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問題の所在
労働義務(労務給付義務)の履行不能となった場合において、使用者は労働者に対し賃金を支払わなければならないのか。
2 考え方
履行不能に関する危険負担の問題(民法536条)である。
① 労働者に帰責事由がある場合
(例)労働者の私病
使用者・労働者いずれにも帰責事由がない。
→ 債務者(労働者)主義(民法536条1項)により、
使用者は労働者に対し賃金を支払う必要はない。※
② 使用者に帰責事由がある場合
(例)使用者が労働者を解雇して労務を受領しなかったが、後に解雇が無効であることが裁判で確定した場合。
使用者が工場で使用する原材料を調達することができないため、工場の操業を停止して、このため、工場勤務労働者の労務を受領しなかった場合。
→ 債権者(使用者)主義(民法536条2項)により、
使用者は労働者に対し賃金を支払う必要がある。※
※ 平成29年民法改正により、危険負担の法律構成が、債権の発生・不発生(改正前)から履行拒絶権の存否(改正後)に変更されたが、民法536条に関する基本的な考え方は変わりない。
労働基準法26条
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、
使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。
1 休業手当制度の意義
使用者の帰責事由による休業の場合において労働者の生活保障を図る。
2 危険負担制度(民法536条2項)の意義
民法536条2項によると、使用者の帰責事由による休業の場合、使用者は労働者に対し賃金を支払わなければならない。
休業手当制度と危険負担制度は重複するところがあるが、両制度の関係は次のとおりと考えるが、判例(※)・通説である。
① 休業手当は、賃金請求権のうち平均賃金の6割に相当する部分を罰則の担保により確保する。
② 使用の帰責事由の広狭
労基法26条に規定されている使用者の帰責事由は、民法536条2項に規定されている使用者の帰責事由によりも広く解される。
具体的には、後者では帰責事由に当たらない、経営上の障害も、天災事変等の不可抗力に当たらない限り、帰責事由に当たる。
※ 最判昭和62年7月17日(ノース・ウエスト航空事件)
民法536条2項の使用者の帰責事由よりも広く、使用者側に起因する経営・管理上の障害を含むとした。
当該事案では、部分ストのため会社が命じた休業はそれに当たらないとした。
判例の考えたについて、判例は事由の外延は明示していない、また、企業経営者として不可抗力を主張し得ない全ての場合とまで徹底していない(調査官解説)。
【参考・参照文献】
このページは以下の文献を参考・参照して作成しました。
① 菅野和夫・労働法(第12版)(令和元年、弘文堂)424頁、456頁
② 水町勇一郎・詳解労働法(令和元年、東京大学出版会)588頁、625頁
③ 西田敏・野田進・和田肇編、新基本法コンメンタール労働基準法・労働契約法94頁(川口美貴(平成24年、日本評論社))