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債権法改正、保証債務(その4)個人根保証契約

民法 第3編 債権
第1章 総則
第3節 多数当事者の債権及び債務
第5款 保証債務

             第2目 個人根保証契約

[経過措置]施行日前に締結された保証契約に係る保証債務については、旧法が適用される(附則21条1項)。

 民法465条の2(個人根保証契約の保証人の責任等)(平成29年改正)

1項 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息違約金損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金及び損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。

2項 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。

3項 第446条(※)第2項及び第3項の規定は、個人根保証契約における第1項に規定する極度額の定めについて準用する。

 

※ 446条

1項 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。

2項 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。

3項 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

 

旧465条の2(貸金等根保証契約の保証人の責任等)

1項 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とするで保証契約(以下「根保証契約」という。)であってその債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務(以下「貸金等債務」という。)が含まれるもの(保証人が法人であるものを除く。以下「貸金等根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのもの及びその保証債務について約定された違約金及び損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。

2項 貸金等根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。

3項 第446条第2項及び第3項の規定は、貸金等根保証契約における第1項に規定する極度額の定めについて準用する。

1 適用対象

(1)改正前の法

① 根保証契約 

一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする根保証契約

② 貸金等債務

その債務の範囲に、金銭の貸渡し 又は 手形の割引を受けることによって負担する債務

③ 保証人が法人であるものを除く。

④ 極度額の定め

⑤ 極度額の定め=書面(電磁的記録可)

(2)改正法

 改正前の法(1)②の限定を削除し、適用対象を拡大した。

① 根保証契約 

一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする根保証契約

② 保証人が法人であるものを除く。

③ 極度額の定め

④ 極度額の定め=書面(電磁的記録可)

〇 民法465条の3(個人貸金等根保証契約の元本確定期日)(平成29年改正)

1項 個人根保証契約であってその主たる債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務(以下「貸金等債務」という。)が含まれるもの(以下「個人貸金等根保証契約」という。)において主たる債務の元本の確定すべき期日(以下「元本確定期日」という。)の定めがある場合において、その元本確定期日がその個人貸金等根保証契約の締結の日から5年を経過する日より後の日と定められているときは、その元本確定期日の定めは、その効力を生じない

2項 個人貸金等根保証契約において元本確定期日の定めがない場合(前項の規定により元本確定期日の定めが効力を生じない場合を含む。)には、その元本確定期日は、その個人貸金等根保証契約の締結の日から3年を経過する日とする。

3項 個人貸金等根保証契約における元本確定期日の変更する場合において、変更後の元本確定期日がその変更をした日から5年を経過する日より後の日となるときは、その元本確定期日の変更は、その効力を生じない

 ただし、元本確定期日の前2箇月以内に元本確定期日を変更する場合において、変更後の元本確定期日が変更前の元本確定期日から5年以内の日となるときは、この限りでない

4項 第446条第2項及び第3項の規定は、個人貸金等根保証契約における元本確定期日の定め及びその変更(その個人貸金等根保証契約の締結の日から3年以内の日を元本確定期日とする旨の定め及び元本確定期日より前の日を変更後の元本確定期日とする変更を除く。)について準用する。

465条の3

(省略)

1 改正法は、民法465条の2の適用対象を、「個人根保証契約のうち貸金等債務が含まれるもの」から「個人根保証契約一般」に拡張したが、元本確定期日についての規律は、「個人根保証契約一般」に拡張しないで、「個人根保証契約のうち貸金等債務が含まれるもの」に限定されることを示した。

 「個人根保証契約一般」から「個人根保証契約のうち貸金等債務が含まれるもの」を除いたものには、

① 賃貸借契約から生じる賃借人の債務の保証

② 継続的売買契約の代金債務の保証も含まれる。

 これらの債務に元本確定期日期日についての規律を及ぼすと、契約締結から5年間を超えて契約が存続する場合があるにもかかわらず、元本確定期日を定めることにより保証の効力が及ばなくなるのを回避するためである。

〇 民法465条の4(個人根保証契約の元本の確定事由)(平成29年改正)

 次に掲げる場合には、個人根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。

 ただし、第1号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。

一 債権者が、保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。

二 保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。

三 主たる債務者又は保証人が死亡したとき。

2項 前項に規定する場合のほか、個人貸金等根保証契約における主たる債務の元本は、次に掲げる場合にも確定する。

 ただし、第1号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があった場合に限る。

一 債権者が、主たる債務者の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。

二 主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。

旧465条の4(貸金等根保証契約の元本の確定事由)

 次に掲げる場合には、貸金等根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。

一 債権者が、主たる債務者又は保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。ただし、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。

二 主たる債務者又は保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。

三 主たる債務者又は保証人が死亡したとき。

個人根保証契約の元本の確定事由

<改正法> ○:元本確定 ×:元本確定せず

  個人貸金等根保証契約

個人根保証契約

(個人貸金等根保証契約を除く)

保証人

強制執行・担保権実行

     

 

保証人 

破産決定

主債務者

死亡

保証人

死亡

主債務者

強制執行・担保権実行

×

主債務者

破産決定

×

 

<改正前の法>○:元本確定 ×:元本確定せず
  貸金等保証契約

主債務者

強制執行・担保権実行

保証人

強制執行・担保権実行

主債務者

破産決定

保証人

破産決定

主債務者

死亡

保証人

死亡

 

 
改正法は、個人根保証契約一般に個人貸金等根保証契約の規律を及ぼしたが、個人貸金等根保証契約以外の個人根保証契約(① 賃貸借契約から生じる賃借人の債務の保証、② 継続的売買契約の代金債務の保証)は、主債務者・強制執行担保権実行、主債務者・破産決定の場合は、元本確定事由としなかった。
 かかる契約の場合、主債務者に上記事由が発生しても契約が継続されることがあり、それにもかかわらず、保証契約の元本が確定すると、それ以降、保証の実効性がなくなるからである。

〇 民法465条の5(保証人が法人である根保証契約の求償権)(平成29年改正)

1項 保証人が法人である根保証契約において、第465条の2第1項に規定する極度額の定めがないときは、その根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約は、その効力を生じない。

2項 保証人が法人である根保証契約であってその主たる債務の範囲に貸金等債務が含まれいてるものにおいて、元本確定期日の定めがないとき、又は元本確定期日の定め若しくはその変更が第465条の3第1項若しくは第3項の規定を適用するとすればその効力を生じないものであるときは、その根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権に係る債務とする保証契約は、その効力を生じない。

 主たる債務の範囲にその求償権に係る債務が含まれる根保証契約も、同様とする。

3項 前2項の規定は、求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に求償権に係る債務が含まれる根保証契約の保証人が法人である場合には、適用しない。

旧465条の5(保証人が法人である貸金等債務の根保証契約の求償権)

 保証人が法人である根保証契約であってその主たる債務の範囲に貸金等債務が含まれるものにおいて、第465条の2第1項に規定する極度額の定めがないとき、元本確定期日の定めがないとき、又は、元本確定期日の定め若しくはその変更が第465条の3第1項若しくは第3項の規定を適用するとすればその効力を生じないものであるときは、根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権についての保証契約(保証人が法人であるものを除く。)は、その効力を生じない。

 

1 本条1項

  根保証契約の極度額の定めに関する旧法465条の2

  貸金等根保証契約 →(拡大)→ 貸金等根保証契約

               + その他の個人根保証契約

 

    これに伴い旧法の規定を整備した。

  

① 債権者 → 主債務者

② 債権者 →<①について根保証契約>→ 保証人(法人)

③ ②の保証人(法人)→<保証契約&主債務=①の主債務者に対する求償権>→ 保証人(個人/根保証を除く※)

 

 ③の保証人(個人)が②の保証人(法人)と同質内容の債務を負担する。

→ ③の保証人(個人)の保護

→ ②の根保証契約に極度額の定めを要する。

 

③の保証人に根保証を除く。

 

※ 個人求償権保証契約に極度額の定めがない場合

→ 保証契約は効力を生じない(民法465条の2)。

→ 個人求償権保証契約が有効である場合には、極度額の定めがある。

   

2 本条2項

① 債権者 →<貸金等債権を含む>→主債務者

② 債権者 →<①について根保証契約>→ 保証人(法人)

③ ②の保証人(法人)→<保証契約&主債務=①の主債務者に対する求償権>→ 保証人(個人、根保証を含む)

 

②の根保証契約

ⅰ 元本確定期日の定めがないとき。

ⅱ 元本確定期日の定め・変更が465条の3・1項3項を適用するとすると、効力を生じないものであるとき。

 

③の保証人(個人)を保護するため、保証契約は効力を生じない。

 【参考・参照文献】

 このページは、下記文献を参考・参照して作成しました。

① 第一東京弁護士会司法制度調査委員会編・新旧対照でわかる改正債権法の逐条解説(平成29年、新日本法規)139頁

② 日本弁護士連合会編・実務解説改正債権法(第2版)(2020年、弘文堂)頁

③ 潮見佳男著 民法(債権関係)改正法の概要(平成29年、金融財政事情研究会) 133頁

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