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399条 ~ 411条
〇 民法399条(債権の目的)
債権は、金銭に見積もることができないものであっても、その目的とすることができる。
(例)寺院に土地を寄付し、祖先のために永代常念仏を唱えることを約する契約(我妻栄・債権総論23頁)
〇 民法400条(特定物の引渡しの場合の注意義務)(平成29年改正)
債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
旧400条(特定物の引渡しの場合の注意義務)
債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
1 特定物の引渡し債務を負う債務者の引渡しまでの目的物の保存義務を定める。
保管義務と引渡義務は別であり、保管義務を尽くしたからといって、引渡義務が免責されるわけではない。(文献122頁)
2 平成29年改正
(1)改正前の旧法は、善良な管理者の注意義務の内容及び程度を決定する基準を定めていなかった。新法は、これを明記した。
(2)契約その他の債権の発生原因
その他の・・・は、契約以外の原因(例えば、事務管理)により発生する債権を含む趣旨
(3)取引上の社会通念(取引通念)
単なる社会通念ではない。当事者間の契約内容と切り離された取引通念で決まるのではなく、契約の内容・契約の性質等契約に関する一切の事情を基に判断される。
3 経過措置
施行日前に債権が発生した場合における債務者の注意義務
→ 旧法が適用される(附則14条)
〇 民法401条(種類債権)
1項 債権の目的物を種類のみで指定した場合において、法律行為の性質又は当事者の意思によってその品質を定めることができないときは、債務者は、中等の品質を有する物を給付しなければならない。
2項 前項の場合において、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、以後、その物を債権の目的物とする。
1 特定の要件
(1)債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了した場合
① 取立債務
目的物を分離すること、+ 債権者への受領催告
② 持参債務
③ 送付債務
2 特定の効果
種類債権 → 特定物債権 ※
① 調達義務からの解放
債務者は、債権に対しその物のみを引き渡せば足り、滅失・損傷の場合も他の物を調達する義務を負わない。
② 保管義務
債務者は、善良な管理者の注意をもって、その物を保管する義務を負う(400条)。
③ 所有権の移転
別段の合意がない限り、その物の所有権は特定時に債務者(売主)から債権者(買主)に移転する。
※ 特定に給付危険の移転を認める考え方である(北居功 再確認・民法の基本①Ⅵ給付危険と対価危険 法学教室454号32頁)。
〇 民法402条(金銭債権)
1項 債権の目的物が金銭であるときは、債務者は、その選択に従い、各種の通貨で弁済をすることができる。
ただし、特定の種類の通貨の給付を債権の目的としたときは、この限りでない。
2項 債権の目的物である特定の種類の通貨が弁済期に強制適用の効力を失っているときは、債務者は、他の通貨で弁済をしなければならない。
3項 前二項の規定は、外国の通貨の給付を債権の目的とした場合について準用する。
○ 民法403条
外国の通貨で債権額を指定したときは、債務者は、履行地における為替相場により、日本の通貨で弁済をすることができる。
〇 民法404条(法定利率)(平成29年改正)
1項 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
2項 法定利率は、年3%とする。
3項 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を1期とし、1期毎に、次項の規定により変動するものとする。
4項(省略)
5項(省略)
旧404条(法定利率)
利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年5分とする。
1 平成29年改正法は、次の点において、旧法を改めた。
法定利率
① 旧法 固定制で、年5%
② 新法 3年を一つの期とする変動制で、まず年3%
2 適用される利率
(1)当事者間の合意
(2)(1)の合意がない場合
その利息が生じた最初の時点における法定利率で固定される。その後、法定利率が変動しても、当該債権に適用される利率は変動しない。
3 変動制が与える分野
遅延損害金(新419条1項)、悪意の受益者に対する利息請求(新704条)、損害賠償額算定における中間利息の控除
等
4 経過措置
施行日前に利息が生じた場合におけるその利息を生ずべき債権に係る法定利率→旧404条(附則15条1項)
5 商事法定利率(商法514条)は削除された。
〇 民法405条(債権の目的)
利息の支払が1年分以上延滞した場合において、債権者が催告をしても、債務者がその利息を支払わないときは、債権者は、これを元本に組み入れることができる。
〇 民法406条(選択債権における選択権の帰属)
債権の目的が数個の給付の中から選択によって定まるときは、その選択権は、債務者に帰属する。
〇 民法407条(選択権の行使)
1項 前条の選択権は、相手方に対する意思表示によって行使する。
2項 前項の意思表示は、相手方の承諾を得なければ、撤回することができない。
〇 民法408条(選択権の移転)
債権が弁済期にある場合において、相手方から相当の期間を定めて催告をしても、選択権を有する当事者がその期間内に選択をしないときは、その選択権は、相手方に移転する。
〇 民法409条(第三者の選択権)
1項 第三者が選択をすべき場合には、その選択は、債権者又は債務者に対する意思表示によってする。
2項 前項に規定する場合において、第三者が選択をすることができず、又は選択する意思を有しないときは、選択権は、債務者に移転する。
〇 民法410条(不能による選択債権の特定)(平成29年改正)
債権の目的である給付の中に不能のものがある場合において、その不能が選択権を有する者の過失によるものであるときは、債権は、その残存するものについて存在する。
旧410条(不能による選択債権の特定)
1項 債権の目的である給付の中に、初めから不能であるもの又は後に至って不能となったものがあるときは、債権は、その残存するものについて存在する。
2項 選択権を有しない当事者の過失によって給付が不能となったときは、前項の規定は、適用しない。
1 ①「初めから不能」又は「後に至って不能」
→②「不能」
平成29年改正前
原始的不能と後発的不能の区別 → ①
平成29年改正
原始的不能概念の放棄 → ②
2 選択権の行使
(1)平成29年改正前
選択権=債務者
給付完了までは、債務者が危険を負担
給付完了前、不能が発生した場合
→ ① 原則
給付は残存物に特定する(旧410条1項)
② 不能が選択権を有しない当事者の故意・過失による
場合(旧410条2項)
給付は残存物に特定せず、選択権は残存する。
→ 選択権者・相手方に故意・過失がない場合は①の原則により、給付は残存物の特定する。
(2)平成29年改正
選択権者の選択の余地をできる限り広く残すことが当事者の意思に合致する。この観点から、次のとおり改正した。
① 不能が、選択権を有する者の過失による場合
給付が残存物に特定する。
② ①以外の場合
給付が残存物に特定せず、選択権は存続する。
選択権者・相手方に故意・過失がない場合も含まれ、この場合、選択権者は不能の給付を選択することができる。
〇 民法411条(選択の効力)
選択は、債権の発生の時にさかのぼってその効力を生ずる。
ただし、第三者の権利を害することはできない。
【参考・参照文献】
このページは、下記文献を参考・参照して作成しました。
□ 第一東京弁護士会司法制度調査委員会編・新旧対照でわかる改正債権法の逐条解説(平成29年、新日本法規)264頁
□ 日本弁護士連合会編・実務解説改正債権法(第2版)(2020年、弘文堂)435頁
□ 平野裕之・債権総論(2017年・日本評論社)13頁
□ 伊藤滋夫編 新民法(債権関係)の要件事実Ⅰ(2017年、青林書院)121頁
□ 潮見佳男 民法(全)第3版(2022年、有斐閣)252頁