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〇 民法第3条
1項 私権の享有は、出生に始まる。
2項 外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。
1 権利能力
(1)意義
私権ついて権利・義務の帰属点となる一般的資格(文献⑤12頁)
(2)権利能力の主体
① 自然人
個々人の尊厳・平等 → 誰でも有する。
3条1項は、上記を前提として、権利能力の始期を定めたものである。
② 法人
③ 外国人
3条2項
2 胎児についての特則(出生擬制)
(1)出生擬制の必要性
権利能力の始期=出生 を貫徹することによる不都合
→ 出生擬制
(2)場面
① 損害賠償請求権に関する胎児の権利能力
民法721条 胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。
② 相続に関する胎児の権利能力
民法886条
1項 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2項 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。
※ 遺贈の受遺者に準用される(965条)。
「既に生まれたものとみなす」の意味
判例(大判昭和7年10月6日[阪神電鉄事件])
ⅰ 胎児に権利能力はない。
ⅱ 生きて生まれたことを停止条件として権利能力を取得する。
ⅲ その効力は、問題発生時(不法行為時)に遡及する。
③ 胎児の認知
民法783条1項 父は、胎内に在る子でも、認知することができる。この場合においては、母の承諾を得なければならない。
〇 民法3条の2(平成29年改正により新設)
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は無効とする。
1 意思能力を欠く法律行為は無効である。旧法は、この点については争いがなかったが規定を欠いていた。新法は規定を設けたが、2以下のとおり、旧法同様、解釈に委ねられた部分が多い。
2 意思能力の意義
次の2つの見解がある。
法律行為の意味を理解することができる精神能力(法律行為に即して考える)
一般的抽象的に事理弁識能力と考える。
3 解釈に委ねられた部分
(1)無効の主張権者
意思無能力者側からのみ主張できる相対的無効
(2)その他
【参考文献】
○ 潮見佳男「学びなおし・民法総則第2回 意思能力と行為能力制度」法学教室452号69頁
1 行為無能力制度
事理弁識能力を欠く者又は不十分な者を取引社会において保護するため、制限行為能力者とし、その者の行った一定の行為について取り消すことを認め、制限行為能力者に保護者を付け、その必要性に応じて、財産管理や身上監護(→家族法)を行わせる。
平成11年改正
本人の自己決定をできる限り尊重する趣旨
無能力制度 → 制限行為能力制度
禁治産者 → 被後見人
準禁治産者 → 被保佐人 浪費者は除外
被補助人(新設)
任意後見制度(新設)
〇 民法4条(成年)
年齢二十歳をもって、成年とする。
1 平成30年の法改正により、18歳から20歳に改められた。令和4年4月1日施行
〇 民法5条(未成年者の法律行為)
1項 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。
ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2項 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3項 第1項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。
目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
1 未成年者であることをだけをもって、本人の事理弁識能力を個別に問題とすることなく、未成年者が法定代理人の同意を得ないでした法律行為の取消しを認めた。
2 未成年者の財産の管理
① 代理型
法定代理人(親権者[民法824条]、後見人[民法850条1項])が、未成年者を代理して、法律行為をする。
② 同意型
法定代理人が未成年者に同意して、未成年者が法律行為をする。→ 法律行為は有効
3 1項ただし書
未成年者が不利益を受けるおそれがない行為であるため、取消しを認めない。
4 婚姻による成年擬制(民法753条)
婚姻した未成年者が、未成年のうちに離婚した場合、成年擬制の効果はうしなわれるか?
一度生じた成年擬制の効力は失われない(通説)。
〇 民法6条(未成年者の営業の許可)
1項 一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。
2項 前項の場合においては、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第四編(親族)に規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる。
〇 民法7条(後見開始の審判)
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
1 「精神上の障害」
身体上の障害を除く全ての精神障害を含み、痴呆、知的障害、精神障害、自閉症、脳の損傷・疾患による精神的障害も含まれる。
2 「事理を弁識する能力」
法律行為の結果の利益得失を判断する能力=意思能力と同義(諸説ある)
3 「常況」
常に、そのような状況であること。
2・3より、通常は。意思無能力の状態にあることを意味する。
4 請求権者
上記以外に、身寄りのいない判断能力の不十分な者を保護するために、「市町村長」に申立権が認められている(老人福祉法32条、知的障害者福祉法28条、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律51条の11の2)。
後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。
〇 民法9条(成年被後見人の法律行為)
成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。
ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
〇 民法10条(後見開始の審判の取消し)
第7条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人(未成年後見人及び成年後見人をいう。以下同じ。)、後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人をいう。以下同じ。)又は検察官の請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない。
〇 民法11条(保佐開始の審判)
精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。
ただし、第7条に規定する原因がある者については、この限りでない。
〇 民法12条(被保佐人及び保佐人)
保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人として、これに保佐人を付する。
〇 民法13条(保佐人の同意を要する行為等)
1項 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。
ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
一 元本を領収し、又は利用すること。
二 借財又は保証をすること。
三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
四 訴訟行為をすること。
五 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成15年法律第138号)第2条第1項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
七 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
九 第602条の定める期間を超える賃貸借をすること。
十 前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第17条第1項の審判を受けた被補助者をいう。以下同じ。)の法 定代理人としてすること。
2項 家庭裁判所は、第11条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。
ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
3項 保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
4項 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
〇 民法14条(保佐開始の審判等の取消し)
1項 第11条本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判を取り消さなければならない。
2項 家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第二項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。
〇 民法15条(補助開始の審判)
1項 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。
ただし、第7条又は第11条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
2項 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意を得なければならない。
3項 補助開始の審判は、第17条第1項の審判又は第876条の9第1項の審判とともにしなければならない。
〇 民法16条(被補助人及び補助人)
補助開始の審判を受けた者は、被補助人として、これに補助人を付する。
〇 民法17条(補助人の同意を要する旨の審判等)
1項 家庭裁判所は、第15条第1項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。
ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第13条第1項に規定する行為の一部に限る。
2項 本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3項 補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
4項 補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
〇 民法18条(補助開始の審判等の取消し)
1項 第15条第1項本文に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判を取り消さなければならない。
2項 家庭裁判所は、前項に規定する者の請求により、前条第一項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。
3項 前条第一項の審判及び第876条の9第1項の審判をすべて取り消す場合には、家庭裁判所は、補助開始の審判を取り消さなければならない。
〇 民法19条(審判相互の関係)
2項 前項の規定は、保佐開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被補助人であるとき、又は補助開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被保佐人であるときについて準用する。
〇 民法20条(制限行為能力者の相手方の催告権)
1項 制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。
2項 制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。
3項 特別の方式を要する行為については、前二項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。
4項 制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第十七条第一項の審判を受けた被補助人に対しては、第一項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。
〇 民法21条(制限行為能力者の詐術)
制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
1 制限行為能力者による詐術による取消権の否定
制限行為能力による契約の取消し → 取引の安全を害する。→ 制限行為能力者が、能力者であることを信じさせるため詐術を用いた場合にまで、取引の安全を犠牲にしてまで、制限行為能力者を保護すべき事情はない。
2 詐術(1)
① 21条適用
「能力者であることを信じさせるため」詐術
② 21条類推適用
「法定代理人の同意を得ている」と虚偽の事実を言い、相手方にその旨信じさせた場合
3 詐術(2)
① 積極的詐術
・ 戸籍謄本を偽造し、能力者であると虚偽の事実を言う。
(大判大5年12月6日、準禁治産者、詐術否定)
・ 金銭貸借のための公正証書作成の際、公証人の質問に対し能力者であると答えた・・・何らかの手段を用いたことはないので、詐術否定(大判大6年9月26日)
・ 独立の営業を営んでいると信じさせるために、商業帳簿その他の書類を示した場合(大審年月日不明、未成年者、詐術肯定)
② 制限行為能力者であることを黙秘
ⅰ 単なる黙秘(黙秘のみ) 詐術に当たらない。
ⅱ 黙秘 + 無能力者の他の言動等と相まって、
相手方を誤信させ、または誤信を強めた場合
詐術に当たる。
(最判昭和44年2月13日、準禁治産者、詐術否定)
成年後見 | 保 佐 | 補 助 | |
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本人 | 成年被後見人 | 被保佐人 | 被補助人 |
保護者 | 成年後見人 | 保佐人 | 補助人 |
監督者 | 成年後見監督人 | 保佐監督人 | 補助監督人 |
審判の要件 | 精神上の障害により 事理を弁識する能力を欠く 常況にある者 (7条) | 精神上の障害により 事理を弁識する能力が 著しく不十分な者 (11条) | 精神上の障害により 事理を弁識する能力が 不十分な者 (15条1項) |
本人による法律行為 | 原則 できない。 例外 日用品の購入その他 日常生活に関する行為 (9条) | 一定の法律行為について 保佐人の同意が必要 (13条1項)
| 家庭裁判所の定めた 法律行為について 補助人の同意が必要 (17条1項) |
【参考・参照文献】
このページは、下記文献を参考・参照して作成しました。
① 日本弁護士連合会編・実務解説改正債権法(第2版)(令和2年、弘文堂)3頁
② 第一東京弁護士会司法制度調査委員会編・新旧対照でわかる改正債権法の逐条解説3頁
③ 平野裕之 民法総則(2017年、日本評論社)192頁
④ 近江幸治 民法総則(第7版)(2020年、成文堂)
⑤ 潮見佳男 民法(全)第3版(2022年、有斐閣)12頁