【注力分野】相続(相続調査、相続放棄)、遺産分割(協議、調停・審判)、債務整理、自己破産、個人再生、法律相談
大阪府寝屋川市にある相続と借金の問題に力を入れている法律事務所です。
受付時間 | 10:00~18:00 |
---|
休業日 | 土曜日、日曜日、祝日 |
---|
<抵当権の消滅原因>
1 弁済・時効等による被担保債権の消滅(附従性)
2 物権の消滅原因 混同、放棄
3 抵当権の目的物の消滅
4 抵当権特有の消滅原因
① 代価弁済(民法378条)
② 抵当権消滅請求(民法379条~)
③ 抵当権の時効消滅
<代価弁済&抵当権消滅請求>
<抵当権の消滅時効>
1 趣旨
(1)抵当権は、「債権又は所有権以外の財産権」であるから、「権利を行使できる時から20年間行使」しない場合、時効消滅する(民法166条2項)。
しかし、被担保債権が時効消滅していないにもかわらず、被担保債権を担保する目的で設定された抵当権について、債務者及び抵当権設定者(物上保証人)が時効消滅を主張することは信義則に反する。
そこで、このような場合、「抵当権だけ独立して消滅時効にかからない」として、時効消滅の主張を制限した。
(2)被担保債権が時効消滅すると、抵当権は、本条にかかわらず、消滅する(担保物権の付従性)。
2 抵当権の目的物件が債務者・抵当権設定者から第三者に譲渡された場合、第三取得者は、抵当権の時効消滅を主張できるか。
この場合は、信義則に反するという事情がないため、抵当権は、民法166条2項の原則どおり、被担保債権の消長とは独立して、消滅時効にかかる(大判昭和15年11月26日)。→ 民法396条不適用
反対説(安永正昭 講義物権・担保物権法(第3版)346頁(2019年、有斐閣))
3 その他
(1)被担保債権が免責許可決定を受ける場合には、民法396条は適用されず、債務者・抵当権設定者に対する関係においても、抵当権は民法167条2項(平成29年改正前)所定り20年の消滅時効にかかる(最判平成30年2月23日)。
1 趣旨
不動産所有権を時効取得した者は、対象不動産に抵当権の負担があったとしても、時効取得は原始取得であるから、その反射的効果として、時効取得者は、たとえ、抵当権につき悪意であっても、抵当権の負担のない所有権を取得する。
しかしながら、民法396条により、被担保債権の時効消滅と独立して抵当権の時効消滅を主張することができない債務者及び抵当権設定者が、上記法理により、抵当権の負担を免れることはできない。例えば、物上保証人所有に係る不動産を債務者が時効取得した場合にあっては、抵当権は時効消滅しない。
2 抵当不動産の第三取得者はどうか。
第三取得者は、民法397条は適用されず、民法396条が適用される(大判昭和15年8月12日)。
この判例が、現在でも維持されているか明確ではない(最判昭和43年12月24日)。
3 1,2より、本条は、承継取得によらない第三者が抵当不動産を時効取得することにより抵当権が消滅することを想定しているといえる(我妻・有泉コンメンタール民法総則・物権・債権(第6版)642頁(2019年、日本評論社))。
【参考・参照文献】
以下の文献を参考・参照して、このページを作成しました。
□ 鎌田薫・松岡久和・松尾弘編、新基本法コンメンタール物権(令和元年、日本評論社)
□ 安永正昭 講義物権・担保物権法(第4版)(2021年、有斐閣)386頁~
□ 近江孝治 民法講義Ⅲ担保物権(第3版)(2020年、成文堂)263頁