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債権法改正 賃貸借契約(その1)のページ

民法第3編 債権
第2章 契約
第7節 賃貸借

            第1款 総則

○ 民法601条(賃貸借)(平成29年改正)

 賃貸借は、当事者の一方(注 賃貸人)がある物の使用及び収益を相手方(注 賃借人)にさせることを約し、相手方(注 賃借人)がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。

旧601条(賃貸借) 

 賃貸借は、当事者の一方(注 賃貸人)がある物の使用及び収益を相手方(注 賃借人)にさせることを約し、相手方(注 賃借人)がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

 

【解説】

 

1 本条は、賃貸借契約の意義を定めたものである。

2 賃貸借契約は、諾成・双務・有償契約である。

→ 特別法による例外 農地法3条1項4項

 

【平成29年改正法】

1 契約終了時における目的物返還義務は、貸借型契約であることから含意されているといえるが、旧法においては、冒頭の定義規定では明記されておらず、使用貸借契約の規定を準用していた(旧616条・597条1項)。

 平成29年改正法は、これを改めて、冒頭の定義規定で明記した。

2 経過措置(附則34条1項)

  賃貸借契約が締結された時が

① 施行日前

  当該賃貸借契約及びこれに付随する特約

  改正法の法(旧法)が適用される。

② 施行日以後

  当該賃貸借契約及びこれに付随する特約

  改正法(新法)が適用される。 

<賃貸人の義務>

文献⑤

1 目的物を使用収益させる義務(601条)

  使用貸借:貸主が単に借主の使用収益を許容する義務

       (消極的義務)

  賃貸借:目的物を使用収益に適した状態に保つ義務

       (積極的義務)

2 目的物を引き渡す義務

  不可能な場合 → 債務不履行(履行不能)責任

3 目的物を引き渡した後

  妨害排除義務

4 目的物の使用収益に必要な修繕をする義務 606条1項本文

5 費用負担

(1)必要費(賃貸人の負担に属する) 608条1項

   賃借人→費用償還請求権→賃貸人

「賃貸人の負担に属する」

個別の契約の内容によって定まる。

(視点)賃貸借においては目的物を使用収益させることが賃貸人の義務である。賃貸人が目的物を使用収益できる状態におくために必要な費用は、反対の特約のない限り、賃貸人の負担に属すると介すべき(中田398頁)。

(2)有益費 608条2項

   賃借人→費用償還請求権→賃貸人

6 担保責任

  559条→(準用)→562条~564条   

<賃借人の義務>

○ 民法602条(短期賃貸借)(平成29年改正)

 処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。

 契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、当該各号に定める期間とする。

一樹木の植栽又は伐採を目的とする山林の賃貸借 10年

二 前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 5年

三 建物の賃貸借 3年

四 動産の賃貸借 6箇月

旧602条(短期賃貸借)

 処分につき行為能力の制限を受けた者又は処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。

一樹木の植栽又は伐採を目的とする山林の賃貸借 10年

二 前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 5年

三 建物の賃貸借 3年

四 動産の賃貸借 6箇月

【解説】

1 処分の権限を有しない者

  例:不在者財産管理人、後見人(後見監督人がある場合)

2 短期賃貸借の意義

 賃貸借契約の存続期間が長期に亘る場合は、賃貸物件についての用益での負担・制約が増大→現実的には、物権を設定する行為に近い。

→ 処分の権限を有しない者が締結する賃貸借契約の期間に制限を設けた。

【平成29年改正法】

処分につき行為能力の制限を受けた者」とは、未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助者であるが、これらの者が短期賃貸借を単独ですることができるか否かについては個別に規定されている(※)ため、平成29年改正法は、個別規定に委ね、処分につき行為能力の制限を受けた者」の文言を削除した。

2 旧法では所定期間を超える賃貸借がされた場合の効力について定めがなかったが、平成29年改正法は、超過期間の部分のみを無効とした。

 

※ 制限行為能力者と賃貸借契約の締結

① 未成年者 

ⅰ 賃貸借契約の締結には、短期賃貸借か否かを問わず、法定代理人の同意か必要。(民法5条1項本文)

ⅱ ⅰの同意がない場合、取り消すことができる。(5条2項)

② 成年被後見人

ⅰ 成年被後見人単独で契約することはできない。(9条本文)

ⅱ ⅰに反した場合、取り消すことができる。(9条本文)

③ 被保佐人

ⅰ 民法602条に定める期間を超える賃貸借契約に限り、

保佐人の同意が必要。(13条1項9号)

ⅱ ⅰに反した場合、取り消すことができる。(13条4項) 

④ 被補助人

ⅰ 補助人の同意を要する旨の審判において、民法602条に定める期間を超える賃貸借契約が要同意行為された場合、補助人の同意が必要。(17条1項本文)

ⅱ ⅰに反した場合、取り消すことができる。(17条4項) 

 

○ 民法603条

 前条に定める期間は、更新することができる。ただし、その期間満了前、土地については一年以内、建物については三箇月以内、動産については一箇月以内に、その更新をしなければならない。

○ 民法604条(平成29年改正)

1項 賃貸借の存続期間は、50年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、50年とする。

2項 賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から50年を超えることができない。

旧604条

1項 賃貸借の存続期間は、20年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、20年とする。

2項 賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から20年を超えることができない。

【解説】

1 賃貸借契約の期間を法定する意義

① 長期間に亘る賃貸借契約の必要性 → 上限を50年とすることにより、経済活動上の不都合を避ける。

② あまりにも長期であると、賃貸物の所有権にとって過度の負担となる。

 

【平成29年改正法】

1 賃貸借契約の期間の上限

  旧法:20年 → 新法:50年

  

 大型のプラント・太陽光発電設備、ゴルフ場のため賃貸借契約を設定する需要があるが、上限20年では短く、これをクリアーするためには地上権を設定するか、賃貸借契約を再契約するかして対応することになるが、地上権は利用される実態が少ない、再契約は契約当事者(特に賃借人)にとって契約上の地位が安定しない弱点があった。

 そこで、上限を、永小作権の存続期間の上限が50年であること(民法278条)を踏まえて、50年とした。

2 建物賃貸借契約については、本条は適用されない(借地借家法29条2項)。

 建物所有を目的とする土地の賃貸借契約の存続期間(下限)は30年、契約でこれより長い期間を定めた場合にはその期間となる(借地借家法3条)。

【参考・参照文献】

 このページは、下記文献を参考・参照して作成しました。

① 第一東京弁護士会司法制度調査委員会編・新旧対照でわかる改正債権法の逐条解説(平成29年、新日本法規)304頁

② 日本弁護士連合会編・実務解説改正債権法(第2版)(2020年、弘文堂)450頁

③ 潮見佳男 基本講義債権各論Ⅰ 契約法・事務管理・不当利得第4版(2022年、新世社)153頁

⑤ 中田裕康 契約法新版(2021年、有斐閣)387頁(略称:中田)

 

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