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〇 借地借家法31条(建物賃貸借の対抗力)
建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。
1 賃借権の登記による対抗力(民法605条)
賃借権=債権
→ 特約のない限り、賃借人は賃貸人に対し登記手続(不動産登記法3条8号、81条[登記事項]、60条[共同申請主義])をするよう請求することはできない。
通常、そのような特約は賃貸人・賃借人間がなされないので、賃借権の登記による対抗力の制度では、賃借人の保護という目的を達成することはできない。
2 特別法による対抗力
そこで、借家法、借地借家法により対抗力が認められた。
本条は、これを規定したものである。
〇 借地借家法32条(借賃増減請求権)
1項 建物の借賃が、
土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、
土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、
又は近傍同種の建物の借賃に比較して
不相当となったときは、
契約の条件にかかわらず、
当事者は、将来に向かって建物の借賃の増減を請求することができる。
ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
2項 建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。
ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
3項 建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。
ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年1割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。
1 賃料増減額請求権の意義
建物賃貸借契約は、長期に亘ることが予想され、そのため、契約締結時の賃料が現時点では高すぎる又は安すぎるという事態もあり得る。
そこで、賃貸人又は賃借人に賃料増減額請求権を認め、適正な賃料を設定できるシステムを設けた。
2 賃料増減額請求権の要件(本条1項)
建物の賃料が下記①~④の事情により不相当となった場合
① 土地・建物に対する租税その他の負担の増減
② 土地・建物の価格の上昇・低下その他の経済事情の変動
③ 近傍同種の建物の借賃との比較
④ その他の事情(法文には①②③しか挙げられていないが、これは例示列挙である。)
3 賃料増減額請求権の効果
(1)効力発時期
法文上は請求権とされているが、法的性質は形成権であるとされている。すなわち、
① 賃料増減額請求の意思表示が相手方に到達すれば、要件を満たす限り、以後、賃料は相当額において増減したものとなる(最判昭和32年9月3日)。
② 増減の範囲について当事者間に争いがある場合、裁判所によって確定される(最判昭和33年9月18日)。
(2)当事者間に協議が調わない場合の取扱い
① 増額請求の場合(本条2項)
□ 賃借人の対応
ⅰ 増額を正当とする裁判が確定するまで
相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。
「相当と認める額」の意義
従前の賃料であれば可である(原則←→あまりに低い場合は例外)である。
従前の賃料より低額は不可である(この場合は賃借人が減額請求権を行使すべき)。
ⅱ 裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるとき
不足額+年1割の割合による支払期後の利息を支払う。
② 減額請求の場合(本条3項)
□ 賃貸人の対応
ⅰ 減額を正当とする裁判が確定するまで
相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。
ⅱ 裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるとき
超過額+年1割の割合による受領の時からの利息を返還する。
賃借人が減額請求権を行使した後、賃貸人が従前の賃料額で請求してきた場合で、賃借人が従前の賃料を下回る賃料だけを支払った場合、契約の解除原因となることがあるので、注意が必要である。賃借人としては、その地位を保全するために、従前の賃料を支払っておくことが無難である。
4 手続
賃料増減額請求権の行使 → 協議 → 調停(民事調停法24条の2第1項)[調停前置主義]→訴訟
5 特約
① 不増減特約
有効(本条1項)
② 不減額特約
無効(定期建物賃貸借[借地借家法38条7項]を除く)
← 「契約の条件にかかわらず」(1項)
民事調停法
第二章 特則
第一節 宅地建物調停
第24条(宅地建物調停事件・管轄)
宅地又は建物の貸借その他の利用関係の紛争に関する調停事件は、紛争の目的である宅地若しくは建物の所在地を管轄する簡易裁判所又は当事者が合意で定めるその所在地を管轄する地方裁判所の管轄とする。
第24条の2(地代借賃増減請求事件の調停の前置)
1項 借地借家法(平成三年法律第九十号)第十一条の地代若しくは土地の借賃の額の増減の請求又は同法第三十二条の建物の借賃の額の増減の請求に関する事件について訴えを提起しようとする者は、まず調停の申立てをしなければならない。
2項 前項の事件について調停の申立てをすることなく訴えを提起した場合には、受訴裁判所は、その事件を調停に付さなければならない。ただし、受訴裁判所が事件を調停に付することを適当でないと認めるときは、この限りでない。
第24条の3(地代借賃増減調停事件について調停委員会が定める調停条項)
1項 前条第一項の請求に係る調停事件については、調停委員会は、当事者間に合意が成立する見込みがない場合又は成立した合意が相当でないと認める場合において、当事者間に調停委員会の定める調停条項に服する旨の書面による合意(当該調停事件に係る調停の申立ての後にされたものに限る。)があるときは、申立てにより、事件の解決のために適当な調停条項を定めることができる。
2項 前項の調停条項を調書に記載したときは、調停が成立したものとみなし、その記載は、裁判上の和解と同一の効力を有する。
【論点】公社住宅と借地借家法32条1項
1 問題の所在
(1)公共住宅の種類
① 公営住宅
公営住宅法
② 公社住宅
地方住宅供給公社法
③ 独立行政法人都市再生機構法
都市公団住宅(UR賃貸住宅)
2 最(一小)判令和6年6月24日
(1)結論
適用肯定説
(2)理由
① 公社住宅の使用関係は、私法上の賃貸借関係であり、法令に特別の定めがない限り、借地借家法の適用がある。
② 公社法24条は、借地借家法32条1項の適用を排除するものではない。
3 判例
□ 最判昭和55年5月30日
公団住宅の使用関係について、民法・借地借家法(旧借家法)の適用肯定
□ 最判昭和58年12月日日
公団住宅について家賃増額請求権(旧借家法7条)を肯定した。
□ 公営住宅についても同様 最判昭和59年12月13日
<参照参考文献>
◯ 鳥山泰志・2の評釈(法学教室)528号115頁
〇 借地借家法33条(造作買取請求権)
1項 建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。建物の賃貸人から買い受けた造作についても、同様とする。
2項 前項の規定は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了する場合における建物の転借人と賃貸人との間について準用する。
1 造作買取請求権
借家人の権利行使により造作について売買契約が成立するので、法的性質は、形成権である。
2 造作買取請求権を排除する特約は有効である(借地借家法37条参照)。
〇 借地借家法34条(建物賃貸借終了の場合における転借人の保護)
1項 建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。
2項 建物の賃貸人が前項の通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から6月を経過することによって終了する。
〇 借地借家法法35条(借地上の建物の賃借人の保護)
1項 借地権(AB間)の目的である土地の上の建物につき賃貸借がされている場合において、借地権の存続期間の満了によって建物の賃借人(C)が土地を明け渡すべきときは、建物の賃借人(C)が借地権の存続期間が満了することをその1年前までに知らなかった場合に限り、裁判所は、建物の賃借人(C)の請求により、建物の賃借人(C)がこれを知った日から1年を超えない範囲内において、土地の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。
2項 前項の規定により裁判所が期限の許与をしたときは、建物の賃貸借(BC間)は、その期限が到来することによつて終了する。
【解説】
A:借地契約の借地権設定者(土地賃貸人)
B:借地契約の借地権者(土地賃借人)
&建物賃貸借契約の賃貸人
C:建物賃貸借契約の賃借人
〇 借地借家法36条(居住用建物の賃貸借の承継)
1項 居住の用に供する建物の賃借人(B)が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者(C)があるときは、その同居者(C)は、建物の賃借人(B)の権利義務を承継する。
ただし、相続人なしに死亡したことを知った後1月以内に建物の賃貸人(A)に反対の意思を表示したときは、この限りでない。
2項 前項本文の場合においては、建物の賃貸借関係(AB間)に基づき生じた債権又は債務は、同項の規定により建物の賃借人の権利義務を承継した者(B=承継した場合)に帰属する。
1 趣旨
① 借家人が死亡し、相続人がいない場合で、かつ、②届出を欠き、そのために婚姻又は養子縁組が成立していないが、事実上の夫婦又は養親子の関係にある者が借家人と同居していた場合、当該同居人を保護するために、借家人の権利義務を承継させる制度である(本条1項本文、2項)。
当該同居人は、借家人の権利義務の承継を希望しない場合は、所定の要件を満たせば、権利義務を承継しない(本条1項ただし書)。
借家法7条の2の規定を承継するものである。
A:建物賃貸借契約の賃貸人
B:建物賃貸借契約の賃借人→死亡
C:所定のBの同居人
2 借家人に相続人がいる場合は、本条は適用されない。
借家人と同居していた事実上の夫婦又は養親子は、相続人が有する賃借権を援用して、居住を継続することができる(判例)。
〇 借地借家法37条(強行規定)
第31条、第34条及び第35条の規定に反する特約で建物の賃借人又は転借人に不利なものは、無効とする。
【参考・参照文献】
以下の文献を参考・参照して、このページを作成しました。