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◇◇◇ 前注 ◇◇◇
1 相殺の意義 民法505条1項本文
2 相殺の機能
① 決済を簡便に行う。
② 公平の要請
③ 担保的機能(への機能)
○ 民法505条(相殺の要件等)【平成29年】
1項 二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債権者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。
ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2項 前項の規定にかかわらず、当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる。
○ 旧民法505条(相殺の要件等)
1項 改正法と同じ。
2項 前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない。
1 相殺の要件=相殺適状(本条1項本文)
① 「二人互いに」債務を負担すること。
② 両債務が「同種の目的を有する」こと。
○ 金銭債務 と 金銭債務
× 金銭債務 と 物の引渡債務
③ 両債務が弁済期にあること
受働債権の期限の利益は放棄できる(136条2項)。
→ 自動債権の弁済期の到来が必要
④ 両債権が相殺を性質上許さないものではないこと。
(例)行為債務
1 相殺禁止・制限の意思表示
第三者の主観的保護要件
旧法:善意
新法:善意&無重過失
→ 善意but重過失の場合、第三者は保護されず、相殺禁止・制限を対抗されてしまう。
2 相殺禁止・制限の意思表示
第三者の主観的要件についての立証責任
相殺禁止・制限を主張する者が負う。
○ 民法506条(相殺の方法及び効力)
1項 相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。この場合において、その意思表示には、条件又は期限を付することができない。
2項 前項の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。
1 相殺の方法(本条1項)
2 相殺の効果(本条2項)
相殺適状の時点に遡及する。
① 意思表示のときに効果が発生するとすれば、両債権で遅延損害金の利率が異なる場合、不公平となり得る(消費者保護の見地)。
② 相殺適状が生ずれば、相殺の意思表示をしなくても当事者には相殺に対する期待が生じていることから、これを保護すべき。
○ 民法507条(履行地の異なる債務の相殺)
相殺は、双方の債務の履行地が異なるときであっても、することができる。この場合において、相殺をする当事者は、相手方に対し、これによって生じた損害を賠償しなければならない。
○ 民法508条(時効により消滅した債権を自働債権とする相殺)
時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。
○ 民法509条(不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)【平成29年改正法】
次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、その限りでない。
一 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務
二 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)。
○ 旧民法509条(不法行為により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)
債務が不法行為によって生じたときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
相殺禁止の趣旨
① 債務者(加害者)に債権者(被害者)に対し現実の給付をさせることにより、債権者(被害者)を保護する。
② 債務者の債権者に対する報復的不法行為を誘発することを防止
上記相殺禁止の趣旨が当てはまる場面について再考した結果、
新法は、旧法の相殺禁止の場面を、一方において縮小し、他方において拡大した。
縮小
① 受働債権が不法行為に基づく損害賠償債務のうち、「悪意による」以外を相殺禁止の対象から除外した。
② 債権者が債権を譲り受けた場合を相殺禁止の対象から除外した。
拡張
受働債権が人の生命・身体の侵害による損害賠償債務については、不法行為に基づくもののみならず、債務不履行に基づくもの(例 労働契約・安全配慮義務違反)を相殺禁止の対象に含めた。
旧法
受働債権の種類 | 相殺の可否 |
不法行為に基づく損害賠償債務 | 不可 |
債務不履行に基づく損害賠償債務(例 労働契約・安全配慮義務違反) | 可 |
新法
受働債権の種類 | 相殺の可否 |
① 不法行為に基づく損害賠償債務 ②以外 | 可 |
② 悪意による不法行為に基づく損害賠償債務 | 不可 |
③ 人の生命・身体の侵害による損害賠償債務 ②を除く | 不可 |
(注1)悪意の意味 単なる故意ではなく、加害の意思(破産法253条1項2号)
(注2)②③の場合でも、債権者が債務に係る債権を他人から譲り受けた場合は、相殺できる。
3 当事者双方に過失がある物損の交通事故について、相殺禁止の対象から除外された。
○ 民法510条(差押禁止債権を受働債権とする相殺の禁止)
債権が差押えを禁じたものであるときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。
○ 民法511条(差押えを受けた債権を受動債権とする相殺の禁止)【平成29年改正法】
1項 差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。
2項 前項の規定にかかわらず、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。
ただし、第三債務者が差押え後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。
○ 旧民法511条(支払の差止めを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止)
支払の差止めを受けた第三債務者は、その後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができない。
1 差押え前に取得した債権を自働債権とする相殺について、自働債権の弁済期が受働債権の弁済期よりも先に到来する場合に制限するか否かについて、争いがあった。制限説と無制限説のうち、判例は相殺への期待を重視する無制限説を採用していた。
改正法(1項)も、この無制限説を採用した。
2 差押え後に取得した債権を自働債権とする相殺について、改正法(2項)は、破産法67条1項の解釈との整合性を考慮して、債権取得原因が差押え前の原因に基づくものである場合は、相殺をもって差押債権者に対抗することができるとした。
但し、差押え後に、他人の債権を取得した場合は、相殺への期待は保護に値しないことから、対抗することができないとした。
自働債権の取得時期 | 相殺の可否 | |
差押え前 | 自働債権:先 | 可 |
差押え前 | 受働債権:先 | 可 ※ |
差押え後 | 不可 | |
差押え後 | 差押え前の原因 | 可(原則) |
※ 不可とするのが、制限説であった。
【参考・参照文献】
下記文献を参考・参照して作成しました。
①近江幸治 民法講義Ⅳ債権総論(第4版)(2020年、成文堂)298頁
②内田貴 民法Ⅲ 債権総論・担保物権第4版(2020年、東京大学出版会)301頁
③ 井上英治 法学研究双書2[新版]民法(全)の論証研究500選(1991)年、法曹同人)