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587条~592条
改正法は、施行日以後に締結された消費貸借契約及びこれに付随する特約について適用される。施行日前に締結された消費貸借契約及びこれに付随する特約については、なお従前の例による(改正前の法が適用される)。※ 附則34条1項
<序>
1 消費貸借の意義
(1)587条
要物契約、片務契約
利息付き:有償契約、無利息:無償契約
(2)書面でする消費貸借(587条の2第1項)
諾成契約、要式契約、片務契約
利息付き:有償契約、無利息:無償契約
2 民法典の貸借契約
(1)目的物の使用価値を借主に利用させる契約
借主は借りた物自体を貸主に返還する。
① 有償 賃貸借
② 無償 使用貸借
(2)目的物の交換価値を借主に利用させる契約
借主は、目的物を消費でき、目的物と同種・同等・同量の別物を返還する。
○ 民法587条(消費貸借)
消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還することを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
○ 民法587条の2(書面でする消費貸借等)(平成29年改正により新設)
1項 前条の規定にかかわらず、書面でする消費貸借は、当事者の一方(貸主)が金銭その他の物を引き渡すことを約し、相手方(借主)がその受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還することを約することによって、その効力を生ずる。
2項 書面でする消費貸借の借主は、貸主から金銭その他の物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。
この場合において、貸主は、その契約の解除によって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。
3項 書面でする消費貸借は、借主が貸主が金銭その他の物を受け取る前に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときは、その効力を失う。
4項 消費貸借がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その消費貸借は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。
1 平成29改正法は、消費貸借について、使用貸借(民法593条)及び寄託契約(民法657条)と異なり要物契約性を維持しながらも(新587条)、実務での必要性を考慮して、書面よる場合は諾成契約を認め、諾成的消費貸借に関する規定を新設した。
要物契約 → 合意だけでは契約は成立せず、貸主に契約を成立させるか選択権を与えた。
2 要書面性(1項)
諾成的消費貸借が安易に行われることによる弊害を防止
→ 成立には書面を要する(要書面性)。
3 借主の解除権及び貸主の損害賠償請求権(2項)
契約成立後、目的物(お金)が必要なくなった借主を解放する必要
→ 諾成的消費貸借の拘束力を弱くする。
→ 目的物(お金)の授受が当事者間でなされる前であれば、借主は契約を解除できる。
但し、貸主の借主に対する損害賠償請求権もあわせて規定し、目的物調達等を要した貸主を保護する。
4 破産手続開始決定による効力喪失(3項)
(1)旧589条と同趣旨の規定
(2)民事再生手続開始決定の場合は民事再生法49条の解釈、会社更生手続開始決定の場合は会社更生法61条の解釈の問題である。
5 電磁的記録による契約成立(4項)
保証契約に関する要書面性及び電磁的記録による保証契約の成立(新446条)と同じ趣旨である。
6 本条の新設により、消費貸借の予約という概念は必要性を喪失したので、旧589条は削除された。
○ 民法589条(消費貸借の予約と破産手続の開始)(平成29年改正により実質的に削除)
消費貸借の予約は、その後に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときは、その効力を失う。
〇 民法588条(準消費貸借)(平成29年改正)
金銭その他の物を給付する義務を負う者がある場合において、当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借は、これによって成立したものとみなす。
旧588条(準消費貸借)
消費貸借によらないで金銭その他の物を給付する義務を負う者がある場合において、当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借は、これによって成立したものとみなす。
平成29年改正前、判例は、消費貸借契約に基づく債務を旧債務とする準消費貸借契約を認めていた。改正法は、これを明文化するため、旧法の「消費貸借によらないで」の文言を削除した。
〇 民法589条(利息)(平成29年改正により新設)
1項 貸主は、特約がなければ、借主に対して利息を請求することができない。
2項 前項の特約があるときは、貸主、借主が金銭その他の物を受け取った日以後の利息を請求することができる。
1 改正前の法
① 消費貸借 無利息を原則とする(587条)。
② 利息発生には合意を必要とする(解釈)。
③ 利息発生日は、目的物を受領した日である(解釈)。
← 利息=元本使用の対価(最判昭和33年6月6日)
④ ②③は異論がなかったが、明文規定を欠いていた。
2 改正法
利息付き消費貸借が一般である(特に目的物が金銭である場合)。→1②③を内容とする規定を新設した。
2項は強行規定であると解される。
→ 利息発生日を、目的物受領日より前の日である場合は、その部分は無効であり、受領日より発生すると解される。
〇 民法590条(貸主の引渡義務等)(平成29年改正)
1項 第551条(贈与者の引渡義務等)の規定は、前条第1項の特約のない消費貸借について準用する。
2項 前条第1項の特約の有無にかかわらず、貸主から引き渡された物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないものであるときは、借主は、その物の価格を返還することができる。
旧590条(貸主の担保責任)
1項 利息付きの消費貸借において、物に隠れた瑕疵があったときは、貸主は、瑕疵がない物をもってこれを代えなければならない。
この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。
2項 無利息の消費貸借においては、借主は、瑕疵がある物の価格を返還することができる。
この場合において、貸主がその瑕疵を知りながら借主に告げなかったときは、前項の規定を準用する。
1 旧590条1項の削除
旧590条1項:利息付き消費貸借において物に隠れた瑕疵があった場合における担保責任
BUT
① 売主の追完義務:代替物の給付義務、損害賠償義務
(新562条、564条)
② ①は有償契約である消費貸借に準用(新559条)
上記準用により処理できるため、旧590条1項は削除
2 無利息消費貸借における貸主の担保責任
贈与者の引渡義務(新551条)を準用
3 新590条2項
消費貸借において、引き渡された物に瑕疵=契約内容不適合がある場合、目的物と同程度の瑕疵=契約内容不適合がある物を調達して返還することは困難であるのが通常である。
→ この理は、利息の有無にかかわらない。
〇 民法591条(返還の時期)(平成29年改正)
1項 当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
2項 借主は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還をすることができる。
3項 当事者が返還の時期を定めた場合において、貸主は、借主がその時期の前に返還をしたことによって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。
旧591条(返還の時期)
1項 当事者が返還の時期を定めなかったときは、貸主は、相当の期間を定めて返還の催告をすることができる。
2項 借主は、いつでも返還をすることができる。
1 改正前の法は、返還時期の定めがある消費貸借の借主が期限前に返還できるかについて、法文上明らかでなかったが、期限前に返還できるが、民法136条2項が適用され、期限前返還により貸主に損害が生じた場合、借主は貸主に対しその損害を賠償しなければならないと解釈されていた。
改正法は、本条2項において「返還の時期の定めの有無にかかわらず」の文言を挿入して、期限前返還ができることを明文化した。
2 借主は貸主に対し期限前返還により生じた損害を賠償しなければならないとの解釈を、本条3項で明文化した。
貸主は「貸主が現実に被った損害」及び「借主の期限前弁済と貸主の被った損害との因果関係」を立証する責任を負う。
〇 民法592条(価格の賠償)
借主が貸主から受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還することができなくなったときは、その時における物の価格を償還しなければならない。
ただし、第402条第2項に規定する場合は、この限りでない。
【参考・参照文献】
このページは、下記文献を参考・参照して作成しました。
① 第一東京弁護士会司法制度調査委員会編・新旧対照でわかる改正債権法の逐条解説(平成29年、新日本法規)587頁
② 日本弁護士連合会編・実務解説改正債権法(第2版)(2020年、弘文堂)頁
③ 平野裕之 コア・テキスト民法Ⅴ契約法(第2版)(2018年、新世社)160頁
④ 中田裕康 契約法新版(2021年、有斐閣)349頁(略称:中田)