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控訴審

民事訴訟法 第3編 第1章 控訴

○ 民事訴訟法281条(控訴をすることができる判決等)

1項 控訴は、地方裁判所が第一審としてした終局判決又は簡易裁判所の終局判決に対してすることができる。

   ただし、終局判決後、当事者双方が共に上告をする権利を留保して控訴をしない旨の合意をしたときは、この限りでない。

2項 第十一条第二項及び第三項の規定は、前項の合意について準用する。

 

※ 民訴法11条(管轄の合意)

1項 当事者は、第一審に限り、合意により管轄裁判所を定めることができる。

2項 前項の合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でしなければ、その効力を生じない。

3項 第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

1 控訴の意義

① 地方裁判所が第一審判決としてした終局判決

  or

  簡易裁判所の終局判決

② 上級裁判所に対する

③ 不服申立て

  ⅰ 事実認定に関する不服申立て 

  ⅱ 法律問題に関する不服申立て

2 控訴の要件

① 対象:控訴の許される判決

② 控訴提起が法定の期間内になされたこと 民訴法285条1項

③ 控訴の利益

④ 不控訴の合意がないこと 

     飛躍上告の合意(上告権を留保する不控訴の合意)(本条1項ただし書)のみならず、単純な不控訴の合意も、訴訟契約の一種として認められる。

 不控訴の合意

ⅰ 要件

a 第一審判決を終局的なものとする趣旨

  → 判決言渡し前の合意にも効力が認められる。

b 当事者双方について不控訴を定める必要がある。

  ← 公平

c 一定の法律関係に基づく訴えを特定 + 書面

ⅱ 効果

a 控訴権の発生を妨げるor消滅する

  合意に反する控訴 不適法として却下

b 判決確定の時期

判決言渡し前の合意>

  判決は言渡しと同時に確定する。

<判決言渡し後の合意>

  合意成立時に判決が確定する。

3  控訴の効果

① 確定遮断効 民訴法116条

② 移審の効果

4 控訴審の構造

  覆審制、事後審制、続審制のうち続審制を採る。

5 控訴審の審理

① 第一審判決に対する不服申立ての当否

② 取消自判の場合 請求の当否

 

○ 民事訴訟法282条(訴訟費用の負担の裁判に対する控訴の制限) 

訴訟費用の負担の裁判に対しては、独立して控訴をすることができない。

○ 民事訴訟法283条(控訴裁判所の判断を受ける裁判) 

 終局判決前の裁判は、控訴裁判所の判断を受ける。ただし、不服を申し立てることができない裁判及び抗告により不服を申し立てることができる裁判は、この限りでない。

○ 民事訴訟法284条(控訴権の放棄)

控訴をする権利は、放棄することができる。

1 控訴権の発生

 第一審判決の言渡しにより発生する。

 判決言渡し前の控訴は、控訴権に基づかず不適法である(最判昭和24年8月18日)。

2 控訴権の放棄

  放棄によって控訴権は消滅する。

① 控訴提起前

  放棄後の控訴提起は不適法

② 控訴提起後

 控訴の取下げとともにすることを要する(民訴規則173条2項)。

 控訴の取下げがされなかった場合、裁判所は、控訴を不適法として取り扱う。

○ 民事訴訟法285条(控訴期間) 

控訴は、判決書又は第二百五十四条第二項の調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に提起しなければならない。ただし、その期間前に提起した控訴の効力を妨げない。

 本条が定めた控訴期間は、不変期間である。

→ 民訴法96条

 第96条(期間の伸縮及び付加期間) 

1項 裁判所は、法定の期間又はその定めた期間を伸長し、又は短縮することができる。ただし、不変期間については、この限りでない。

2項 不変期間については、裁判所は、遠隔の地に住所又は居所を有する者のために付加期間を定めることができる。 

○ 民事訴訟法286条(控訴提起の方式) 

1項 控訴の提起は、控訴状を第一審裁判所に提出してしなければならない。

2項 控訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

一 当事者及び法定代理人

二 第一審判決の表示及びその判決に対して控訴をする旨

1 控訴状の提出 

 地方裁判所の判決に対する控訴の場合、高等裁判所宛ての控訴状を地方裁判所(事件係)に提出することになる。

2 控訴状の必要的記載事項 

 控訴状の必要的記載事項は本条2項のとおりであるが、一般的には、控訴審において求める判決主文を「控訴の趣旨」の項目で記載する。

※ 民事訴訟規則175条(攻撃防御方法を記載した控訴状)

攻撃又は防御の方法を記載した控訴状は、準備書面を兼ねるものとする。

3 控訴理由(書)

※ 民事訴訟規則182条(第一審判決の取消し事由等を記載した書面) 

 控訴状に第一審判決の取消し又は変更を求める事由の具体的な記載がないときは、控訴人は、控訴の提起後五十日以内に、これらを記載した書面を控訴裁判所に提出しなければならない。

 第一審判決の取消し又は変更を求める事由」(控訴理由)は、一般的には、控訴状に記載しないで、別途、控訴理由書を提出する。

4 反論書

※ 民事訴訟規則183条(反論書) 

 裁判長は、被控訴人に対し、相当の期間を定めて、控訴人が主張する第一審判決の取消し又は変更を求める事由に対する被控訴人の主張を記載した書面の提出を命ずることができる。

○ 民事訴訟法287条(第一審裁判所による控訴の却下) 

1項 控訴が不適法でその不備を補正することができないことが明らかであるときは、第一審裁判所は、決定で、控訴を却下しなければならない。

2項 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

1 第一審裁判所による控訴の却下の要件

① 控訴が不適法でその不備を補正することができないこと

(例)

・ 第一審判決で全部勝訴した当事者がした控訴

・ 控訴期間経過後にされた控訴

② ①が明らかであること

○ 民事訴訟法288条(裁判長の控訴状審査権)

 第百三十七条の規定<第一審裁判長の訴状審査権>は、控訴状が第二百八十六条第二項の規定に違反する場合及び民事訴訟費用等に関する法律の規定に従い控訴の提起の手数料を納付しない場合について準用する。

1 記録の送付

  第一審裁判所 → 控訴裁判所 訴規則182条

2 裁判長の控訴状審査 

(1)法条

  本条のほか289条2項

(2)審査事項

① 控訴状の必要的記載事項

② 控訴提起の手数料

③ 控訴状が送達できない場合

  被控訴人の住所の表示が不明である場合

  控訴状を送達するのに必要な費用が予納されない場合

(3)対応

① 任意の補正を促す

② ①が奏功しない場合、補正命令

③ ②の補正命令の期間内に補正されない場合、控訴状却下

○ 民事訴訟法289条(控訴状の送達)

1項 控訴状は、被控訴人に送達しなければならない。

2項 第百三十七条の規定は、控訴状の送達をすることができない場合(控訴状の送達に必要な費用を予納しない場合を含む。)について準用する。

○ 民事訴訟法290条(口頭弁論を経ない控訴の却下)

 控訴が不適法でその不備を補正することができないときは、控訴裁判所は、口頭弁論を経ないで、判決で、控訴を却下することができる。

○ 民事訴訟法291条(呼出費用の予納がない場合の控訴の却下) 

1項 控訴裁判所は、民事訴訟費用等に関する法律の規定に従い当事者に対する期日の呼出しに必要な費用の予納を相当の期間を定めて控訴人に命じた場合において、その予納がないときは、決定で、控訴を却下することができる。

2項 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

○ 民事訴訟法292条(控訴の取下げ) 

1項 控訴は、控訴審の終局判決があるまで、取り下げることができる。

2項 第二百六十一条第三項、第二百六十二条第一項及び第二百六十三条の規定は、控訴の取下げについて準用する。

○ 民事訴訟法293条(附帯控訴) 

1項 被控訴人は、控訴権が消滅した後であっても、口頭弁論の終結に至るまで、附帯控訴をすることができる。

2項 附帯控訴は、控訴の取下げがあったとき、又は不適法として控訴の却下があったときは、その効力を失う。ただし、控訴の要件を備えるものは、独立した控訴とみなす。

3項 附帯控訴については、控訴に関する規定による。ただし、附帯控訴の提起は、附帯控訴状を控訴裁判所に提出してすることができる。

1 附帯控訴の意義

 被控訴人によって控訴審手続においてなされる申立てであり、請求についての原判決を自己の有利に変更することを求めるものである。(文献①618頁)

 不利益変更禁止の原則を排除する手段として機能する。

○ 民事訴訟法294条(第一審判決についての仮執行の宣言)

 控訴裁判所は、第一審判決について不服の申立てがない部分に限り、申立てにより、決定で、仮執行の宣言をすることができる。

○ 民事訴訟法295条(仮執行に関する裁判に対する不服申立て) 

 仮執行に関する控訴審の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。ただし、前条の申立てを却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。

○ 民事訴訟法296条(口頭弁論の範囲等) 

1項 口頭弁論は、当事者が第一審判決の変更を求める限度においてのみ、これをする。

2項 当事者は、第一審における口頭弁論の結果を陳述しなければならない。

1 結果陳述の方法

○ 原判決記載のとおり原審口頭弁論の結果陳述(文献③⑤)

  原判決の事実摘示のとおり原審の口頭弁論の結果陳述(文献④)

 第一審で提出された訴訟資料が第一審判決に記載されたとおりのものであるとして、控訴審に顕出される。(文献③)

 第一審の判決書において事実摘示として記載された事実を前提として、控訴審の審理が進められる。(文献④)

 仮に実際に当事者が第一審でした主張と第一審判決事実摘示中の主張との間に食い違いがあったとしても、控訴審においては、第一審判決事実摘示中の主張が当事者の主張であるものとして、審理が行われる。(文献⑥p36)

 

 

○ 原審口頭弁論の結果陳述

 第一審で提出された訴訟資料がそのまま全部控訴審に顕出される。(文献③)

 第一審の判決書において事実摘示として記載された事実以外にも第一審の弁論に顕れた事実を採り上げて、控訴審の審理の対象とすることになる。(文献④)

・ 第一審判決中の訴訟整理が不正確である場合

・ 第一審判決が欠席判決の場合

 第一審判決書に当事者の主張が脱落し、又は誤解の上記載されている場合(文献⑤)

 

 

 

 

 

○ 民事訴訟法297条(第一審の訴訟手続の規定の準用) 

 前編第一章から第七章までの規定は、特別の定めがある場合を除き、控訴審の訴訟手続について準用する。ただし、第二百六十九条の規定は、この限りでない

○ 民事訴訟法298条(第一審の訴訟行為の効力等) 

1項 第一審においてした訴訟行為は、控訴審においてもその効力を有する。

2項 第百六十七条の規定は、第一審において準備的口頭弁論を終了し、又は弁論準備手続を終結した事件につき控訴審で攻撃又は防御の方法を提出した当事者について、第百七十八条の規定は、第一審において書面による準備手続を終結した事件につき同条の陳述又は確認がされた場合において控訴審で攻撃又は防御の方法を提出した当事者について準用する。

○ 民事訴訟法299条(第一審の管轄違いの主張の制限) 

控訴審においては、当事者は、第一審裁判所が管轄権を有しないことを主張することができない。ただし、専属管轄(当事者が第十一条の規定により合意で定めたものを除く。)については、この限りでない。

2 前項の第一審裁判所が第六条第一項各号に定める裁判所である場合において、当該訴訟が同項の規定により他の裁判所の専属管轄に属するときは、前項ただし書の規定は、適用しない。

○ 民事訴訟法300条(反訴の提起等) 

1項 控訴審においては、反訴の提起は、相手方の同意がある場合に限り、することができる。

2項 相手方が異議を述べないで反訴の本案について弁論をしたときは、反訴の提起に同意したものとみなす。

3項 前二項の規定は、選定者に係る請求の追加について準用する

○ 民事訴訟法301条(攻撃防御方法の提出等の期間)

1項 裁判長は、当事者の意見を聴いて、攻撃若しくは防御の方法の提出、請求若しくは請求の原因の変更、反訴の提起又は選定者に係る請求の追加をすべき期間を定めることができる。

2項 前項の規定により定められた期間の経過後に同項に規定する訴訟行為をする当事者は、裁判所に対し、その期間内にこれをすることができなかった理由を説明しなければならない。

○ 民事訴訟法302条(控訴棄却) 

1項 控訴裁判所は、第一審判決を相当とするときは、控訴を棄却しなければならない。

2項 第一審判決がその理由によれば不当である場合においても、他の理由により正当であるときは、控訴を棄却しなければならない。

○ 民事訴訟法303条(控訴権の濫用に対する制裁) 

1項 控訴裁判所は、前条第一項の規定により控訴を棄却する場合において、控訴人が訴訟の完結を遅延させることのみを目的として控訴を提起したものと認めるときは、控訴人に対し、控訴の提起の手数料として納付すべき金額の十倍以下の金銭の納付を命ずることができる。

2項 前項の規定による裁判は、判決の主文に掲げなければならない。

3項 第一項の規定による裁判は、本案判決を変更する判決の言渡しにより、その効力を失う。

4項 上告裁判所は、上告を棄却する場合においても、第一項の規定による裁判を変更することができる。

5項 第百八十九条の規定は、第一項の規定による裁判について準用する。

○ 民事訴訟法304条(第一審判決の取消し及び変更の範囲) 

 第一審判決の取消し及び変更は、不服申立ての限度においてのみ、これをすることができる。

1 控訴人にとって、第一審判決以上に不利益な控訴審判決がされない保障を確保されている。

○ 民事訴訟法305条(第一審判決が不当な場合の取消し) 

 控訴裁判所は、第一審判決を不当とするときは、これを取り消さなければならない。

○ 民事訴訟法306条(第一審の判決の手続が違法な場合の取消し) 

 第一審の判決の手続が法律に違反したときは、控訴裁判所は、第一審判決を取り消さなければならない。

○ 民事訴訟法307条(事件の差戻し)

 控訴裁判所は、訴えを不適法として却下した第一審判決を取り消す場合には、事件を第一審裁判所に差し戻さなければならない。ただし、事件につき更に弁論をする必要がないときは、この限りでない。

○ 民事訴訟法308条

1項 前条本文に規定する場合のほか、控訴裁判所が第一審判決を取り消す場合において、事件につき更に弁論をする必要があるときは、これを第一審裁判所に差し戻すことができる。

2項 第一審裁判所における訴訟手続が法律に違反したことを理由として事件を差し戻したときは、その訴訟手続は、これによって取り消されたものとみなす。

○ 民事訴訟法309条(第一審の管轄違いを理由とする移送) 

 控訴裁判所は、事件が管轄違いであることを理由として第一審判決を取り消すときは、判決で、事件を管轄裁判所に移送しなければならない。

○ 民事訴訟法310条(控訴審の判決における仮執行の宣言) 

 控訴裁判所は、金銭の支払の請求(第二百五十九条第二項の請求を除く。)に関する判決については、申立てがあるときは、不必要と認める場合を除き、担保を立てないで仮執行をすることができることを宣言しなければならない。ただし、控訴裁判所が相当と認めるときは、仮執行を担保を立てることに係らしめることができる。

○ 民事訴訟法310条の2(特許権等に関する訴えに係る控訴事件における合議体の構成) 

 第六条第一項各号に定める裁判所が第一審としてした特許権等に関する訴えについての終局判決に対する控訴が提起された東京高等裁判所においては、当該控訴に係る事件について、五人の裁判官の合議体で審理及び裁判をする旨の決定をその合議体ですることができる。ただし、第二十条の二第一項の規定により移送された訴訟に係る訴えについての終局判決に対する控訴に係る事件については、この限りでない。

○ 民事訴訟法312条

 

【参考・参照文献】

 このページは、次の文献を参考・参照して作成しました。

① 伊藤眞 民事訴訟法(1998年、有斐閣)609頁

② 藤田広美・講義民事訴訟(第2版)頁(2011年、東京大学出版会)

③ 岡口基一民事訴訟マニュアル(第2版)(下)(平成27年、ぎょうせい)頁

④ 圓道至剛 企業法務のための民事訴訟の実務解説(第2版)(2019年、第一法規)頁

⑤ 小池一利 民事控訴事件の実務上の留意点 判例タイムズ1270号17頁

⑥ 井上繁規 民事控訴審の判決と審理(平成21年、第一法規) 

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