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<個人再生申立ての準備の体系>
【1】最低弁済額の検討(書記官研究66頁)
【2】申立て書類の作成
① 申立書 ② 債権者一覧表 ③ 財産目録 ④ 陳述書 ⑤ 家計収支表 ⑥ その他
【3】給与所得者等再生~可処分所得要件
【4】履行可能性の検討
<最低弁済額の検討>
1 小規模個人再生における最低弁済額要件
① 再生債権額基準による最低弁済額を下回らないこと
民再法231条1項、2項3号4号
② 清算価値を下回らないこと
民再法231条1項、174条2項4号
以上より、①の金額と②の金額を比較して、多額が最低弁済額となる。
2 再生債権額基準の意義
通常の再生手続では、清算価値保障原則の要件のみが定められており、再生債権額基準による最低弁済額要件は定められていない。
(理由)大多数の個人債務者は換価できる財産を有していない。再生債権額基準による最低弁済額要件がないと、弁済しないことを内容とする再生計画を認めることにより、小規模個人再生手続の基本理念に反する。また、僅かの分割弁済で足りるとすることは、モラル・ハザードを招来するおそれがある。
3 無異議債権の額及び評価済債権の額の総額 の算出方法(住宅資金貸付債権がない場合)民再法231条2項2号
【あ】-【い】
【あ】原則 無異議債権の額及び評価済債権の額の総額
【い】控除
① 別除権の行使によって弁済を受けることができると
見込まれる再生債権の額
別除権者は、再生手続外で担保権を実行して、換価代金を自己の債権の弁済に充当することができる(民再法53条、177条2項)。当該部分については、再生債務者の弁済減資を他の再生債権者と分け合う関係にはない。
② 民再法第84条第2項に掲げる請求権の額
当該債権について、再生計画における別段の定め(劣後的な取扱い)ができる(民再法229条1項)。→再生債務者の弁済減資を他の再生債権者と分け合う関係にはない。(書記官研究29頁)
4 基準債権額 の算出方法(住宅資金貸付債権がない場合)民再法231条2項3号4号
3と同じ。申立て段階では、「基準債権額」が「基準債権額の予定額」となる。
<再生債権額基準による最低弁済額>
1 無異議債権の額及び評価済債権の額の総額(民再法231条2項2号)が3000万円以下の場合(同条項4号)
① 100万円未満 総額全部
② 100万円以上500万円未満 100万円
③ 500万円以上1500万円以下 総額の5分の1
④ 1500万円を超え3000万円以下 300万円
2 無異議債権の額及び評価済債権の額の総額(民再法231条2項2号)が3000万円を超え5000万円以下の場合(同条項3号)
3000万円を超え5000万円以下 総額の10分の1
(書記官研究70頁)
1 再生計画における最低弁済額
(1)小規模個人再生手続の場合
① 負債総額基準による算出額、② 清算配当率基準による算出金額のうち高い金額
① 負債総額基準
再生債権の総額(住宅ローン等を除く)により、次のとおり区分される。
100万円未満の人・・・・・・総額全部
100万円以上500万円以下の人・・・・・・100万円
500万円を超え1500万円以下の人・・・・・・総額の5分の1
1500万円を超え3000万円以下の人・・・・・・300万円
3000万円を超え5000万円以下の人・・・・・・総額の10分の1
② 清算配当率基準
破産した場合の配当(民事再生法230条2項、174条2項4号)
(2)給与所得者等再生手続の場合
① 負債総額基準による算出金額、② 清算配当率基準による算出金額、③ 可処分所得2年分基準による算出金額のうち、最も高い金額
① 負債総額基準(1)①と同じ。
② 清算配当率基準(1)②と同じ。
民事再生法241条2項2号
③ 可処分所得2年分基準
民事再生法241条2項7号 後記
<清算価値保障原則【総論】>
1 意義
① 清算価値
再生債務者が破産した場合の予想配当額
② 清算価値保障原則の意義
再生計画における弁済額が、破産における予想配当額以上でなければならないこと。
2 清算価値保障原則の根拠
① 法文上の根拠 民再法231条1項、174条2項4号、241条2項2号
② 理論的根拠 再生手続は破産手続に優先して行われ、再生債権者から破産手続による配当を受ける機会を奪うものである(民再法39条、184条)。→「破産手続により債権者が受ける満足を下回る」弁済しかされない再生計画は、「再生債権者の利益」の観点から許容されない。
3 清算価値算定の基準時
(結論)再生計画認可決定時
(理由) 清算価値の保障が再生計画認可の要件となっている。
(書記官研究77頁、例題解説74頁)
<清算価値保障原則【各論】>
1 清算価値と破産手続における自由財産の範囲の拡張
(書記官研究79頁、例題解説77頁・80頁)
(1)問題の所在
破産手続における自由財産の拡張の制度
→ 清算価値からの控除を認めるか。
(2)考え方
2 現金&直前現金化の問題
(1)現金の清算価値
99万円の範囲内であれば、自由財産として清算価値から控除することを認める運用が多い。
(2)直前現金化の問題
<問題の所在>
再生債務者が実質的危機時期以後、財産を売却等して現金を取得した場合、現状により現金として考えて、99万円を上限として清算価値から控除すると、再生債務者による、再生債務者の資産の減少を認めることになってしまう。
そこで、原状により換金前の財産として考える見解がある。最も、再生債務者にも、生活費の確保からやむを得ず換金する事情があり、また、有用の資にあてる等一概に換金を否定できない場合もある。
□清算価値と滞納公租公課(書記官研究80頁)
(1)問題の所在
再生債務者が一般優先債権(民再法122条1項)に当たる公租公課等を滞納している場合
→ 清算価値から公租公課の滞納額を控除するか。
(2)考え方
□ 清算価値と否認対象行為(書記官研究82頁、例題解説80頁)
(1)問題の所在
否認対象行為がある場合、破産手続においては、破産管財人が否認権を行使して破産財団を増殖させ、その結果、債権者に対する配当原資が増加し得る。
これに対し、個人再生手続においては、通常の再生手続と異なり、否認権の行使は認められない(民再法238条・245条による第6章第2節の規定の適用除外)。
(2) 考え方
再生債務者に否認対象行為がある場合は、その行為によって再生債務者から逸失した財産額を上乗せして清算価値を算定する。
(3)各論
① 偏頗弁済(破産法162条1項)が問題となる場合
ⅰ 勤務先からの借入金を給与・退職金の天引により弁済している場合
ⅱ 給与の差押え等強制執行がされている場合
ⅲ 対抗要件を具備しない第三者が再生債務者の自動車を引き揚げる場合
a 別除権行使のための対抗要件具備
所有権留保権者が別除権を行使するためには、再生手続開始時点で、目的物について対抗要件を具備している必要がある(最判平成22年6月4日)。
・ 普通乗用自動車の対抗要件
道路運送車両法による登録(同法4条、5条1項)
・ 軽自動車の対抗要件
引渡し(占有改定を含む)
b 連帯保証方式(最判平成29年12月7日)
~ 契約締結時~
[売主]→<売買代金債権>→[購入者]
△ 被担保債権 ↑
<保証委託契約>
↓
[信販会社]
(売主に対し連帯保証人の立場)
~ 代位弁済後~
[信販会社]→<売買代金債権>→[購入者]
(代位弁済) △ 被担保債権
[売主]
② その他
【参考・参照文献】
下記文献を参考・参照して作成しました。
① 大阪地方裁判所・大阪弁護士会個人再生手続運用研究会 改正法対応 事例解説 個人再生 ~大阪再生物語~ (平成18年、新日本法規)略称:大阪再生
② 川畑正文ほか編 はい6民です お答えします 倒産実務Q&A p453~ (2018年10月第2版、大阪弁護士会協同組合)略称:はい6民
③ 例題解説 個人再生手続(令和元年、法曹会)略称:例題解説
④ 始関正光編著 一問一答 個人再生手続(平成13年、商事法務研究会)略称:一問一答
⑤ 園尾隆司・小林秀之編 条解民事再生法(平成15年、弘文堂) 略称:条解
⑥ 木内道祥監修 全国倒産処理弁護士ネットワーク編 個人再生の実務Q&A120問 略称:Q&A
(2018年、金融財政事情研究会)
⑦ 個人再生事件における書記官事務の実証的研究(令和6年、司法協会) 略称:書記官研究