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〇 民法149条(仮差押え等による時効の完成猶予)(平成29年改正)
次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了した時から6箇月を経過するまでの間は、時効は完成しない。
一 仮差押え
二 仮処分
旧154条(差押え、仮差押え及び仮処分)
差押え、仮差押え及び仮処分は、権利者の請求により又は法律の規定に従わないことにより取り消されたときは、時効の中断の効力を生じない。
旧法は、仮差押え及び仮処分を時効中断事由(改正法では、時効更新事由)としていた。
新法は、民事保全手続の暫定性に鑑み、仮差押え及び仮処分を、時効更新事由とはしないで、時効完成猶予事由であるとした。
〇 民法150条(催告による時効の完成猶予)(平成29年改正)
1項 催告があったときは、その時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2項 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
旧153条(催告)
催告は、6箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法若しくは家事事件手続法による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。
1項 新法は旧法から実質的な変更はない。新法は、催告が、時効完成猶予事由であることを明記した。
2項 催告の繰返しには、時効完成猶予の効力を生じないことを明記した。
○ 民法151条(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)(平成29年改正により新設)
1項 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。
一 その合意があった時から一年を経過した時
二 その合意において当事者が協議を行う期間(一年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
三 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から六箇月を経過した時
2項 前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の同項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。
ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて五年を超えることができない。
3項 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第一項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。
4項 第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。
5項 前項の規定は、第一項第三号の通知について準用する。
1 制度の趣旨
改正前の法は、当事者間で協議がされている間、時効の完成を阻止する規定はなかった。このため、債権者は、たとえ協議が継続中であっても、時効完成を阻止するため、時効中断措置として訴え提起等をせざるを得なかった。
協議には債権者の権利行使の意思が表れていること、紛争解決に向けての協議を尊重することから、時効完成猶予の制度を設けた。
協議の合意は、手続上明確にしておく必要があるため、書面(電磁的記録を含む)による協議の合意を要求した。
署名押印等は不要であり、電子メールによる申入れと受諾であっても、協議を行う合意が認定できればよい。
2 時効の完成が猶予される期間(本条1項)
[1号]協議の合意があった時から1年
[2号]1年未満の協議期間を定めた時はその時から6か月
[3号]協議続行を拒絶する旨の書面通知をした時から6か月
3 再度の時効完成猶予(本条2項)
「前項の規定により時効の完成が猶予されている間」とは、時効が本来完成すべき時が到来しているものの、完成猶予事由の効力によって時効の完成が猶予された状態をいう。
上記の間に、改めて協議の合意をすることにより、再度、時効の完成を猶予させることができる。
ただは、完成猶予期間は、本来の時効期間の満了時から通算して5年を超えることができないものとした。これは、それだれの期間協議して協議が調わない場合には、自発的な紛争解決の見込みは薄いと考えられたためである。
4 協議を行う旨の合意と催告との関係(本条4項)
[1文]催告によって時効の完成が猶予されている期間中になされた協議を行う旨の合意(本条1項)
合意には、時効完成猶予の効力は認められない。
[2文]協議を行う旨の書面合意(本条1項)による時効の完成が猶予されている期間中になされた催告
催告には、時効完成猶予の効力は認められない。
[注意]「時効の完成が猶予されている間」(3項)は、本来の時効期間を経過した後の猶予期間を意味する。
よって、催告後本来の時効期間が経過する前に、協議を行う旨の書面合意が行われた場合は、合意時点から時効完成猶予の効力が生じる。
5 経過措置(附則10条3項)
(1)施行日前に権利について協議を行う旨の合意が書面でされた場合(新法151条4項の電磁的記録も同じ)
その合意には、改正法151条は適用されない。
(2)施行日以後に作成された151条の書面・電磁的記録であれば、施行日前に発生した債権であっても、改正法151条が適用される。
○ 民法158条(未成年者又は成年被後見人と時効の完成猶予)
1項 時効の期間の満了前六箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。
2項 未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父、母又は後見人に対して権利を有するときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その権利について、時効は、完成しない。
○ 民法159条(夫婦間の権利の時効の完成猶予)
夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
○ 民法160条(相続財産に関する時効の完成猶予)
相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
○ 民法161条(天災等による時効の完成猶予)
時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため第147条第1項各号又は第148第1項各号に掲げる事由に係る手続を行うことができないときは、その障害が消滅した時から3箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
○ 旧161条(天災等による時効の停止)
時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため時効を中断することができないときは、その障害が消滅した時から2週間を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
旧法は、天災・事変の際の時効完成猶予期間(改正前:停止期間)を障害消滅時から2週間としていたが、これは短すぎるので、新法は、障害消滅時から3箇月とした。
【参考・参照文献】
以下の文献を参考・参照して作成しました。
□① 日本弁護士連合会編・実務解説改正債権法(第2版)(2020年、弘文堂)88頁
□② 公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部・民事交通事故訴訟損害賠償算定基準2020(令和2年)下巻(講演録編) 109頁
□③ 丸山絵美子・法学教室480号71頁
□④ 潮見佳男 民法(全)第3版(令和4年、有斐閣)103頁