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○ 労働基準法17条(前貸金相殺の禁止)
使用者は、前貸金その他労働することを条件とする前貸の債権と貸金を相殺してはならない。
[コメント]
1 戦前(太平洋戦争前)、雇用契約締結に際して、使用者が労働者又はその親に金銭を貸し付け、その後、労働者が労働して得る賃金から貸金を返済(法的には相殺)する慣行があった。労働者は前に借りたお金を返済するために将来働くこととなり(借金→労働→返済)、生活の糧であるはずの賃金を生活費に充てること(労働→生活費)ができず生活が不安定となり、また、借金を返済し終わるまでその使用者の仕事を辞めることができず、借金の額及び労働条件(賃金の額)如何によっては、長期間、使用者に拘束されることになる。「前借金は労働者の人身を拘束する足止め策として機能した。」(菅野235頁)
本条は、このような悪弊がある、「前借金」を自働債権とし、賃金を受働債権とする「相殺」(使用者からする相殺)を禁止するものである。
2 前借金
前借金のほか「労働することを条件とする前貸の債権」
→ 前借金に追加して給付される金銭であって、前借金と同じ目的のものが含まれる(行政解釈)。
3 労基法24条との関係
労基法24条は賃金からの控除(相殺禁止)が含まれるが(判例)、労使協定により例外的に許容される。労基法17条は、賃金からの控除(相殺禁止)を含む、例外を許容しない点で労基法24条と異なる。
4 労基法17条違反
(1)相殺時に成立する。
(2)罰則規定 労基法119条1号(6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金)
5 例外又は許容場面
使用者が労働者に対しお金を貸し付けることは自由である。 また、「給料の前借り」や「住宅建設資金の融資」等労働者の便宜であるものもある。
労働者が借金を賃金でもって返済すること更にはそのために相殺することが、かつて見られた悪弊(労働者の人身を拘束する足止め策)を伴わないものであれば、全面的に禁止するのもの行き過ぎである。
以上より、内容次第では、労基法24条1項の労使協定を条件に認めてよいこととなる。
① 行政解釈
使用者が労働組合との労働協約の締結或いは労働者からの申出ら基づき、生活必需品の購入等のための生活資金を貸し付け、その後この貸付金を賃金より分割控除する場合においても、その貸付の原因、期間、金額、金利の有無等を総合的に判断して労働することが条件となっいないことが極めて明白な場合、労基法17条は適用されない。
② 住宅建設資金の融資等
真に労働者の便宜のためのものであり、また労働者の申出に基づくものであること、貸付期間は必要を満たし得る範囲であり、貸付金額も1か月の賃金又は退職金等の充当によって生活を脅威し得ない程度に返済し得るものであること、返済前であっても退職の自由が制約されていないこと等が明らかであれは、労基法17条には違反しない。
【参考参照文献】
西谷敏・野田進・和田肇編・新基本法コンメンタール労働基準法・労働契約法58頁、菅野・労働法第11版補正版234
頁
○ 労働基準法18条(強制貯金)