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民事訴訟の手続-裁判によらない訴訟の完結

民事訴訟法 第2編 第一審の訴訟手続
第6章 裁判によらない訴訟の完結
(261条~267条)

<裁判によらない訴訟の完結 の体系>

 裁判によらない(=当事者の意思による)訴訟の終了

1 訴えの取り下げ

2 訴訟上の和解 ←→ 裁判外の和解(民法695条)

    ↑

    ↓

  訴え提起前の和解

  (民訴法275条、起訴前の和解、即決和解)

3 請求の放棄・認諾

(1)請求の放棄

(2)請求の認諾

<訴えの取下げ>

〇 民事訴訟法261条(訴えの取下げ)
1項 訴えは、判決が確定するまで、その全部又は一部を取り下げることができる。
2項 訴えの取下げは、相手方が本案について準備書面を提出し、弁論準備手続において申述をし、又は口頭弁論をした後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。ただし、本訴の取下げがあった場合における反訴の取下げについては、この限りでない。
3項 訴えの取下げは、書面でしなければならない。ただし、口頭弁論、弁論準備手続又は和解の期日(以下この章において「口頭弁論等の期日」という。)においては、口頭ですることを妨げない。
4項 第二項本文の場合において、訴えの取下げが書面でされたときはその書面を、訴えの取下げが口頭弁論等の期日において口頭でされたとき(相手方がその期日に出頭したときを除く。)はその期日の調書の謄本を相手方に送達しなければならない。
5項 訴えの取下げの書面の送達を受けた日から二週間以内に相手方が異議を述べないときは、訴えの取下げに同意したものとみなす。訴えの取下げが口頭弁論等の期日において口頭でされた場合において、相手方がその期日に出頭したときは訴えの取下げがあった日から、相手方がその期日に出頭しなかったときは前項の謄本の送達があった日から二週間以内に相手方が異議を述べないときも、同様とする。

〇 民事訴訟法262条(訴えの取下げの効果)

1項 訴訟は、訴えの取下げがあった部分については、初めから係属していなかったものとみなす。

2項 本案について終局判決があった後に訴えを取り下げた者は、同一の訴えを提起することができない。

〇 民事訴訟法263条(訴えの取下げの擬制)

 当事者双方が、口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論若しくは弁論準備手続における申述をしないで退廷若しくは退席をした場合において、一月以内に期日指定の申立てをしないときは、訴えの取下げがあったものとみなす。当事者双方が、連続して二回、口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論若しくは弁論準備手続における申述をしないで退廷若しくは退席をしたときも、同様とする。

 

<訴訟上の和解>

1 訴訟上の和解の意義

 訴訟の係属中、当事者が互いに譲歩して訴訟を終了させる旨の訴訟上の合意

2 訴訟上の和解の機能

① 紛争の円満な解決

② 訴訟ではALLorNothingの結果となるところ、互譲により当事者双方がある程度納得のゆく相当な解決を図ることが可能となる。

③ 給付義務が合意された場合には、任意の履行が期待できる。

④ 判決・強制執行によ解決よりも、迅速な解決が期待できる。

3 訴訟上の和解の要件

(1)手続の段階

〇 民訴法89条 裁判所は、訴訟がいかなる程度にあるかを問わず、和解を試み、又は受命裁判官若しくは受託裁判官に和解を試みさせることができる。

(2)手続

 当事者の和解意思及び和解条項を確認する場が必要

① 当事者双方が出頭した期日

  口頭弁論、弁論準備、和解の期日

② ①の例外として、書面和解 民訴法264条

③ ①の例外として、裁定和解 民訴法265条

  現実には、利用されていない。

(3)和解の対象

① 和解の対象となる権利が当事者の自由な処分に委ねられていること

② 訴訟物以外の権利も取り込むこともできる。

(4)和解の内容

① 法律に違反しないこと、公序良俗に反しないこと

② 当事者の互譲

  互譲がない場合 → 請求の放棄or認諾

  互譲の程度は問わない。

(例)被告が原告の請求を全部認め、原告が被告に支払猶予の期限を認める又は分割払いを認める。

 被告が原告の請求を全部認め、訴訟費用は原告の負担とする。

4 訴訟上の和解の効果

 和解内容を調書

 

  

 

〇 民事訴訟法264条(和解条項案の書面による受諾)

 当事者が遠隔の地に居住していることその他の事由により出頭することが困難であると認められる場合において、その当事者があらかじめ裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官から提示された和解条項案を受諾する旨の書面を提出し、他の当事者が口頭弁論等の期日に出頭してその和解条項案を受諾したときは、当事者間に和解が調ったものとみなす。

〇 民事訴訟法265条(裁判所等が定める和解条項)

1項 裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、当事者の共同の申立てがあるときは、事件の解決のために適当な和解条項を定めることができる。

2項 前項の申立ては、書面でしなければならない。この場合においては、その書面に同項の和解条項に服する旨を記載しなければならない。

3項 第一項の規定による和解条項の定めは、口頭弁論等の期日における告知その他相当と認める方法による告知によってする。

4項 当事者は、前項の告知前に限り、第一項の申立てを取り下げることができる。この場合においては、相手方の同意を得ることを要しない。

5項 第三項の告知が当事者双方にされたときは、当事者間に和解が調ったものとみなす。

<請求の放棄・認諾>

〇 民事訴訟法266条(請求の放棄又は認諾)

1項 請求の放棄又は認諾は、口頭弁論等の期日においてする。

2項 請求の放棄又は認諾をする旨の書面を提出した当事者が口頭弁論等の期日に出頭しないときは、裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、その旨の陳述をしたものとみなすことができる。

〇 民事訴訟法267条(和解調書等の効力)
 和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。

【参考・参照文献】

 以下の文献を参考・参照して、作成しました。

□ 瀬木比呂志 民事訴訟法(2019年、日本評論社)497頁

□ 裁判所書記官研修所実務研究報告書

  書記官事務を中心とした和解条項に関する実証的研究

  (昭和57年、法曹会)

□ 笠井正俊 講座流れをつかむ民事訴訟法第14回「訴訟上の和解等、訴訟を終了させる当事者の訴訟行為」(法学教室512号66頁)

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