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〇 借地借家法3条(借地権の存続期間)
借地権の存続期間は、30年とする。
ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。
借地法2条(借地権の存続期間(一))
1項 借地権の存続期間は
石造、土造、煉瓦造又はこれに類する堅固の建物の所有を目的とするものについては60年
その他の建物の所有を目的とするものについては30年とす
但し建物がこの期間満了前朽廃したるときは借地権は之によりて消滅す
2項 契約を以て堅固の建物に付30年以上、その他の建物に付20年以上の存続期間を定めたるときは借地権は前項の規定に拘わらずその期間の満了に因りて消滅す
<借地権の存続期間>
第1 借地借家法における借地権の存続期間
1 存続期間を定めた場合
① 30年以上を定めた場合
その期間
賃貸借であっても、民法604条(平成29年改正法で、上限が20年→50年)は適用されない。
② 30年未満を定めた場合
期間の定めは無効(借地借家法9条)
→ 存続期間は30年
2 存続期間を定めなかった場合
30年
第2 借地法(旧法)における借地権の存続期間
(借地法2条)
堅固建物と非堅固建物と規律を区分
1 存続期間を定めた場合
① 30年以上(堅固)、20年以上(非堅固)を定めた場合
その期間
② 30年未満(堅固)、20年未満(非堅固)を定めた場合
期間の定めは無効(借地法11条)
→ 60年(堅固)、30年(非堅固)
2 存続期間を定めなかった場合
60年(堅固)、30年(非堅固)
<建物の朽廃と借地法>
1 借地法(旧法)は、当事者の契約により存続期間を定めかった場合、60年(堅固)又は30年(非堅固)としつつ、この期間内に、借地上の建物が朽廃した場合には、借地権は消滅すると規定していた(借地法2条1項)。
契約が更新された場合においても、更新後の期間内に、借地上の建物が朽廃した場合には、借地権は消滅する取扱いとしていた(借地法5条1項ただし書[合意更新]、6条1項[法定更新])。
2 建物の「朽廃」の意義
建物が自然の推移により腐朽頽廃し、その効用を失脚すること(大判昭和9年10月15日)。
地震・火災・風水害が原因によるもの、人為的な原因によるもの(取毀し)は、朽廃に当たらない。
3 留意事項
① 存続期間を定めて、これが有効である場合は、期間内に建物が朽廃しても、借地権は消滅しない。
② 朽廃以外の原因により建物が消滅した場合は、借地権は消滅しない。
〇 借地借家法4条(借地権の更新後の期間)
当事者が借地契約を更新する場合においては、その期間は、更新の日から10年(借地権の設定後の最初の更新にあっては、20年)とする。
ただし、当事者がこれより長い期間を定めときは、その期間とする。
<借地契約の更新後の期間>
1 借地借家法 借地権 更新の期間
1 更新後の存続期間を定めた場合
① 1回目の更新
ⅰ 20年超の期間を定めた場合
→ その期間(上限はない)
ⅱ 20年未満の期間を定めた場合
→ 期間の定めは無効(借地借家法9条)
→ 20年となる。
② 2回目以後の更新
ⅰ 10年超の期間を定めた場合
→ その期間(上限はない)
ⅱ 10年未満の期間を定めた場合
→ 期間の定めは無効(借地借家法9条)
→ 10年となる。
2 更新後の存続期間を定めなかった場合
① 1回目の更新 20年
② 2回目以後の更新 10年
第2 借地法 借地権 更新の期間
1 更新後の存続期間を定めた場合
(1)堅固建物 30年超の期間を定めた場合
非堅固建物 20年超の期間を定めた場合
→ その期間(上限はない)
(2)堅固建物 30年未満の期間を定めた場合
非堅固建物 20年未満の期間を定めた場合
→ 期間の定めは無効(借地法11条)
→ 2と同じ。
2 更新後の存続期間を定めなかった場合
堅固建物 30年
非堅固建物 20年
但し、建物の朽廃により借地権は消滅(借地法2条1項ただし書準用)
〇 借地借家法5条(借地契約の更新請求等)
1項 借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、前条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。
ただし、借地権設定者【A】が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。
2項 借地権の存続期間が満了した後、借地権者【B】が土地の使用を継続するときも、建物がある場合に限り、前項と同様とする。
3項 転借地権が設定されている場合においては、転借地権者【C】がする土地の使用の継続を借地権者がする土地の使用の継続とみなして、借地権者と借地権設定者との間について前項の規定を適用する。
1 合意更新
当事者の更新の合意による契約の更新
2 法定更新
借地権者を保護するため、一定の場合に、存続期間満了後、建物がある限りおいて、前契約と同一の条件で借地権を設定したものと「みなす」制度を導入した。
(1)借地権者の借地権設定者に対する更新請求による更新
(本条1項本文)
(2)借地権者の使用継続による更新(本条2項)
(1)(2)いずれも、
① 土地上に建物があることが要件である。
② 借地権設定者が更新を拒絶するためには、
a 借地権設定者→借地権者 遅滞なく異議
b 正当事由
(借地借家法6条)
3 建物の所有者は借地権者でなくてもよい。本条3項は、転借地権者が建物を所有している場合を規定する。
4 法定更新を排除する特約は無効である。
(借地借家法9条)。
〇 借地借家法6条(借地契約の更新拒絶の要件)
前条の異議は、
借地権設定者【A】及び借地権者【B】(転借地権者【C】を含む。以下この条において同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか、
借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに
借地権設定者【A】が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者【B】に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、
正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。
1 異議(借地借家法5条1項ただし書・2項)に正当事由があると認められれば、法定更新(借地借家法5条1項本文・2項)を妨げる効果を有する。
2 正当事由の要素
法文によると、
① 借地権設定者(賃貸人)、借地権者(賃借人)・転借地権者(転借人)が土地の使用を必要とする事情
② 借地に関する従前の経過
③ 土地の利用状況
④ 立退料(借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出)
上記考慮要素のうち①が基本的であり、最も重要な考慮要素となる。④は補完的な考慮要素であり、異議申立時において他に正当事由の内容を構成する事実が存在することを前提に、借地権設定者は、立退料を提供することによって、正当事由を補強することができる。
3 正当事由を具備すべき時期
原則 異議申出時(判例)
例外 立退料については異議申出後であっても可(最判平成6年10月25日)。
<建物の滅失と借地権>
1 建物の滅失の意義(潮見39頁)
① 建物が倒壊・損傷・流失・焼失等することにより、建物としての存在が失われたこと。
② 建物が腐朽することにより、建物としての社会的・経済的効用が失われたこと。
ⅰ 時の経過による腐朽
ⅱ 自然災害による滅失
ⅲ 第三者の行為による滅失
ⅳ 借地権者・転借地権者・借地権設定者による取壊し
2 滅失の時期による区別
(1)最初の存続期間中の滅失
借地借家法7条
(2)更新後の存続期間中の滅失
借地借家法8条
<最初の存続期間中の滅失>
1 建物再築の自由(潮見40頁)
最初の存続期間中、建物の滅失後、
① 借地権は消滅しない。
(例外)
ⅰ 借地権者・借地権設定者間の合意解約
ⅱ 借地権=地上権 借地権者による地上権放棄(民法268条1項本文)
② 借地権者は、借地権設定者の承諾を得ずとも、建物を再築する権利がある。
(留意点)
ⅰ 再築「借地条件の変更」に当たる場合
a 借地権設定者の承諾
b aの承諾に変わる裁判所の許可 借地借家法17条1項
ⅱ 再築「借地条件の増改築」に当たり、増改築禁止特約がある場合
a 借地権設定者の承諾
b aの承諾に変わる裁判所の許可 借地借家法17条2項
2 建物再築と存続期間の延長
(1)最初の存続期間の途中で建物が滅失し、その後、借地権者が期間内に建物を再築した場合、期間を超えて存続する可能性があり、そのため、期間の延長が問題となる。
(2)借地権設定者が、再築を承諾した場合
借地借家法7条1項
(3)借地権者の借地権設定者に対する再築の通知と
借地権設定者の承諾擬制
借地借家法7条2項本文
(4)借地権設定者が、再築を承諾しない場合
① 期間は延長されない。
② 最初の存続期間が満了した時点で、法定更新の問題が生じる。
この場合、正当事由の判断において、再築に関する事情を考慮することになる。
3 転借地権が設定されている場合における
建物の滅失と再築
借地借家法7条3項
〇 借地借家法7条(建物の再築による借地権の期間の延長)
1項 借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失(借地権者又は転借地権者による取壊しを含む。以下同じ。)があった場合において、借地権者【B】が残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造するにつき借地権設定者【A】の承諾がある場合に限り、借地権は、承諾があった日又は建物が築造された日のいずれか早い日から20年間存続する。
ただし、残存期間がこれより長いとき、又は当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間による。
2項 借地権者【B】が借地権設定者【A】に対し残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造する旨を通知した場合において、借地権設定者【A】がその通知を受けた後2月以内に異議を述べなかったときは、その建物を築造するにつき前項の借地権設定者【A】の承諾があったものとみなす。
ただし、契約の更新の後(同項の規定により借地権の存続期間が延長された場合にあっては、借地権の当初の存続期間が満了すべき日の後。次条及び第18条において同じ。)に通知があった場合においては、この限りでない。
3項 転借地権が設定されている場合においては、転借地権者【C】がする建物の築造を借地権者【B】がする建物の築造とみなして、借地権者【B】と借地権設定者【A】との間について第1項の規定を適用する。
1 借地権設定者が「借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を築造すること」を承諾した場合(本条1項本文)
(1)当事者が合意した期間 20年以下の場合
借地権設定者の承諾日or建物の築造日(いずれか早い日)
から20年間存続する。
(2)当事者が合意した期間 20年超
その期間による。
3 借地権設定者が「借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を築造すること」を承諾しない場合
期間の延長はない。
4 借地権設定者の承諾擬制 本条2項
5 転借地権者が建物を所有している場合 本条3項
原借地権の存続期間を超えて存続する建物を、転借地権者が再築した場合
① 再築=(みなす)=借地権者がする建物の築造
② 上記1~4にしたがって処理する。
<更新後の存続期間中の滅失>
潮見42頁
〇 借地借家法8条(借地契約の更新後の建物の滅失による解約等)
1項 契約の更新の後に建物の滅失があった場合においては、借地権者【B】は、地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることかできる。
2項 前項に規定する場合において、借地権者【B】が借地権設定者【A】の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、借地権設定者【A】は、地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをすることができる。
3項 前二項の場合においては、借地権は、地上権の放棄若しくは消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れがあった日から3月を経過することによって消滅する。
4項 第1項に規定する地上権の放棄又は土地の賃貸借の解約の申入れをする権利は、第2項に規定する地上権の消滅の請求又は土地の賃貸借の解約の申入れをする権利を制限する場合に限り、制限することができる。
5項 転借地権【C】が設定されている場合においては、転借地権者【C】がする建物の築造を借地権者【B】がする建物の築造とみなして、借地権者【B】と借地権設定者【A】との間について第2項の規定を準用する。
1 趣旨
本条は、契約更新後、建物が滅失した場合における借地権の取扱い等を定めたものである。
この場合、既に建物所有者による土地の利用関係に必要な安定性が一応確保された後の問題であり、借地関係を終了させても不合理ではない場合もあるという観点から、借地権者の利害と借地権設定者の利害とを調整する規定を設けた。
2 借地権者の解約権又は地上権の放棄
借地借家法8条1項、3項(借地権の消滅時期)
3 借地権設定者による解約権
(1)借地権者による建物再築
① 残存期間を超えて存続しない建物
認められる。但し、現実には難しい場合が多いと思われる。
② 残存期間を超えて存続する建物
ⅰ 原則 再築不可
ⅱ 例外
a 再築について借地権設定者の承諾がある場合
この場合、20年の期間延長が認められる(潮見42頁)。
b 承諾に代わる裁判所の許可(借地借家法18条)がある場合
(2)借地権設定者の解約権・地上権消滅請求権
借地権者が、(1)②ⅰの場合に、残存期間を超えて存続する建物を再築した場合
① 原則
借地権設定者の解約権・地上権消滅請求権
借地借家法8条2項、3項(借地権の消滅時期)
② 例外
借地権設定者の解約権・地上権消滅請求権 の制限
借地借家法8条4項
借地権者・借地権設定者間の公平の見地~、借地権者の解約権(同法8条1項)を奪うのは、借地権設定者が自ら解約権を放棄した場合に限られる。
4 転借地権者がいる場合 本条5項
〇 借地借家法9条(強行規定)
この節に規定に反する特約で借地権者に不利なものは、無効とする。
【参考・参照文献】
下記文献を参考、参照して作成しました。
□ 水本浩・遠藤浩編 基本法コンメンタール 新借地借家法 1993年 日本評論社 略称:コンメ①
□ 水本浩・遠藤浩編 基本法コンメンタール 借地借家法(第2版補正版) 2009年 日本評論社 略称:コンメ②
□ 田山輝明・澤野順彦・野澤正充編 新基本法コンメンタール 借地借家法 2014年 日本評論社 略称:コンメ
□ 近江幸治 民法講義ⅴ契約法(第4版)(2022年、成文堂)210頁
□ 中田裕康 契約法新版(2021年、有斐閣)391頁
□ 潮見佳男 新契約各論Ⅱ(2021年、信山社):潮見