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<多数当事者の債権債務関係 の体系>
民法第3編 債権
第1章 総則
第3節 多数当事者の債権及び債務
第1款 総則 427条
第2款 不可分債権及び不可分債務
428条~431条
第3款 連帯債権
432条~435条の2
第4款 連帯債務
436条~445条
第5款 保証債務
経過規定
〇 民法427条(分割債権及び分割債務)
数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
<分割債権・分割債務>
1 多数当事者の債権債務関係の原則的形態である。
2 民法の基礎にある個人主義の現れといえる。
3 給付が分割できない場合(不可分性)や法律の規定がある場合(例 民法719条1項)、別段の意思表示がある場合は、本条適用されない。
4 分割債権・債務の不都合性
① 分割債務
債権の効力が弱すぎる。
② 分割債権
弁済する債務者にとって不便
→ 複数の者の間にある種の共同関係が存在する場合は、当事者が合意により分割債権・分割債務の規定を排除するであろうが、そうでない場合であっても、不可分債務や連帯債務と認定すべき場合が多い。(内田457頁)
〇 民法428条(不可分債権)
次款(連帯債権)の規定(第433条(連帯債権者の一人との間の更改又は免除=絶対的効力)及び第435条(連帯債権者の一人との間の混同=絶対的効力)の規定を除く。)は、債権の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債権者があるときについて準用する。
旧428条(不可分債権)
債権の目的がその性質上又は当事者の意思表示によって不可分である場合において、数人の債権者があるときは、各債権者はすべての債権者のために履行を請求し、債務者はすべての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。
〇 民法429条(不可分債権者の一人との間の更改又は免除)(平成29年改正法)
不可分債権者の一人と債務者との間に更改又は免除があった場合においても、他の不可分債権者は、債務の全部の履行を請求することができる。
この場合においては、その一人の不可分債権者がその権利を失わなければ分与されるべき利益を債務者に償還しなければならない。
1項 不可分債権者の一人と債務者との間に更改又は免除があった場合においても、他の不可分債権者は、債務の全部の履行を請求することができる。
この場合においては、その一人が不可分債権者がその権利を失わなければ分与される利益を債務者に償還しなければならない。
2項 前項に規定する場合のほか、不可分債権者の一人の行為又は一人について生じた事由は、他の不可分債権者に対して効力を生じない。→ 【削除】
1 不可分債権の概念
(1)旧法
① 性質上の不可分
② 当事者の意思表示によって不可分
(2)新法
① 性質上の不可分 に限定する。
2 旧法429条1項
規律を維持して、新法429条に規定される。
3 旧法429条2項
削除された。(理由)不可分債権には連帯債権の規定が準用され(民法428条)、相対的効力の原則を規定した民法435条の2も準用される結果、旧法429条2項を維持する必要がなかったため。
〇 民法430条(不可分債務)(平成29年改正法)
第四款(連帯債務)の規定(第440条(連帯債権者の一人との間の混同=絶対的効力)の規定を除く。)は、債務の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債務者があるときについて準用する。
旧430条(不可分債務)
前条の規定及び次款(連帯債務)の規定(第434条から第440条までの規定を除く。)は、数人が不可分債務を負担する場合について準用する。
1 改正法は、不可分債務を「性質上不可分」な場合に限定し、旧法で認められていた「当事者の意思表示による不可分」な場合を削除した。
旧法では、債務の目的が性質上可分でも当事者の意思表示によって不可分債務とすることができると解されており、そうすると、連帯債務と意思表示による不可分債務とを区別することが難しかった。
2 改正法は、混同の規定を除いて連帯債務の規定を準用した。その結果、不可分債務は、債務者の一人について生じた事由について、原則として相対的効力とされ、例外的に、相殺と更改のみ絶対的効力とされた。
3 混同が、連帯債務については絶対的効力であるが、不可分債務については相対的効力とされたのは、次の理由からである。
不可分債務は、連帯債務と異なり、「履行すべき内容」と、「(相対的効力を前提とした場合の)<他の連帯債務者>の<履行を受けた債権者>に対する求償」とが異なっており、<他の連帯債務者>が同一の債権者に対し履行した後に求償することが迂遠でないためである。
4 判例によって、不可分債務とされた例
〇 共同相続した不動産を売却したことによる所有権移転登記義務(最高裁昭和36年12月15日判決)
〇 建物収去土地明渡義務(最高裁昭和43年3月15日判決)
〇 共同相続した賃貸物件を使用収益させる債務(最高裁昭和45年5月22日判決)
5 不可分債務とされれば、債権者は、債務者のうち一部の者に対し、全部の履行を請求することができる(最高裁昭和45年5月22日判決)。
〇 民法430条(可分債権又は可分債務への変更) 不可分債権が可分債権となったときは、各債権者は自己が権利を有する部分についてのみ履行を請求することができ、不可分債務が可分債務となったときは、各債務者はその負担部分についてのみ履行の責任を負う。
【参考・参照文献】
このページは、下記文献を参考・参照して作成しました。
□ 第一東京弁護士会司法制度調査委員会編・新旧対照でわかる改正債権法の逐条解説(平成29年、新日本法規)頁
□ 日本弁護士連合会編・実務解説改正債権法(第2版)(2020年、弘文堂)184頁
□ 内田貴 民法Ⅲ(第4版)債権総論・担保物権(2020年、東京大学出版会(略称:内田)455頁