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〇 平成29年改正法 経過措置
(弁済に関する経過措置)
改正附則 第二十五条 施行日前に債務が生じた場合におけるその債務の弁済については、次項に規定するもののほか、なお従前の例による。
〇 民法499条(弁済による代位の要件)(平成29年改正法)
債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する。
〇 民法500条(平成29年改正法)
第467条の規定(債権譲渡の対抗要件)は、前条の場合(弁済をするについて正当な利益を有する者が債権者に代位する場合を除く。)について準用する。
旧499条
1項 債務者のために弁済をした者は、その弁済と同時に債権者の承諾を得て、債権者に代位することができる。
2項 第467条の規定は、前項の場合について準用する。
旧500条
弁済をするについて正当な利益を有する者は、弁済によって当然に債権者に代位する。
弁済による代位
1 弁済による代位制度
(1)趣旨
求償権 弁済者 → 債務者
原債権&担保権を弁済者に移転させ、求償権を確保する。
→ 代位による権利行使は、求償権の範囲内に限られる旨明記した。新法501条2項
(2)要件
① 弁済又はこれに準ずる行為により債権者に満足を与えたこと。
② 弁済者が債務者に対し求償権を有すること。
2 任意代位
旧法:債権者の承諾が要件
新法:債権者の承諾は不要
(理由)
① 代位による権利移転は、債権者の承諾によって生じるものではない。
② 債権者が弁済を受領しながら代位を承諾しないことを理由に、代位による権利移転を認めない結果は不当である。
③ 代位を承諾しない債権者には、原則として第三者による弁済を拒否できる(新民法474条3項)ので、不都合はない。
3 対抗要件(債権者による債務者への通知又は債務者の承諾)
任意代位:必要、法定代位:不要
これは、旧法・新法同じ。
〇 民法501条(平成29年改正法)
1項 前2条の規定により債権者に代位した者は、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。
2項 前条の規定による権利の行使は、債権者に代位した者が自己の権利に基づいて債務者に求償をすることができる範囲内(保証人の一人が他の保証人に対して債権者に代位する場合には、自己の権利に基づいて当該他の保証人に対して求償をすることができる範囲内)に限り、することができる。
3項 第1項の場合には、前項の規定によるほか、次に掲げるところによる。
一 第三取得者(債務者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者をいう。以下この項において同じ。)は、保証人及び物上保証人に対して債権者に代位しない。
二 第三取得者の一人は、各財産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。
三 前号の規定は、物上保証人の一人が他の物上保証人に対して債権者に代位する場合について準用する。
四 保証人と物上保証人の間においては、その数に応じて、債権者に代位する。
ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。
五 第三取得者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、第三取得者とみなして第1号及び第2号の規定を適用し、物上保証人から担保の目的となっている財産を譲り受けた者は、物上保証人とみなして第1号、第3号及び前号の規定を適用する。
旧501条
前2条の規定により債権者に代位した者は、自己の権利に基づいて求償をすることができる範囲内において、債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる。
この場合においては、次の各号の定めるところに従わなければならない。
一 保証人は、あらかじめ先取特権、不動産質権又は抵当権の登記にその代位を付記しなければ、その先取特権、不動産質権又は抵当権の目的である不動産の第三取得者に対して債権者に代位することができない。
二 第三取得者は、保証人に対して債権者に代位しない。
三 第三取得者の一人は、各不動産の価格に応じて、他の第三取得者に対して債権者に代位する。
四 物上保証人の一人は、各財産の価格に応じて、他の物上保証人に対して債権者に代位する。
五 保証人と物上保証人との間においては、その数に応じて、債権者に代位する。
ただし、物上保証人が数人あるときは、保証人の負担部分を除いた残額について、各財産の価格に応じて、債権者に代位する。
六 前号の場合において、その財産が不動産であるときは、第1号の規定を準用する。
弁済による代位の効果
1 本条は、代位権者(弁済をするについて正当な利益を有する者)相互間の調整規定
① 2項
相互に求償権を有する共同保証人間(465条)
② 3項
弁済者は債務者に対し求償権を有するものの、例えば、物上保証人は他の物上保証人に対し求償権を有するものではない。
2 保証人 → 第三取得者 代位のため「あからじめ」(旧法501条1号6号)の付記登記
旧法下での解釈:弁済後第三者取得者の取得前と、制限的に解されていた(最判昭和41年11月18日)。新法では、削除された。これは、第三取得者が、付記登記がなくても担保権設定登記があれば、担保権が存在しないと信頼することはないと考えられるからである。
3 共同保証人間の代位が可能であることを明記した。
(文献③80頁)
新法501条2項
旧法では規定がなく争いがあった。保証債権に担保権が設定されている場合等に代位を認める意義があることから、求償権の範囲内で代位を認めた。
共同保証人間の代位割合について規定が設けられなかったが、代位割合の特約等がなければ、代位割合は頭数平等となると解される(山田誠一)。共同保証人間で求償権の範囲を定める負担部分について合意がある場合、代位割合についての合意を含むと解される(山田誠一)。
4 新法は、第三取得者を、債務者から担保目的たる財産を譲り受けた者と定義した上、第三取得者は、保証人に対するのみならず、物上保証人に対しても代位しないことを明記した。なお、新法は、物上保証人から担保目的たる財産を譲り受けた者は、物上保証人とみなす規定を設けた(501条3項5号後段)。
新法501条3項1号
5 担保目的物を譲り受けた者についての規定を設けた。
新法501条3項5号
6 第三取得者相互間(新法501条3項2号)
物上保証人相互間(新法501条3項3号)
保証人・物上保証人間(新法501条3項4号)
旧法と同じ。
〇 民法502条(一部弁済による代位)(平成29年改正法)
1項 債権の一部について代位弁済があったときは、代位者(C)は、債権者(A)の同意を得て、その弁済をした価格に応じて、債権者(A)とともにその権利を行使することができる。
2項 前項の場合であっても、債権者(A)は、単独でその権利を行使することができる。
3項 前2項の場合に債権者(A)が行使する権利は、その債権の担保の目的となっている財産の売却代金その他の当該権利の行使によって得られる金銭について、代位者(C)が行使する権利に優先する。
4項 第1項の場合において、債務の不履行による契約の解除は、債権者(A)のみがすることができる。
この場合においては、代位者(C)に対し、その弁済をした価格及びその利息を償還しなければならない。
旧502条
1項 債権の一部について代位弁済があったときは、代位者(C)は、その弁済をした価格に応じて、債権者(A)とともにその権利を行使することができる。
2項 前項の場合において、債務の不履行による契約の解除は、債権者(A)のみがすることができる。この場合においては、代位者(C)に対し、その弁済をした価格及びその利息を償還しなければならない。
改正法によると、一部弁済による代位の場合において、債権者(A)と一部弁済・代位者(C)との関係は次のとおりである。
1項 債権者(A)保護
→ 債務者(B)に対する権利行使には、債権者(A)
の同意必要
2項 債権者(A)が単独で権利行使可
3項 債権者(A)の権利行使
> 一部弁済・代位者(C)の権利行使
旧法下での判例(最判昭和60年5月23日、最判昭和62年4月23日)を踏まえたものである。
4項 債務不履行による契約解除権
債権者(A)のみが有する。
〇 民法503条(債権者による債権証書の交付等)
1項 代位弁済によって全部の弁済を受けた債権者は、債権に関する証書及び自己の占有する担保物を代位者に交付しなければならない。
2項 債権の一部について代位弁済があった場合には、債権者は、債権に関する証書にその代位を記入し、かつ、自己の占有する担保物の保存を代位者に監督させなければならない。
旧504条
第500条の規定により代位をすることができる者がある場合において、債権者が故意又は過失によってその担保を喪失し、又は減少させたときは、その代位をすることができる者は、その喪失又は減少によって償還を受けることができなくなった限度において、その責任を免れる。
1 担保保存義務
(例)A→B 1000万円貸付
① B所有の甲物件(時価500万円)抵当権設定
② C(物上保証人)所有の乙物件(時価500万円)
抵当権設定
A→B 500万円貸付(追加融資)
①の抵当権解除
甲物件に新規融資を被担保債権として抵当権設定
A→C 1000万円請求
Cは、弁済による代位により甲物件の抵当権が実行できない。1000万円-500万円(甲物件の時価)=500万円に、責任の限度を減少することを主張できる(本条1項)。
2 担保保存義務の免除
改正前より、A(銀行)は、Bに対する追加融資の必要性等を考慮して、予め、Cより、担保保存義務の免除の特約を取り付ける実態があった。
この点、最判平成7年6月23日は、かかる特約を原則として有効とし、例外的に、信義則、権利濫用に当たる場合には特約の主張を許されないものした。
平成29年改正法は、合理的な理由がある場合は本条1項を適用しないものとした(本条2項)。
担保保存義務免除特約があっても、担保喪失が合理的理由がない場合は、免除は認められない。
【参考・参照文献】
このページは、下記文献を参考・参照して作成しました。
① 第一東京弁護士会司法制度調査委員会編・新旧対照でわかる改正債権法の逐条解説(平成29年、新日本法規)197頁
② 日本弁護士連合会編・実務解説改正債権法(第2版)(2020年、弘文堂)頁
③ 丸山絵美子 ケースで考える債権法改正第22回弁済による代位 法学教室484号77頁