【注力分野】相続(相続調査、相続放棄)、遺産分割(協議、調停・審判)、債務整理、自己破産、個人再生、法律相談
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【相続法の体系】
民法第5編
第1章 総則(第882条―第885条)
第2章 相続人(第886条―第895条)
第3章 相続の効力
第1節 総則(第896条―第899条の2)
第2節 相続分(第900条―第905条)
第3節 遺産の分割(第906条―第914条)
第4章 相続の承認及び放棄
第1節 総則(第915条―第919条)
第2節 相続の承認
第1款 単純承認(第920条・第921条)
第2款 限定承認(第922条―第937条)
第3節 相続の放棄(第938条―第940条)
第5章 財産分離(第941条―第950条)
第6章 相続人の不存在(第951条―第959条)
第7章 遺言
第1節 総則(第960条―第966条)
第2節 遺言の方式
第1款 普通の方式(第967条―第975条)
第2款 特別の方式(第976条―第984条)
第3節 遺言の効力(第985条―第1003条)
第4節 遺言の執行(第1004条―第1021条)
第5節 遺言の撤回及び取消し(第1022条―第1027条)
第8章 配偶者の居住の権利
第1節 配偶者居住権(第1028条―第1036条)
第2節 配偶者短期居住権(第1037条―第1041条)
第9章 遺留分(第1042条―第1049条)
第10章 特別の寄与(第1050条)
相続開始原因
① 被相続人の死亡
② 被相続人の失踪宣告(民法30条、31条)
③ 認定死亡(戸籍法89条)
相続は、被相続人の住所において開始する。
相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。
相続開始の時から20年を経過したときも、同様とする。
<相続回復請求権の法的性質>
(潮見694頁)
□ 判例(最大判昭和53年12月20日)・通説(潮見697頁)
① 個別的請求権説(集合権利説)
相続回復請求権は、相続人が有する個別の物権的請求権&対人的権利の集合体を指すものに過ぎず、相続回復請求権という包括的請求権があるわけではない。
② 相続回復請求権の意義
<前提>表見相続人が外見上相続により相続財産を取得したような事実状態が生じた後、相当期間経過後、この事実状態を覆滅して真生相続に権利を回復させる。→当事者・第三者の権利義務関係に混乱を生じさせる。
<目的>相続権の帰属及びこれに伴う法律関係を早期かつ終局的に確定させさる。
<手段>相続回復請求権の権利の行使期間を制限する。→表見相続人を保護する。
③ 相続回復請求権の適用場面
ⅰ 個別財産についての本権(所有権原)が相続人にあることが、884条の規律が適用されるための前提となる。
③ 相続回復請求権の適用場面
(step1)
真正相続人 → 表見相続人 相続を原因とする権原に基づく個々の実体法上の権利(例:返還請求権、妨害排除請求権)を主張
(step2)
表見相続人 → 真正相続人 真正相続人の権利主張が一定期間経過後にされたことを理由として、個々の実体法上の権利の消滅
☆ 真正相続人の権利を制約してまで、法律関係の早期安定を図る必要がある場合に限られる。
→ 表見相続人 形式的に表見相続人に該当すること + 要保護性
【論点】相続回復請求権の消滅時効完成前における表見相続人による時効取得の可否最高裁
◯ 最(三小)判令和6年3月19日
(事案)
2001年4月19日 被相続人 遺産を養子X、甥Y1、
甥Y2に均等に分与する旨の自筆証書遺言(本件遺言)を作成
2004年2月 被相続人死亡
2004年2月~3月 X(本件遺言につき善意・無過失)が被相続人の遺産である不動産について所有権移転登記を具備、所有の意思をもって同不動産について占有を開始する。その後、時効期間が完成した。
2018年8月 同年になり遺言の存在が明らかになり、検認手続が行われた。
(判旨)
論点について肯定する。
(理由)
① 相続回復請求権の消滅時効と所有権の取得時効は、要件・効果を異にする別個の制度である。特別法と一般法の関係にない。
② 論点について否定的な規定は存在しない。
③ 時効取得の要件を満たしたにもかかわらず、真正相続人の有する相続回復請求権の消滅時効が完成していないことより、時効取得が妨げられると解することは、相続権の帰属及びこれに伴う法律関係を早期かつ終局的に確定させるという相続回復請求権の消滅時効の制度の趣旨に整合しない。
【文献】法学教室526号105頁(解説者 加藤雅之)
1 本条の趣旨
本条本文は、相続開始後、遺産分割までの間に生じた相続財産に関する費用について相続財産の負担である旨を規定したものである。
また、本条ただし書は、相続財産について費用を要する状態になった原因が相続人の過失に基づく場合に、全相続人の負担となる相続財産の負担とすることは公平に反するため、本条ただし書は本条本文の原則の例外として、過失ある相続人の負担としたものである。
2 相続財産に関する費用の例
相続財産である不動産の固定資産税、電気・ガス料金、上下水道料金、相続財産である建物の修繕費
葬儀費用については、これを「費用」に含める見解もあるが、「費用」に含めず喪主の負担とする見解が有力である。
3 「費用」に含まれる場合、相続債務に準じて、費用の清算を行うことになる。具体的には、① 遺産分割にあたり考慮する方法と、② 遺産分割では考慮しないで(相続人全員の同意が得られない場合)費用支出者の他の共同相続人に対する費用償還請求の方法が考えられる。
<数次相続、再転相続>
1 再転相続(狭義)文献③14頁、66頁、文献④71頁
① A → 相続(第1次)相続開始 → B
② Bが、Aの相続について、承認・放棄の選択権を行使しないで、死亡した。(単純承認は除く)
③ B → 相続(第2次)相続開始 → C(再転相続人)
文献④【CASE56】
2 再転相続(広義)文献③15頁、70頁、文献④71頁
① A → 相続(第1次)相続開始 → B
② Bが、Aの相続について、単純承認したが、遺産分割協議が終了しないうちに死亡した。
③ B → 相続(第2次)相続開始 → C(再転相続人)
文献④【CASE57】
3 数次相続 文献③15頁、118頁
不動産所有権の登記名義人(A)の死亡により相続が開始したが、当該相続による所有権移転登記が未了である間に、その相続人(B)が死亡し、第2次、第3次相続が順次開始した場合
5 再転相続(狭義)についての論点
【論点1】
「第1相続における承認・放棄の選択権」と「第2相続における承認・放棄の選択権」との関係
【論点2】
第1相続における熟慮期間の起算点
5 代襲相続と再転相続との違い
代襲相続:Cは、「Bの地位に代わって」Aを相続する。
再転相続:Cは、「Aの相続について、相続を承認するか否か」の選択権を含めて、Bの地位を承継する。
6【論点1】「第1次相続における承認・放棄の選択権」と「第2次相続における承認・放棄の選択権」との関係 文献③67頁
(1)A→[第1次相続]→B→[第2次相続]→C
Cが第2次相続について放棄した後、第1次相続について、承認・放棄の選択権を行使することができるか。
判例(最判昭和63年6月21日)通説
(結論)不可
(理由)
① CはBの相続を放棄した。→Bの権利義務を承継しない。※
② ①より、Bが有していたAの相続について承認又は放棄の選択権(地位)を失う。
※ 民法939条により、Cは、第2次相続の放棄により、初めから、Bの相続人でないことになる。
(2)A→[第1次相続]→B→[第2次相続]→C
Cが第2次相続を承認した場合
第1次相続について、熟慮期間内に、承認又は放棄の選択権を行使できる。
(3)A→[第1次相続]→B→[第2次相続]→C
Cが第1次相続を放棄した後、第2次相続も放棄した場合、
第1次相続の放棄の効力が無効となるか。
判例(最判昭和63年6月21日)通説
(結論)無効とはならない。
(理由)
① 「第1次相続についての承認又は放棄の選択」は「第2次相続についての承認又は放棄の選択」に影響しない。
② 第1次相続の放棄は、Cの再転相続人たる地位に基づいてしたものである。
③ 後に第2次相続の放棄をした場合、第1次相続の放棄の効力が、さかのぼって無効になることはないものと解するのが相当である。
【参考・参照文献】
このページは、下記文献を参考・参照して作成しました。
□ 島津一郎・松川正毅編 基本法コンメンタール相続(第5編)(2007年、日本評論社)
□ 松岡久和・中田邦博編 新・コンメンタール民法(家族法)(2021年、日本評論社)286頁安達敏男・吉川樹士 □ 代襲相続・再転相続・数次相続の法律と実務(2022年、日本加除出版)
□ 潮見佳男 詳解相続法第2版(2022年、弘文堂)頁(略称:潮見)