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民事執行法
第二章 強制執行
第二節 金銭の支払を目的とする債権についての強制執行
第四款 債権及びその他の財産権に対する強制執行
第一目 債権執行等
○ 民事執行法144条(執行裁判所)
1項 債権執行については、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が、この普通裁判籍がないときは差し押さえるべき債権の所在地を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。
2項 差し押さえるべき債権は、その債権の債務者(以下「第三債務者」という。)の普通裁判籍の所在地にあるものとする。ただし、船舶又は動産の引渡しを目的とする債権及び物上の担保権により担保される債権は、その物の所在地にあるものとする。
3項 差押えに係る債権(差押命令により差し押さえられた債権に限る。以下この目において同じ。)について更に差押命令が発せられた場合において、差押命令を発した執行裁判所が異なるときは、執行裁判所は、事件を他の執行裁判所に移送することができる。
4項 前項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
(登場人物等)
執行裁判所
甲(差押債権者)→請求債権→乙(債務者)
↓
被差押債権
↓
丙(第三債務者)
1 預貯金債権を被差押債権とする場合おける特定(民事執行規則133条2項)の問題
特定の程度の問題は、差押債権者の利益と第三債務者の負担の調整の問題である(文献②152頁)。
① 店舗割付方式(原則)
取扱支店を特定した上で、預金の種類等により順位付けをして特定する。
② 全店一括順位付け方式
全店舗を対象とした上で、預金の種類等により順位付けをして特定する。
最高裁判所平成23年9月20日決定
否定
(理由)
差押えの効力が差押命令送達時点で生じることにそぐわない事態にならない程度に、第三債務者が、速やかに、かつ、確実に、被差押債権を識別できる必要がある。
この方式では、それができないため。
この方式が最高裁判所により否定された後、預金額最大店舗方式(支店を特定しないで、最大額の預金がある店舗の預金を被差押債権とする。)の可否が争点となったが、最高裁判所は、これも否定した(平成25年1月17日決定)。
2 1項関係
差押命令の内容
① 対 債務者
取立てその他の処分の禁止
② 対 第三債務者
債務者への弁済禁止
3 2項関係
債務者・第三債務者の審尋は行われず、書面審理のみ。
裁判所は、被差押債権の存否を考慮しないで、差押命令を発令する。
4 5項関係
差押命令の効力発生時期=差押命令が第三債務者に送達された時
5 6項関係
① 申立て却下決定に対し、債権者
発令決定に対し、債務者又は第三債務者
② 請求債権の不存在及び消滅等実体権の存否に関する主張
請求異議訴訟(民執法35条)
③ 第三債務者が被差押債権の不存在の主張
×執行抗告 〇取立訴訟において抗弁として主張
6 4項関係
令和元年改正 文献②189頁
7 7項8項関係
令和元年改正
差押命令が債務者に送達されないが、第三債務者の陳述により被差押債権額が僅少の場合、差押裁判所が送達場所の調査をしないで放置する例が見受けられ、手続上問題であったため、本条項のとおり改正された。文献②183頁
1
2 超過差押えの禁止(本条2項)
(例)
請求債権&執行費用 100万円
〇 被差押債権α 110万円
× 被差押債権β 60万円
超過差押えは、債務者の財産処分権に対する、不必要かつ過度な制限となるため、許されない。
1 差押債権者は、差押え前、被差押債権についての詳細な情報を取得することが難しいため、第三債務者の陳述により詳細な情報を得ることになる。
り
1 差押債権者間の公平(←債権者平等)を図るため、二重差押えの場合、差押えの効力を全部に及ぼす。
2 例
被差押債権:預金48万円
差押債権者Aの請求債権:40万円
差押債権者Bの請求債権:20万円
A:48万円×40万円/(40万円+20万円)
= 32万円
B:48万円×20万円/(40万円+20万円)
= 16万円
○ 民事執行法151条(継続的給付の差押え)
給料その他継続的給付に係る債権に対する差押えの効力は、差押債権者の債権及び執行費用の額を限度として、差押えの後に受けるべき給付に及ぶ。
1 扶養義務等に係る定期金債権
これら債権は月々少額で発生する債権であるが、毎回、差押えを要するとするのは大変である。
→ 弁済期未到来の請求債権による差押え(予備差押え)を、
給料その他の継続的給付に係る債権を被差押債権とする差押えを許容した。
1 給料・退職金等債務者が生計を維持するために必要な債権
(本条1項2項)
① 3/4=差押禁止
② 3/4が1か月33万円(民事執行法施行令2条1項1号)を超える場合(退職金除く)
33万円超の部分は、差押え可
2 請求債権=扶養義務等に係る定期金債権(民執法151条の2第1項各号)(本条2項)
差押え禁止の範囲
「3/4」(原則)→<縮小>→「1/2」
債務者の生活保護のため。
○ 民事執行法153条(差押禁止債権の範囲の変更)
1項 執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部若しくは一部を取り消し、又は前条の規定により差し押さえてはならない債権の部分について差押命令を発することができる。
2項 事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定により差押命令が取り消された債権を差し押さえ、又は同項の規定による差押命令の全部若しくは一部を取り消すことができる。
3項 前二項の申立てがあつたときは、執行裁判所は、その裁判が効力を生ずるまでの間、担保を立てさせ、又は立てさせないで、第三債務者に対し、支払その他の給付の禁止を命ずることができる。
4項 第一項又は第二項の規定による差押命令の取消しの申立てを却下する決定に対しては、執行抗告をすることができる。
5項 第三項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。
1 差押債権者の第三債務者に対する取立権を規定したものである。
2 取立権の発生
(1)原則(本条1項)
差押命令送達日より1週間の経過が要件
← 差押命令に対する抗告期間(民事執行法145条6項)の満了を考慮した。
(2)被差押債権が給与・退職金等(民執法152条1項・2項)の場合(本条2項)
① 差押命令送達日より4週間の経過が要件 ※1
② ①にかかわらず、請求債権が扶養義務等に係る定期債権の場合、(1)と同じく、1週間の経過 ※2
※1 本条2項
令和元年改正
債務者の生活に与える影響大
→ 取立権が行使される前に、差押禁止範囲の拡張を求める申立て(民執法153条)の機会を保障
※2 本条2項( )書
令和元年改正
この場合は、債権者の生活維持の利益>債務者の利益
→ (1)の原則どおり。
3 取立権行使により回収した場合
① 債務者が債権者に対し弁済したとみなされる。(本条3項)
② 債権者→裁判所 取立届の提出(本条4項)
[文献]①270頁、 ②187頁
1 権利供託(本条1項)
これにより、第三債務者は、差押債権者・債務者間の紛争から解放される。
2 義務供託(本条2項)
取立訴訟の訴状の送達を受ける時までに
① 差押えの競合が発生した場合
被差押債権の全額
② 配当要求があった旨の文書の送達を受けた場合
差し押さえられた部分に相当する金員
を供託する義務を負う。
2 義務供託(本条2項)
ち
〇 民事執行法166条(配当等の実施)
1項 執行裁判所は、第百六十一条第七項において準用する第百九条に規定する場合のほか、次に掲げる場合には、配当等を実施しなければならない。
一 第百五十六条第一項若しくは第二項又は第百五十七条第五項の規定による供託がされた場合
二 売却命令による売却がされた場合
三 第百六十三条第二項の規定により売得金が提出された場合
2項 第八十四条、第八十五条及び第八十八条から第九十二条までの規定は、前項の規定により執行裁判所が実施する配当等の手続について準用する。
3項 差し押さえられた債権が第百五十二条第一項各号に掲げる債権又は同条第二項に規定する債権である場合(差押債権者(数人あるときは、そのうち少なくとも一人以上)の債権に第百五十一条の二第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権が含まれているときを除く。)には、債務者に対して差押命令が送達された日から四週間を経過するまでは、配当等を実施してはならない。
民事執行法
第二章 強制執行
第二節 金銭の支払を目的とする債権についての強制執行
第四款 債権及びその他の財産権に対する強制執行
第二目 少額訴訟債権執行
1 少額訴訟債権執行の意義
少額訴訟(民訴法368条~)にあわせて、簡易な執行手続とするため、平成16年(2004年)の法改正で新設された。
2 特徴
① 執行文は不要(民執法25条ただし書)
② 裁判所書記官が執行する。
→ 差押処分
〇 民事執行法167条の3(執行裁判所)
少額訴訟債権執行の手続において裁判所書記官が行う執行処分に関しては、その裁判所書記官の所属する簡易裁判所をもつて執行裁判所とする。
民事執行法
第二章 強制執行
第二節 金銭の支払を目的とする債権についての強制執行
第五款 扶養義務等に係る金銭債権についての強制執行の特例
【参考・参照文献】
このページは、下記文献を参考・参照して作成しました。
① 平野哲郎 実践民事執行法・民事保全法(第3版)(令和2年、日本評論社)239頁~
② 東京弁護士会法友会編 Q&A 改正民事執行法の実務(令和2年、ぎょうせい)
③ 藤田広美 民事執行・保全(2010年、羽鳥書店)
④ 浦野雄幸編 基本法コンメンタール民事執行法(第6版)(2009年、日本評論社)
⑤ 近藤崇晴・大橋寛明・上田正俊編 民事執行の基礎と
応用(補訂増補版)(平成12年、青林書院)