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債権法改正 意思表示(その2)錯誤、詐欺・強迫

民法第1編 総則
第5章 法律行為
第2節 意思表示

〇 民法95条(錯誤)(平成29年改正法)

1項 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる

1号 意思表示に対応する意思を欠く錯誤

2号 表意者が法律行為の基礎とした事情についてその認識が真実に反する錯誤

2項 前項第2号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。

3項 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第1項の規定による意思表示の取消しをすることができない。

1号 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。

2号 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。

4項 第1項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

旧95条

 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

1 旧法は、錯誤について簡素な規定であったため、判例・学説が無効に当たる要件を定立し(「要素」の解釈)、また、判例・学説上、動機の錯誤無効を認める要件について大いに争われた。

 新法は、錯誤の効果を無効から取消しに改め(1項柱書)、また、第三者保護規定を設け(4項)、もって詐欺取消しの規律と同一にし、更に、上記錯誤無効を認める要件を、基本的には、判例・通説に従って整理した。

2 錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるとき

 旧法の「要素」についての判例・通説を踏襲したものである。「要素」とは、① 錯誤がなければ表意者はそのような意思表示をしなかった(主観的因果性)+ ② 通常人もそのような意思表示をしなかった(客観的重要性)程の重要性をいう。

3 「表示の錯誤」と「動機の錯誤」

① 表示の錯誤

  1項1号

② 動機の錯誤

  1項2号、2項→双方の要件を満たす必要がある。

4 表意者に錯誤について重過失があっても、錯誤取消しが認められる場合 3項

 1号 相手方が悪意又は重過失

 2号 共通錯誤

 

 旧法解釈で、相手方を保護する必要がないことを理由に、錯誤無効を認められていた。

5 錯誤の効果

 旧法 無効 → 新法 取消し

6 第三者保護規定

 旧法 なし → 新法(本条4項)善意・無過失の第三者

〇 民法96条(詐欺又は強迫)(平成29年改正法)1項 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

2項 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。

3項 前二項の規定による詐欺の意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

旧96条(詐欺又は強迫)

1項 新法1項と同じ。

2項 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。

3項 前二項の規定による詐欺の意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

新法1項 旧法1項から変更がない。

新法2項 第三者の詐欺

 表意者の帰責性

  第三者の詐欺 < 心裡留保

  相手方が、悪意の場合に加えて、善意・有過失の場合も

  表意者の保護を相手方の保護に優先させ、取り消すことが

  できることに改めた。

新法3項 詐欺による意思表示における第三者保護要件

  表意者の帰責性

  詐欺 < 虚偽表示

  第三者の保護要件として、

  善意 → 善意・無過失

  に改めた。 

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