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<解雇の制限と手続(予告等)>
1 解雇が制限される場合
(1)一定期間中の解雇の禁止 労基法19条
(2)一定の事由による解雇の禁止(労働関係法規による制限)(文献②960頁)
① 差別禁止事由を理由とする解雇等の禁止
ⅰ 国籍・信条・社会的身分を理由とする差別的取扱い
労基法3条
ⅱ 組合員であること等を理由とする不利益取扱い
労組法7条
ⅲ 性別を理由とする差別的取扱い
雇用機会均等法6条
ⅳ 女子労働者の婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱い 雇用期間均等法9条
ⅴ 通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱い 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律9条
ⅵ その他
② 労働関係法規違反の申告等を理由とする解雇等の禁止
ⅰ 労働基準監督官等に法違反を申告したことを理由とする不利益取扱い 労基法104条など
ⅱ 公益通報者保護法3条
ⅲ 労働者派遣法49条の3第2項
ⅳ その他
③ 法律上の権利行使を理由とする解雇等の禁止
ⅰ 育児介護休業法上の権利行使を理由とする不利益取扱い
ⅱ その他
〇 労働基準法19条(解雇制限)
1項 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間
並びに
産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。
ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合
又は
天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
2項 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。
<業務災害労働者・産前産後休業者に対する解雇制限>
1 条文の趣旨
労働者が労働能力を喪失している期間及び回復に一般的に必要とされる期間に解雇できるとすると、たとえ、解雇理由がある場合であっても、この期間は再就職が困難であることを考えると、労働者に酷である。
また、労働者に安心して業務上の負傷・疾病について療養を受けさせ、産前・産後休業させる必要がある。
このため、上記期間における解雇を制限した。
2 業務上負傷・疾病労働者に対する解雇制限
(1)業務外の負傷・疾病(私傷病)のため休業している労働者には適用されない。
(2)「療養」とは、治癒(症状固定)の概念を前提とするから、症状固定後は、本条は適用れさないと解されている。
(3)全部休業のみならず、一部(部分的)休業も含まれると解されている。したがって、例えば1週間のうち何日か休業せざるを得ない場合も対象とされる。
(4)例外
① 使用者が労基法81条の打切補償を支払う場合
・ 労災保険給付により療養している労働者に対する打切補償支払いの場合
・ 労働者災害補償保険法19条の場合(※)も、同じである(最高裁第二小法廷判決平成27年6月8日判決(学校法人専修大学事件))。
※ 労働者が療養開始後3年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合及び同日後において傷病補償年金を受けることとなった場合、労基法19条1項の適用について、使用者は労基法81条の打切補償を支払ったものとみなす(労働者災害補償保険法19条)。
② 「天災事変その他やむを得ない事由」(あ)のために「事業の継続が不可能」(い)となった場合
・ (あ)→(い)の関係が必要
・ 行政官庁(労働基準監督署長)の認定が必要
3 産前産後休業者に対する解雇制限
例外
「天災事変その他やむを得ない事由」(あ)のために「事業の継続が不可能」(い)となった場合
・ (あ)→(い)の関係が必要
・ 行政官庁(労働基準監督署長)の認定が必要
4 解雇制限期間中における解雇予告
療養期間中なされた治癒後30日経過をもって発効する解雇が許されるかという問題である。
裁判例は分かれる。学説の多数説及び行政解釈はこれを肯定する。
(理由)
① 労基法上、「解雇」と「解雇の予告」とは明確に区別されている。
② 労基法は、休業期間終了時点での解雇予告を予想し、その効果発生を解雇予告義務の規定(労基法20条)に即して30日先にさせた趣旨(文献①)。
〇 労働基準法20条(解雇の予告)
1項 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。
但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合
又は
労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
2項 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
3項 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。
1 解雇予告期間・予告手当の原則(本条1項本文)
使用者が労働者を解雇する場合
2週間の予告期間(民法627条1項)
→ 労働者の生活上の打撃(経済的打撃)を和らげるため、下記のとおり修正
予告期間を30日に延長 or 平均賃金の30日分の予告手当の支払
2 解雇予告義務の除外事由(本条1項ただし書)
(1)「下記①又は②」+行政官庁(労働基準監督署長)の除外認定
① 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合
使用者の故意・重過失によらない火災、震災
② 労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合
通常の解雇事由としての労働者の非違行為よりも悪質性が高く、当該労働者を継続して雇用することが企業経営に支障をもたらす場合(水町)
(2)重なる問題である、懲戒解雇の有効性、退職金の不支給・減額は、それぞれの法理に照らして個別に判断する。
(3)行政官庁による除外事由の認定を得ずにした即時解雇であっても、客観的に除外事由が存在する場合には、解雇・解雇予告の効力を左右しない。
(文献②952頁)
1 退職時の証明(本条1項)
① 労働者は、再就職する際、それまでの勤務状況等について証明を必要とする場合がある。
② 労働者の請求
③ 使用者は労働者に対し、1項所定事項について、証明書を遅滞なく交付しなければならない。
2 退職時前における解雇理由証明書の交付請求(本条2項)
平成15年(2003年)労基法改正
① 本文
(趣旨)
ⅰ 解雇が恣意的になされることを防止
ⅱ 労働者が解雇を受け入れるか争うかを迅速に判断できるようにすること請求時期
(請求時期)
解雇予告日~退職日
② ただし書
この場合は、退職証明書(本条1項)を交付することで足りる。
③ 記載内容
解雇理由を具体的に記載する必要がある。
就業規則の当該条項の内容 + 同条項に該当する事実
④ 罰則
使用者が解雇理由証明書を交付しなかった場合
労基法120条1号
3 ブラックリストの禁止(本条4項)
使用者が、予め第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、本条項所定事項を記載することを禁止した。
【参考・参照文献】
下記文献を参考・参照して作成しました。
①菅野和夫・労働法第11版補正版737頁
②水町勇一郎・詳解労働法(第2版)(2021年、東京大学出版会)
③土田道夫 労働法概説(第4版)(2019年、弘文堂)259頁