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<遺産分割の前提問題>
(潮見368頁、片岡・管野②69頁)
第1 問題の所在
1 遺産分割の管轄
(1)1948年(昭和23年) 家事審判法の改正
通常裁判所の管轄 → 家庭裁判所の専属管轄
(考え方)遺産分割が実体的な権利義務を変更するものではなく、(既に確認されている)実体的な権利義務関係を前提として、各相続人の権利義務の範囲に応じて財産を振り分ける手続→訴訟事項にする必要はない。
(2)2011年(平成23年)
家事審判法に代えて、家事事件手続法が制定される。
(1)の考え方を引き継ぐ。
2 現実の遺産分割では、下記のような、当事者の実体的権利義務関係の存否が、遺産分割手続で争われる。
① 遺産分割の対象となる遺産の範囲
② 相続資格の有無、相続人の範囲
③ 遺言書の効力又は解釈
④ 遺産分割協議書の効力
第2 判例法理
1 判例法理(最大決昭和41年3月2日)
① 家庭裁判所は、遺産分割の審判手続において、前提問題である実体的権利義務関係について判断を下して、遺産分割手続を進めることができる。 → 実体的権利義務関係を前提として、審判で、具体的内容を定めることができる。
② 前提問題について判断したからといって、判断の対象である実体的権利義務関係を確定するものではない。
③ ② → 審判中でされた前提問題についての判断には既判力が生じない。
④ ③ → 不服のある当事者は、通常裁判所において民事訴訟で前提問題について争うことができる。後の訴訟で、判断の前提とされた実体的権利義務関係の存在が否定されたときは、分割審判もこれに抵触する限りで、その効力を失う。
⑤ 非公開・非対審の審判手続で、遺産の範囲や相続権に関する紛争を判断の対象としても憲法に違反しない。
2 1にかかわらず、一定の法的手続を経た判決により、はじめて効力の発生が認められる事項は、審判において判断することができない。(例)婚姻取消し、認知請求、推定相続人の廃除
<遺産の帰属についての争い>
(潮見368頁、片岡・管野②73頁)
第1 問題の所在
ある財産(例:預貯金、現金)が遺産に帰属するかについて共同相続人間で争いがある場合、それは、実体法上の権利関係をめぐる紛争であるから、最終的には民事訴訟手続により解決されるべき問題である。
家庭裁判所が、審判において、前提事項において判断をして、審判することができるか。
第2 判例法理及び実務
1 判例法理
前記<遺産分割の前提問題>第2判例法理のとおり。
2 実務
前提事項についての審判の判断には既判力が生じないことや対象である遺産が確定しないまま手続を進めても生産的でないことから、家庭裁判所としては、遺産の帰属について、民事訴訟で解決することを促す。
第3 遺産確認訴訟
1 意義等
最判平成元年3月28日
① 意義
当該財産が被相続人の遺産に属することの確認を求める訴え
② 性質
ⅰ 原告勝訴の確定判決は、当該財産が遺産分割の対象となる財産であることを既判力をもって確定する。
ⅱ 共同相続人全員が当事者として関与し、その間で合一にのみ確定することを要する固有必要的共同訴訟
2 請求の趣旨
(田村洋三・小圷眞史編著 北野俊光・雨宮則夫・秋武憲一・浅香紀久雄・松本光一郎著 実務相続関係訴訟(平成28年、日本加除出版)139頁)
(1)積極的確認請求訴訟
原告と被告らとの間において、別紙物件目録記載の不動産が、被相続人A(昭和○年○月○日死亡)の遺産であることを確認する。
(2)消極的確認請求訴訟
原告と被告らとの間において、別紙物件目録記載の不動産が、被相続人A(昭和○年○月○日死亡)の遺産でないことを確認する。
【参考・参照文献】
以下の文献を参考・参照して作成しました。
□ 松原正明 全訂判例先例相続法Ⅱ(平成18年、日本加除出版)略称:松原
□ 堂園幹一郎・野口宣大編著 一問一答新しい相続法(第2版)(2020年、商事法務)68頁 略称:堂薗・野口
□ 潮見佳男 詳解相続法第2版(令和年、弘文堂)365頁
□ 片岡武・管野眞一 改正相続法と家庭裁判所の実務(20021年、日本加除出版)頁(略称:片岡・管野①)
□ 片岡武・管野眞一 第3版 家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務(2017年、日本加除出版)頁(略称:片岡・管野②)