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      非典型担保-所有権留保

<所有権留保総論>
 
1 所有権留保の意義
① 民法典に規定がない担保(非典型的担保)
② 売買契約中の特約として、買主が代金を完済するまで、売主に売買目的物の所有権を留保する条項を入れるものである(安永483頁)。
③ 先取特権(民法311条5号、321条)との比較
 
2 所有権留保の法律構成
□ 安永484頁による説明
法形式:売主に「所有権」を留保し、買主には代金完済による所有権取得の権利(条件付権利)を付与するものである。
実質:売主に売買代金債権の担保権を付与する。(担保的構成)
□ 内田655頁による説明
 基本的に所有権は売主に帰属するが、買主にも物権的な権利(物権的期待権[道垣内]、譲渡担保における設定者留保権に対応するもの)が分属する。
 
3 クレジット会社による所有権留保
 A:売主 C:クレジット会社 B:買主
 判例(最判平成22年6月4日)
 ABCの三者契約
 CのBに対する立替金等債権(残代金相当額+手数料)を担保するため、
 売買目的物の所有権をAからCに移転し、所有権をCに留保するものである。
 CのAに対する立替払により、所有権がA→Bに移転し、その所有権が担保の目的でCに移転するという譲渡担保的構成ではない。

<所有権留保の成立&公示>

1 所有権留保の成立

① 売買契約に際して、売主・買主間で所有権留保を特約する。

② クレジット契約 3記載の三者契約

③ 割賦販売法7条 割賦販売業者の所有権留保が推定

 

2 所有権留保の目的物

① 動産

  担保 

→ 時が経過しても一定の交換価値が維持できること

→ 機械・器具、電気製品等の耐久性があるものが中心となる。

② 不動産

 理論的には、あり得る。

 但し、宅地建物取引業法43条

 

3 所有権留保の被担保債権

(1)原則

 売買契約:売主(A)の買主(B)に対する売買代金債権

 クレジット契約:信販会社(C)の買主(B)に対する立替金等債権

(2)特別の合意による、被担保債権の範囲の拡大

 「売主(A)の買主(B)に対する売買代金債権」+「α」

 「α」:売買契約に関連する部品代金、修理代金

 拡大された所有権留保

4 所有権留保の公示

(1)原則

 所有権留保の設定 所有権の移転(物権変動)はない。

→ 物権変動の対抗要件(民法178条)は、観念できない。

→ 所有権留保は対抗要件は不要(最判平成30・12・7)

(2)登記、登録制度がある目的物

 売主名義で所有権の登記、登録

(3)(2)以外

 明認方法(ネームプレート)

<所有権留保当事者の法的地位>

1 買主の占有・利用&処分

(1)買主の占有・利用

 原則として、買主が無償で行うことができる。

(考え方)

① 形式的アプロウチ

  売主→<使用貸借の合意>→買主

② 実質的アプロウチ

買主の有する物権的地位そのものに無償利用の合意が含まれる。

(2)買主による処分

処分:第三者に対し目的物を譲渡、譲渡担保に供する。

不可 ← 買主は所有者ではない。

それにもかかわらず、買主が処分に及んだ場合、第三者の保護は即時取得(民法192条)による。

(3)その他

① 買主による条件付権利(民法129条)の処分

② 買主は、善良な管理者の注意をもって、目的物の担保価値を保存することを義務付けられる。

③ 買主の債権者が目的物を差し押さえた場合

  留保売主は、第三者異議を申し立てる。

2 留保売主による目的物の処分等

 売主は、代金の完済までは目的物の所有権を留保するが、担保目的に限定されており、代金完済により所有権を取得するという買主の条件的権利を侵害してはならない(民法128条)。

→ 通常の場合、売主は、目的物を第三者に処分できない。

  売主が代金債権を第三者に譲渡する場合、留保所有権は第三者に移転する(担保の随伴性)。

<留保所有権の実行>

1 買主が代金の支払を怠った場合、売主は、留保所有権

基づき、目的物を引き揚げて、換価する等して、他の債権者に優先して代金債権に充当できる。

2 留保所有権の実行

 留保所有権を実行するために、売主は、売買契約を解除する必要があるか。

 売買契約の原状回復としての目的物の返還という観点からは、売買契約の解除が前提となる。

 担保的構成、実質担保の考え方すると、解除を要せず、直截に、実行できる(有力説)。

3 譲渡担保権と同様、理論的には清算の問題が生じる。但し、目的物が動産である場合、目的物の減価により、清算義務が問題となる場面は少ない。

事例 内田【ⅩⅥ-11】

4 割賦販売法の規定(内田657頁)

 

 

 

<流通過程における所有権留保>

 

1 流通過程における所有権留保

 以下、即時取得の対象とならない登録自動車を対象とする。

内田【ⅩⅥ-12】

(1)売主→<所有権留保特約付き売買>→買主=最終消費者

 

(2)売主→<所有権留保特約付き売買>

  →買主=業者(サブディーラー)

  →第三者に転売

 

 売主は第三者に対し、留保した所有権を行使して、目的物の返還を請求できるか?

 

 価値判断としては、否定すべきである。売主は、第三者の出現を容認しているからである。

 

2 判例(最判昭和50年2月28日)

(1)結論

売主の第三者に対する目的物の引渡請求は権利濫用論に当たる。

(2)実質的理由

本来、売主において買主(サブディーラー)に対し自ら負担すべき代金回収不能の危険をて第三者に転嫁しようとするものであり、売主の利益のために、代金を完済した第三者に不測の損害を被らせるものでり、権利濫用として許されない。

(3)展開

 判例法理によると、第三者は、売主からの目的物の引渡請求を退けることができるが、所有権登録名義は売主のままであるため、所有者としての権能を十分に行使できない。第三者は売主に対し、自己への登録名義の移転を請求できるか。

(結論)できる。

(理由)

① 価値判断

② 理論的理由 学説は、授権構成から結論を導く(安永492頁、内田659頁)。売主は買主に対し、目的物を転売するための権限を付与した。権限の付与(授権)により、(第三者が代金を完済すれば)売主から第三者に対し有効に所有権は移転する。

 なお、判例(最判昭和37年8月10日)も授権概念を認める。

動産の購入代金の立替払いにより発生した立替金債務を被担保債権として当該動産の所有権を留保した者は、当該動産が第三者の土地上に放置され、土地所有権者に権利を侵害している場合、当該動産の撤去義務を負うか、また、不法行為責任を負うか。

  最高裁(第三小法廷)平成21年3月10日判決

【事案】

X(賃貸人)←→A(賃借人)

 甲車両を駐車する目的で、月額賃料5,000円で本件土地を賃貸借する契約(本件賃貸借契約)

 

Y(ローン会社)←→A

 甲車両の代金をYがAのために立替払いする契約(本件立て替払契約)

① 甲車両の所有権は、自動車販売店からYに移転し、Aが立替金を完済するまでは担保としてYに留保される。

② Aが立替金の支払い怠りYの催告を受けても支払わないとき、当然に期限の利益を喪失する。

③ 期限の利益を喪失したとき、Aは、Yの留保所有権に基づく甲車両の引渡請求に異議なく同意する。

などの約定がある。

 

A 平成16年12月分以降の賃料を支払わず。

  また、本件立替払契約の分割金も支払わず。

X→A 平成18年4月27日付けで本件賃貸借契約を解除する意思表示

 

その後も、甲車両は、本件土地上に駐車されたままである。

Xは、A(所在不明の様である)のほか、Yを被告として、甲車両を撤去した上での土地明渡し及び駐車場使用料相当損害金の支払いを求めて提訴した。

 Yは、所有権が担保目的であること、甲車両を使用しておらず本件土地を占有していない等と主張して、Xの請求を争った。

 

【判旨】

1 Yは、Aが立替金について期限の利益を喪失しない限り、甲車両を占有、使用する権原を有しないが、Aが期限の利益を喪失して残債務全額の弁済期が経過したときは、Aから甲車両の引渡しを受け、これを売却して代金を残債務の弁済に充てることができる。

2 留保所有権者は、残債務弁済期が到来するまでは、当該動産の交換価値を把握するだけであるが、残債務弁済期経過後は、当該動産を占有し、処分することができる。

→ Yは甲車両の撤去義務を免れることはできない。

3 留保所有権者は不法行為責任についてもは免れることはできないが、Yにおいて、甲車両がXの土地所有権の行使の妨害している事実を告げられる等して、これを知ったときに不法行為責任を負う。

 

※ 原審(XのYに対する請求を棄却)に差し戻した。

 

【解説・評釈等】

1 事案で問題となった類型の所有権留保について判示したものであるが、この類型に該当すれば、被担保債権が立替払契約から発生する債権だけではなく、売買契約から発生する代金債権である場合にも当てはまる。

2 留保所有権者の権能については、被担保債権の弁済期前は譲渡担保権者に目的物を処分する権能を有しないという譲渡担保権に関する判例と類似の考え方である。

3 発展的な課題として、留保所有権者が権利を放棄した場合どうなるのかという問題がある。

4 平野裕之教授の見解

① 判例は、所有権留保について所有権移転時期についての特約と解しているようであるが、この判決は、担保のための所有権であることを認める初めての判決である。

② 担保権を実行するかどうかは自由であり、弁済期到達だけで判決のように取り扱うのは疑問である。

 

平野裕之・コア・テキスト民法Ⅲ担保物権法(第2版)(2019年・新世社)217頁

 

5 内田教授の見解(内田661頁)

 担保権を実行する前のYに完全な所有権があるとはいいがたいが、誰かが責任を負うべき状況の下で、弁済期経過後は、自動車を引き揚げて処分する権限をもつYに責任を負わせた。

 

【参考・参照文献】

下記文献を参考・参照して作成しました。

① 判例タイムズ1306号217頁

② ジュリスト増刊最高裁時の判例Ⅶ平成21年~平成23年157頁(柴田義明)

③ 最高裁判所判例解説 民事篇 平成21年度(上)201頁(柴田義明)

④ ジュリスト平成21年度重要判例解説89頁(安永正昭)

【参照参考文献】

 下記文献を参照・参考して作成しました。

□安永正昭 講義物権・担保物権法第4版(2021年、有斐閣)483頁

 

近江幸治 民法講義Ⅲ担保物権(第3版)(2020年、成文堂)337頁

内田貴 民法Ⅲ(第4版)債権総論・担保物権(2020年、東京大学出版会)655頁

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