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遺産分割(その6)遺産分割の手続

民法 第5編 相続
第3章 相続の効力
第3節 遺産の分割
(906条~914)

<遺産分割総論>

1 遺産分割の手続

① 協議分割

② 調停分割

③ 審判分割

2 遺産分割の方法

① 現物分割

② 換価分割

③ 代償分割  

3 共有物分割との関係

① 遺産分割も共有物分割も、まずは協議によることは同じである。

② 裁判手続

ⅰ 共有物分割 地方裁判所

ⅱ 遺産分割  家庭裁判所

③ 分割の基準

ⅰ 共有物分割 共有持分

ⅱ 遺産分割

a 具体的相続分

b 民法906条 遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。

④ 分割の方法

 出発点が持分権(所有権)[共有物分割]と相続分[遺産分割]という違いはあるが、分割の方法は類似している。

ⅰ 共有物分割 現物分割、換価分割、価格賠償

ⅱ 遺産分割  現物分割、換価分割、代償分割

⑤ 遺産共有の状態を解消するためには、遺産分割協議・調停・審判による必要があり、共有物分割訴訟によることはできない。

(例)もと、不動産が甲1・乙の共有である。/甲1が死亡し、甲2甲3が甲1の共有持分を相続

 この場合、乙が共有状態を解消するためには、遺産分割手続ではなく、共有物分割手続による(最高裁昭和50年11月7日判決参照)。共有物分割手続により、[甲2甲3]分と[乙]分とを分割する。その上で、[甲2甲3]分における分割は遺産分割手続による。 

<遺産分割と共有物分割との関係>

 

① 遺産分割も共有物分割も、まずは協議によることは同じである。

② 裁判手続

ⅰ 共有物分割 地方裁判所

ⅱ 遺産分割  家庭裁判所

③ 分割の基準

ⅰ 共有物分割 共有持分

ⅱ 遺産分割

a 具体的相続分

b 民法906条 遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。

④ 分割の方法

 出発点が持分権(所有権)[共有物分割]と相続分[遺産分割]という違いはあるが、分割の方法は類似している。

ⅰ 共有物分割 現物分割、換価分割、価格賠償

ⅱ 遺産分割  現物分割、換価分割、代償分割

⑤ 遺産共有の状態を解消するためには、遺産分割協議・調停・審判による必要があり、共有物分割訴訟によることはできない。

(事案)

不動産が甲1・乙の共有である。

甲1が死亡し、甲2甲3が甲1の共有持分を相続

 この場合、乙が共有状態を解消するためには、遺産分割手続ではなく、共有物分割手続による(最高裁昭和50年11月7日判決参照)。共有物分割手続により、[甲2甲3]分と[乙]分とを分割する。その上で、[甲2甲3]分における分割は遺産分割手続による。 

 

潮見【CASE288】~【CASE291】

<遺産分割の方法>

 現物分割

(1)意義

 松原322頁によると、

(狭義の)現物分割:個々の物件そのものを複数の相続財産に分割すること。

個別分割:遺産を個別に配分する (例)A土地は甲に、B土地は乙に。

 片岡・管野403頁によると、

 個々の財産の形状や性質を変更することなく分割すること。

(2)遺産分割の原則的方法といえる。

2 代償分割

〇 家事事件手続法195条(債務を負担させる方法による遺産の分割)

 家庭裁判所は、遺産の分割の審判をする場合において、特別の事情があると認めるときは、遺産の分割の方法として、共同相続人の一人又は数人に他の共同相続人に対する債務を負担させて、現物の分割に代えることができる。

1 代償分割が認められる「特別の事情」(家事事件手続法195条、旧家事審判規則109条)

<要件1>(文献①323頁、文献②408頁)

 現物分割が相当でない事情

① 現物分割が不可能である。

(例)遺産が狭い土地、一棟の建物

② ①までいえなくても、現物分割によって価値を著しく減少させる場合

③ 現物分割は可能であるが、相続人に、その者の具体的相続分を超えて遺産を取得させることを相当とする事情

(例)親の家業である農業を手伝っていた長男に、遺産である農地を取得させる場合

 大阪高決昭和54年3月8日(家月31巻10号71頁) 

<要件2>(松原324頁)

 遺産を取得する相続人に代償金を支払う能力があること。

 最高裁(一小)決定平成12年9月7日(家月54巻6号66頁)

<要件③>(片岡・管野408頁)

 共同相続人間に代償金支払の方法によることについて、おおむね争いがない場合

 上記大阪高決の立場であるが、松原324頁は、ここまで厳格に解すべきではないとする。

2 代償として負担する債務について、①金銭に限られるか、それとも、②金銭に限られず、具体的相続分を超えて遺産を取得する相続人の固有財産を提供することも可能であるかについて争いがあるも、審判では①であり、調停では②であると解される。松原322頁、片岡・管野409頁

3 代償分割に関する条項例

 申立人は、〇〇を取得として代償として、相手方に対し、〇〇円を支払うこととし、・・・

<遺産分割の当事者>

1 遺産分割の当事者

① 共同相続人

② 包括受遺者 相続人と同一の権利義務(民法990条)

③ 相続分の譲受人

④ 遺言執行者

  当事者として参加できる(通説)。

  利害関係人として関与すれば足りるとする見解もある。

2 遺産分割の当事者を除外してなされた遺産分割の効力

 協議分割、調停分割、審判分割(最大判昭和53年12月20日)は無効である。

(例)甲の死亡後、甲の夫Bと甲の子Cは遺産分割協議を成立させた。その後、甲には、非嫡出子Aがいることが判明した。

 遺産分割は無効となり、A・B・C間で遺産分割協議をやり直す必要がある。(文献④260頁)

3 非相続人が参加してなされた遺産分割の効力

(例)甲の死亡後、甲の妻Bと甲の子C及びDは遺産分割協議を成立させたが、その後、Cを甲の相続から廃除する審判が確定した。

 遺産分割は無効となり、遺産分割をやり直す必要がある(文献④260頁)。

 これに対し、司法研修所編 遺産分割事件の処理をめぐる諸問題(平成6年、法曹会)24頁は次の見解を支持する。

 非相続人に対する分割は無効となり、原則として、非相続人に分割された財産を再分割すれば足りるが、全体として公平な分割にならないような特別な事情があれば、分割をやり直す必要がある(東京家審昭和34年9月14日)。

 

<協議分割(1)>

1 意義

  共同相続人間全員の合意による遺産分割である。

2 内容

(1)協議の結果による。通常、遺産に当たる預貯金の払戻しや不動産の所有権移転登記手続に使用するため、相続人全員が署名(記名)し、実印(市区町村に登録した印章)を捺印した遺産分割協議書を作成し、それに印鑑登録証明書を添付するのが通常である。

(2)協議及び遺産分割協議書の作成は、相続人全員が一堂に会して行う場合、相続人相互間が疎遠であったり又は相互に住所地が離れており、このため一堂に会するのが不可能又は困難である場合、相続人間で持ち回りで行う場合等がある。

(3)法定相続分や遺言による遺産分割方法の指定と異なる内容の遺産分割も可能である。(潮見346頁)

(根拠)協議・分割による分割の場合、その結果は共同相続人の自由意思に基づく合意の結果として、法秩序において承認されなければならない。この局面では、被相続人の意思に対する相続人の意思の優越が認められる。

(4)遺産分割証明書

 相続人が多数いる場合は、(1)の方法による遺産分割協議が困難な場合がある。このような場合、遺産分割協議書に代替するものとして、相続人各人が作成する「遺産分割証明書」を作成する場合がある。

☆ 遺産分割協議書と遺産分割証明書との異同

(異)作成者(名義人) 協議書:相続人全員、証明書:相続人各人

(同)印鑑登録証明書の添付

 

  遺産分割協議書(相続人A、B、・・・、G)

= 遺産分割証明書(A)+証明書(B)+・・・証明書(G)

 

  永石一郎・鷹取信哉・下田久・夏苅一編(改訂版)ケース別遺産分割協議書作成マニュアル(令和2年、新日本法規出版)p109~に、遺産分割証明書の例文及び解説が記載されている。  

 

<協議分割(2)遺産分割協議の無効・取消し>

 

(潮見347頁)

1 相続人でない者(無資格者)が参加してされた協議又は調停分割は無効である。

潮見【CASE310】

遺産分割協議成立後、廃除の審判が確定した場合

潮見【CASE311】

 戸籍上の「被相続人の兄弟姉妹」が遺産分割協議を成立させた後、子の認知が認められた場合

民法910条の適用場面ではない。

2 意思無能力者

  潮見【CASE346

3 制限行為能力者

(1)相続人=成年被後見人

   成年後見人が代理する。

(2)相続人=被保佐人

① 被保佐人は、保佐人の同意(民法13条1項6号)を得て遺産分割する。

② 保佐人は、遺産分割することについて代理権付与の審判(民法876条の4)を受けて、代理する。

(3)相続人=被補助人

① 被補助人は、遺産分割する。

② 補助人の同意付与の審判(民法17条)がされた場合

  被補助人は、補助人の同意を得て遺産分割する。

③ 補助人は、遺産分割することについて代理権付与の審判(民法876条の9)を受けて、代理する。

4 意思表示の取消事由

(1)錯誤

① 行為基礎事情に錯誤がある場合 潮見【CASE347】

② 遺産分割協議後に、遺産分割方法を指定した遺言が出てきた場合 潮見【CASE348

 相続人が遺産分割協議の意思決定をする場合において、遺産分割方法が定められているときは、その趣旨は遺産分割の協議・審判を通じて可能な限り尊重されるべきものであり、相続人もその趣旨を尊重しようとするのが通常であるから、相続人の意思決定に与える影響は格段に大きい(最判平成5年12月16日)。

→ そのような遺言を知っていたならば、相続人は別内容の分割協議をしたか否か。

(YESの場合)遺産分割協議は錯誤取消しの対象となる。

取消し後、再度の協議を行うこととなる。

(2)強迫

   潮見【CASE345】

 

 

 

 

  

<調停・審判による遺産分割>

1 根拠法令

(1)民法907条2項、家事事件手続法244条

(2)家事事件手続法274条

 審判が申し立てられた場合、家庭裁判所は、職権で、調停に付することができる。

2 管轄

相手方の住所地を管轄する家庭裁判所

又は

当事者が合意で定める家庭裁判所

3 

〇 家事事件手続法244条(調停事項等)

 家庭裁判所は、人事に関する訴訟事件その他家庭に関する事件(別表第一に掲げる事項についての事件を除く。)について調停を行うほか、この編の定めるところにより審判をする。

〇 家事事件手続法245条(管轄等)

1項 家事調停事件は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所の管轄に属する。

2項 民事訴訟法第十一条第二項及び第三項の規定は、前項の合意について準用する。

3項 第百九十一条第二項及び第百九十二条の規定は、遺産の分割の調停事件(別表第二の十二の項の事項についての調停事件をいう。)及び寄与分を定める処分の調停事件(同表の十四の項の事項についての調停事件をいう。)について準用する。この場合において、第百九十一条第二項中「前項」とあるのは、「第二百四十五条第一項」と読み替えるものとする。

〇 家事事件手続法274条(付調停)

1項 第二百四十四条の規定により調停を行うことができる事件についての訴訟又は家事審判事件が係属している場合には、裁判所は、当事者(本案について被告又は相手方の陳述がされる前にあっては、原告又は申立人に限る。)の意見を聴いて、いつでも、職権で、事件を家事調停に付することができる。

2項 裁判所は、前項の規定により事件を調停に付する場合においては、事件を管轄権を有する家庭裁判所に処理させなければならない。ただし、家事調停事件を処理するために特に必要があると認めるときは、事件を管轄権を有する家庭裁判所以外の家庭裁判所に処理させることができる。

3項 家庭裁判所及び高等裁判所は、第一項の規定により事件を調停に付する場合には、前項の規定にかかわらず、その家事調停事件を自ら処理することができる。

4項 前項の規定により家庭裁判所又は高等裁判所が調停委員会で調停を行うときは、調停委員会は、当該裁判所がその裁判官の中から指定する裁判官一人及び家事調停委員二人以上で組織する。

5項 第三項の規定により高等裁判所が自ら調停を行う場合についてのこの編の規定の適用については、第二百四十四条、第二百四十七条、第二百四十八条第二項、第二百五十四条第一項から第四項まで、第二百六十四条第二項、第二百六十六条第四項、第二百六十九条第一項並びに第二百七十二条第一項ただし書及び第二項並びに次章及び第三章の規定中「家庭裁判所」とあるのは「高等裁判所」と、第二百四十四条、第二百五十八条第一項、第二百七十六条、第二百七十七条第一項第一号、第二百七十九条第三項及び第二百八十四条第一項中「審判」とあるのは「審判に代わる裁判」と、第二百六十七条第一項中「家庭裁判所は」とあるのは「高等裁判所は」と、次章の規定中「合意に相当する審判」とあるのは「合意に相当する審判に代わる裁判」と、第二百七十二条第一項ただし書及び第三章の規定(第二百八十六条第七項の規定を除く。)中「調停に代わる審判」とあるのは「調停に代わる審判に代わる裁判」と、第二百八十一条及び第二百八十七条中「却下する審判」とあるのは「却下する審判に代わる裁判」とする。

 

〇 家事事件手続法273条(家事調停の申立ての取下げ)

1項 家事調停の申立ては、家事調停事件が終了するまで、その全部又は一部を取り下げることができる。

2項 民事訴訟法第二百六十一条第三項及び第二百六十二条第一項の規定は、家事調停の申立ての取下げについて準用する。この場合において、同法第二百六十一条第三項ただし書中「口頭弁論、弁論準備手続又は和解の期日(以下この章において「口頭弁論等の期日」という。)」とあるのは、「家事調停の手続の期日」と読み替えるものとする。

〇 家事事件手続法199条(申立ての取下げの制限に関する規定の準用)

 第153条の規定は、遺産の分割の審判の申立ての取下げについて準用する。

〇 家事事件手続法199条(申立ての取下げの制限に関する規定の準用)[令和3年改正]

1項 第153条の規定は、遺産の分割の審判の申立ての取下げについて準用する。

2項 第82条第2項の規定にかかわらず、遺産の分割の審判の申立ての取下げは、相続開始の時から10年を経過した後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。

〇 家事事件手続法153条(申立ての取下げの制限)

 第82条第2項の規定にかかわらず、財産の分与に関する処分の審判の申立ての取下げは、相手方が本案について書面を提出し、又は家事審判の手続の期日において陳述をした後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。

〇 家事事件手続法82条(家事審判の申立ての取下げ)

1項 家事審判の申立ては、特別の定めがある場合を除き、審判があるまで、その全部又は一部を取り下げることができる。

2項 別表第二に掲げる事項についての家事審判の申立ては、審判が確定するまで、その全部又は一部を取り下げることができる。ただし、申立ての取下げは、審判がされた後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。

3項 前項ただし書及び第百五十三条(第百九十九条において準用する場合を含む。)の規定により申立ての取下げについて相手方の同意を要する場合においては、家庭裁判所は、相手方に対し、申立ての取下げがあったことを通知しなければならない。ただし、申立ての取下げが家事審判の手続の期日において口頭でされた場合において、相手方がその期日に出頭したときは、この限りでない。

4項 前項本文の規定による通知を受けた日から二週間以内に相手方が異議を述べないときは、申立ての取下げに同意したものとみなす。同項ただし書の規定による場合において、申立ての取下げがあった日から二週間以内に相手方が異議を述べないときも、同様とする。

5項 民事訴訟法第二百六十一条第三項及び第二百六十二条第一項の規定は、家事審判の申立ての取下げについて準用する。この場合において、同法第二百六十一条第三項ただし書中「口頭弁論、弁論準備手続又は和解の期日(以下この章において「口頭弁論等の期日」という。)」とあるのは、「家事審判の手続の期日」と読み替えるものとする。

〇 家事事件手続法

【参考・参照文献】

 以下の文献を参考・参照して作成しました。

□ 松原正明 全訂判例先例相続法Ⅱ(平成18年、日本加除出版)略称:松原

□ 堂園幹一郎・野口宣大編著 一問一答新しい相続法(第2版)(2020年、商事法務)68頁 略称:堂薗・野口

□ 日本弁護士連合会編Q&A改正相続法のポイント-改正経緯をふまえた実務の視点(平成30年、新日本法規)63頁

□ 東京家庭裁判所家事第5部編著・東京家庭裁判所家事第5部(遺産分割部)における相続法改正を踏まえた新たな実務運(2019年、日本加除出版)40頁

□ 潮見佳男 詳解相続法第2版(令和年、弘文堂)171頁

□ 片岡武・管野眞一 改正相続法と家庭裁判所の実務(2019年、日本加除出版)頁(略称:片岡・管野①)

□ 片岡武・管野眞一 第4版 家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務(2021年、日本加除出版)頁(略称:片岡・管野②)

 

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