446条(保証人の責任等)

1項 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。

2項 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。(平成16年改正により追加)

3項 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。(平成16年改正により追加、平成29年改正により改正)

1 保証の意義(文献③402頁)

① 保証人と債権者との間の契約関係

② 保証人は債権者に対し、

  主たる債務者(主債務者)が債務を履行しないときに、

  主債務者に代わって債務を履行する内容の債務を負う。

2 保証の特徴と課題(文献③402~403頁)

① 個人保証の場合には、主債務者・保証人間の人間関係(親族や知人に頼まれて、やむを得ず保証人になる)がきっかけとなることが多い。

② 個人保証の場合には、保証人が保証に伴うリスクを計算しないで保証人となることが多い。

③ いざ保証債務を履行せざるを得ない事態となると、保証人が履行可能な金額を超過することもあり、主債務者のみならず、保証人も経済的に破綻することもある。

④ 個人保証の保証人を保護する制度が必要である。

もとの民法規定にはそのような制度はなかったため、改正により当該制度が導入された。

3 書面要件(本条2項)

 保証人の保証意思が書面に表れておれば足り、契約書の作成は不可欠ではないと一般的には解されている(文献③403頁)

4 電磁的記録(本条3項)

 合意の成立に必要な保証人の保証意思そのものが電子データで表示されることが必要と解すべきである(文献③404頁)。

○ 民法447条(保証債務の範囲)

1項 保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。

2項 保証人は、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定することができる。

○ 民法448条(保証人の負担と主たる債務の目的又は態様)

1項 保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。

2項 主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない。(平成29年改正により追加)

 

旧448条(保証人の負担が主たる債務より重い場合)

 保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。

1 2項の新設

  保証債務の付従性(成立・内容・消滅について主債務に付従すること)から、保証契約締結後、主債務が加重された場合された場合であっても、保証人の負担は加重されないと解されていたが(平成29年改正前)、この考えを明文化した。

2 保証契約締結後、主債務が縮減された場合、保証人の負担もそれに応じて縮減されると解されていたが(平成29年改正前)、この点については、明文が設けられず、改正前と同様、1項の解釈に委ねられることになった。

3 経過措置

附則21条1項 施行日前に締結された保証契約に係る保証債務については、なお従前の例による。

→ 保証債務に関する平成29年改正法の規定は、施行日以後に締結された保証契約について適用される。

 但し、新465条の6、新465条の7について、附則21条2項3項。

○ 民法449条(取り消すことができる債務の保証)

 行為能力の制限によって取り消すことができる債務を保証した者は、保証契約の時においてその取消しの原因を知っていたときは、主たる債務の不履行の場合又はその債務の取消しの場合においてこれを同一の目的を有す独立の債務を負担したものと推定する。

(平成11年改正により改正)

○ 民法450条(保証人の要件)

1項 債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は、次に掲げる要件を具備する者でなければならない。

一 行為能力者であること。

二 弁済をする資力を有すること。

2項 保証人が前項第二号に掲げる要件を欠くに至ったときは、債権者は、同項各号に掲げる要件を具備する者をもってこれに代えることを請求することができる。

3項 前二項の規定は、債権者が保証人を指名した場合には、適用しない。

○ 民法451条(他の担保の供与)

 債務者は、前条第一項各号に掲げる要件を具備する保証人を立てることができないときは、他の担保を供してこれに代えることができる。

○ 民法452条(催告の抗弁)

 債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。

 ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。

 

1 保証債務の補充性=主債務者が債権者に支払わない場合に支払う。

2 補充性のあらわれ

① 催告の抗弁 民法452条

② 検索の抗弁 民法453条

3 補充性がない場合

① 連帯保証の場合 民法454条

○ 民法453条(検索の抗弁)

 債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。

1 債務者が容易に執行できる若干の財産を有していることを証明すれば足り、当該財産による弁済が債権全額に及ぶことまで証明する必要はない(大判昭和8年6月13日)。

○ 民法454条(連帯保証の場合の特則)

 保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない。

1 連帯保証人は、催告の抗弁(452条)及び検索の抗弁(453条)を有しない。

2 連帯保証人は、主債務者と連帯して自分が約束した全額を支払うという意思を示していると評価され、分別の利益を有しない(文献④254頁)。 

○ 民法455条(催告の抗弁及び検索の抗弁の効果)

 第四百五十二条又は第四百五十三条の規定により保証人の請求又は証明があったにもかかわらず、債権者が催告又は執行をすることを怠ったために主たる債務者から全部の弁済を得られなかったときは、保証人は、債権者が直ちに催告又は執行をすれば弁済を得ることができた限度において、その義務を免れる。

○ 民法456条(数人の保証人がある場合)

 数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を負担したときであっても、第四百二十七条の規定を適用する。

1 共同保証

  一つの債務について、保証人が複数いる場合

2 分別の利益(本条)

 共同保証の場合、保証人は、平等の割合で分割された金額についてのみ責任を負う。

3 分別の利益がない場合

① 共同保証人が分別の利益を放棄した場合(保証連帯)

② 共同保証人が連帯保証人である場合

○ 民法457条(主たる債務者について生じた事由の効力)

1項 主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる。

2項 保証人は、主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができる。

3項 主たる債務者が債権者に対して相殺権、取消権又は解除権を有するときは、これらの権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において、保証人は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

(平成29年改正)

旧457条(主たる債務者について生じた事由の効力

1項 主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の中断は、保証人に対しても、その効力を生ずる。

2項 保証人は、主たる債務者の債権による相殺をもって債権者に対抗することができる。

1 時効の完成猶予及び更新(1項)

  文言の修正:時効の中断 → 時効の完成猶予及び更新

2 主債務の有する抗弁権(2項)

  相殺の抗弁 → 抗弁一般 拡張した。

3 抗弁権構成の明文化(3項)

  かかる場合における、保証人の履行拒絶権を認める見解(履行拒絶の抗弁権構成)明文化した。

○ 第458条(連帯保証人について生じた事由の効力)

 第438条(※1)、第439条(※2)第1項、第440条(※3)及び第441条(※4)の規定は、主たる債務者と連帯して債務を負担する保証人について生じた事由について準用する。

※1 連帯債務者の一人との更改

※2 連帯債務者の一人による相殺等

※3 連帯債務者の一人との間の混同

※4 相対的効力の原則

旧458条(連帯保証人について生じた事由の効力)

 第434条から第440条までの規定は、主たる債務者が保証人と連帯して債務を負担する場合について準用する。

第1 平成29改正前

1 主債務者について生じた事由 → 連帯保証人

これは、付従性の問題であり、旧458条とは関係がない。

 

2 連帯保証人について生じた事由

 連帯保証人について生じた事由が主債務に及ぶかの問題であり、この問題が旧458条が適用される場面である。

 旧458条は、連帯債務の規定(旧434条~旧440条)を準用していた。

① 履行の請求(旧434条)

② 更改(旧435条)

③ 相殺(旧436条)

 但し、主債務者は、連帯保証人の有する反対債権で相殺できない。← 連帯保証人に負担部分無し

④ 免除(旧437条)

  連帯保証人に負担部分無し → 主債務に影響しない。

⑤ 混同(旧438条)

⑥ 時効の完成(旧439条)

  連帯保証人に負担部分無し → 主債務に影響しない。

⑦ ①~⑥の絶対的効力事由以外は、相対効の原則(旧440条)

 

第2 平成29年改正法

1 履行の請求

(改正法)

① 旧434条を削除

② 連帯債務者の一人に対する履行の請求=相対効

→ 連帯保証人に対する履行の請求も相対効となり、主債務に影響しないものとした。

 但し、連帯債務と同様に、当事者の合意によって絶対的効力事由とすることができる。

2 免除、時効の完成

① 旧437条・旧439条を削除

② もともと、連帯債務者に負担部分はないので、連帯債務についてかかる事由が生じても、主債務に影響はない。

→ 実質的にみて、変更はない。

3 相殺

① 連帯保証人がその有する反対債権で相殺した場合、主債務にも及ぶ 新439条1項

② 主債務がその有する反対債権で相殺しない間、連帯保証人は履行拒絶権を有する。新457条3項

③ 主債務者は、連帯保証人の有する反対債権で相殺できない(改正前の解釈と変わらない)。←連帯保証人は主債務者との関係で負担部分がない。

4 更改、混同

 更改(新438条)、混同(新440条)

 いずれも絶対的効力事由

→ 連帯保証人についてこれらの債権消滅事由が生じた場合、主債務にも及ぶ。

5 相対効の原則

  新441条

 

【参考・参照文献】

 このページは、下記文献を参考・参照して作成しました。

① 第一東京弁護士会司法制度調査委員会編・新旧対照でわかる改正債権法の逐条解説(平成29年、新日本法規)123頁

② 日本弁護士連合会編・実務解説改正債権法(第2版)(2020年、弘文堂)435頁

③ 内田貴 民法Ⅲ(第4版)債権総論・担保物権(2020年、東京大学出版会)

④ 道垣内弘人 リーガルベイシス民法入門(第4版)(2022年、日本経済新聞出版)253頁

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