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〇 民法910条(相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権)
相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。
第1 「価格」(民法910条)の意義
1 争点
価格(民法910条)の算定の基礎となる遺産の価格は、当該分割の対象とされた積極財産に限られるか、消極財産も考慮されるか。
① 純資産額説
積極財産-消極財産
② 積極財産説
積極財産のみ
2 最高裁(第三小法廷)令和元年8月27日判決
(1)事案
被相続人:A
平成20年2月:相続開始
相続人:相続人B(Aの妻)、Y(Aの子)
遺産:積極財産9941万円余り
消極財産(相続債務)1400万円
平成20年3月:遺産分割協議成立
平成24年12月 Xが亡Aの子であることを認知する
判決が確定(民法787条、人事訴訟法42条1項)
平成27年 X→B、Yに対し、法定相続分に相当する
価格の支払い請求
☆価格算定に当たり考慮される財産は積極財産に限られるか。
(2)判旨
民法910条の規定は、相続の開始後に認知された者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしていたときには、当該分割等の効力を維持しつつ認知された者に価格の支払請求を認めることによって、他の共同相続人と認知された者との利害の調整を図るものである。
そうすると、同条に基づき支払われるべき価格は、当該分割等の対象とされた遺産の価格を基礎として算定するのが、当事者間の衡平の観点から相当である。そして、遺産の分割は、遺産のうち積極財産のみを対象とするものであって、消極財産である相続債務は、認知された者を含む各共同相続人に当然に承継され、遺産の分割の対象とならないものである。
以上よれば、相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既に当該遺産の分割をしていたときは、民法910条に基づき支払われるべき価格の算定の基礎となる遺産の価格は、当該分割の対象とされた積極財産の価格であると解するのが相当である。
このことは、相続債務が他の共同相続人によって弁済された場合や、他の共同相続人間において相続債務の負担に関する合意がされた場合であっても、異なるものではない。
【参考・参照文献】
次の文献を参考・参照して作成しました。
① 最高裁(第三小法廷)令和元年8月27日判決に関して、別冊ジュリスト令和元年度重要判例解説80頁(本山敦氏)
〇 民法911条(共同相続人間の担保責任)
各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う。
〇 民法912条(遺産の分割によって受けた債権についての担保責任)
1項 各共同相続人は、その相続分に応じ、他の共同相続人が遺産の分割によって受けた債権について、その分割の時における債務者の資力を担保する。
2項 弁済期に至らない債権及び停止条件付きの債権については、各共同相続人は、弁済をすべき時における債務者の資力を担保する。
〇 民法913条(資力のない共同相続人がある場合の担保責任の分担)
担保の責任を負う共同相続人中に償還をする資力のない者があるときは、その償還することができない部分は、求償者及び他の資力のある者が、それぞれその相続分に応じて分担する。ただし、求償者に過失があるときは、他の共同相続人に対して分担を請求することができない。
〇 民法914条(遺言による担保責任の定め)
前三条の規定は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、適用しない。