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<責任財産の保全>
1 意義
債務者の財産管理・処分の自由(原則)
強制執行の準備のため、債務者の財産管理・処分の自由を制限(例外)
「債務者の財産管理・処分の自由」と「責任財産の維持についての債権者の利益」との調整
2 民法典
第3編 債権
第1章 総則
第二節 債権の効力
第2款 債権者代位権(第423条~第423条の7)
第3款 詐害行為取消権
第1目 詐害行為取消権の要件(第424条~第424条の5)
第2目 詐害行為取消権の行使の方法等(第424条の6~第424条の9)
第3目 詐害行為取消権の行使の効果(第425条~第425条の4)
第4目 詐害行為取消権の期間の制限(第426条)
3 制度相互間
① 強制執行:債務名義要
民事保全:債務名義不要←迅速
② 債権者代位権・詐害行為取消権
ⅰ 保全手続類似の機能
ⅱ 債権回収の機能←判例法の展開
〇 民法423条(債権者代位権の要件)(平成29年改正)
1項 債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。
ただし、債務者の一身に専属する権利及び
差押えを禁じられた権利は、
この限りでない。
2項 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、被代位権利を行使することができない。
ただし、保存行為は、この限りでない。
3項 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、被代位権利を行使することができない。
旧423条
1項 債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。
ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。
2項 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。
ただし、保存行為は、この限りでない。
1 債権者(甲)→債務者(乙):被保全債権(権利)
債務者(乙)→第三債務者(丙):被代位債権(権利)
2 被保全債権の保全の必要性すなわち無資力要件は、変更がない。
3 被代位債権から除外(本条1項ただし書)
① 債務者の一身に専属する権利
② 差押えを禁じられた権利
旧法:①のみ(規定上は) → 新法:①+②
②は、一般債権者の共同担保である責任財産を構成しないため、責任財産保全のための制度である債権者代位権にはそぐわない。
4 被保全債権の履行期が到来前(本条2項)
旧法
① 裁判上の代位
② 保存行為
新法
・ 保存行為
(理由)裁判上の代位制度はほとんど利用されていなかった。
5 本条3項
被保全権利が強制執行により実現することができない場合、代位行使を許容しない。
旧法下での理解を明文化した。
〇 民法423条の2(代位行使の範囲)(平成29年改正により新設)
債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、被代位権利を行使することができる。
旧法下の判例法理を踏まえて、被代位権利が金銭債権である場合のみならず、目的が可分である場合一般に、被保全債権の額の限度という要件を明文化した。
〇 民法423条の3(債権者への支払又は引渡し)(平成29年改正により新設)
債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利が金銭の支払又は動産の引渡しを目的とするものであるときは、相手方(注:第三債務者)に対し、その支払又は引渡しを自己に対してすることを求めることができる。
この場合において、相手方(注:第三債務者)が債権者に対してその支払又は引渡しをしたときは、被代位権利は、これによって消滅する。
旧法下の判例法理を維持し、これを明文化した。
これにより、債権者は、「債務者に対する被保全債権」と「債務者に対し負う第三債務者から受領した金銭の返還義務」とを対当額にて相殺することにより、事実上の優先弁済を受けることができる。
但し、立法過程において、相殺権の濫用が議論されたところもあるので、その限界には留意する必要がある。
〇 民法423条の4(相手方の抗弁)(平成29年改正により新設)
債権者が被代位権利を行使したときは、相手方(注:第三債務者)は、債務者に対して主張することができる抗弁をもって、債権者に対抗することができる。
1 旧法下の判例法理を明文化した。
2 第三債務者は債権者に対し、同人の債権者に対する抗弁を主張できない旨含意するものである。
債権者が被代位権利を行使した場合であっても、債務者は、被代位権利について、自ら取立てその他の処分をすることを妨げられない。
この場合においては、相手方(注:第三債務者)も、被代位権利について、債務者に対して履行をすることを妨げられない。
1 前段
旧法下の判例法理は、債務者の処分権限の制限について根拠がなく、また、結論としても行き過ぎであるため、変更したものである。
2 後段
定説がない事項について、明文化した。
債権者は、被代位権利の行使に係る訴えを提起したときし、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない。
債権者代位訴訟における代位債権者の地位は、法定訴訟担当であり、判決の効果が被担当者である債務者に及ぶ。
→ 債務者の手続保障の観点から、訴訟告知を義務付けた。
これを欠く場合、訴えは却下されると解される。
その譲渡人(B)が第三者(C)に対して有する登記手続又は登録手続をすべきことを請求する権利を行使しないときは、
その権利を行使することができる。
この場合においては、前3条の規定を準用する。
1 旧法下の判例法理として認められていた、債権者代位権の転用について、一般的要件を規定することは見送られ、登記・登録請求権の代位行使についてのみ明文化した。
2 登記・登録請求権の代位行使以外の転用を認めない趣旨ではない。
【参考・参照文献】
このページは、下記文献を参考・参照して作成しました。
① 第一東京弁護士会司法制度調査委員会編・新旧対照でわかる改正債権法の逐条解説(平成29年、新日本法規)頁
② 日本弁護士連合会編・実務解説改正債権法(第2版)(2020年、弘文堂)頁
③ 内田貴 民法Ⅲ 債権総論・担保物権第4版(2020年、東京大学出版会)333頁