【注力分野】相続(相続調査、相続放棄)、遺産分割(協議、調停・審判)、債務整理、自己破産、個人再生、法律相談
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【論点】遺産分割と共有物分割
(文献①290頁)
1 遺産分割と共有物分割
① 遺産分割
ⅰ 基準 民法906条
ⅱ 手続
a 協議
b 家事調停
c 家事審判
② 共有物分割
ⅰ 基準
ⅱ 手続
a 協議
b 民事調停
c 民事裁判
2 遺産分割と共有物分割との関係
(1)基本
遺産共有 → 遺産分割
遺産共有以外の共有(通常の共有) → 共有物分割
(2)ケース
[ ]は遺産共有 :は通常の共有
[A、B]:C
第1段階 [A、B]とCとの共有の解消
共有物分割
第2段階 AとBとの共有の解消
遺産分割
【論点】遺産分割の法定解除
1 共同相続人間において遺産分割協議が成立したが、相続人の1人が他の相続人に対して遺産分割協議において負担した債務を履行しない場合、他の相続人は、民法541条により遺産分割協議を解除することができるか。
判例(最判平成元年2月9日)は、下記①②の理由から、これを否定する。
① 遺産分割は、その性質上、協議の成立とともに、遺産を分割するという目的を達成することにより終了する。協議成立後は、協議により債務を負担した相続人と、その債権を取得した相続人との間の債権債務関係が残るだけである。
② 遺産分割の法定解除を認めると、遡及効(民法909条本文)を有する遺産の再分割を余儀なくされ、法的安定性を著しく害される。
文献①289頁
①について 遺産分割の遡及効により「相続分は被相続人から直接財産を相続した」、「遺産共有状態は存在しなかった」ものとして取り扱われる(民法909条本文に定める宣言主義)点を貫徹しようとする意図が認められる。②について 第三者の取引の安全は民法545条1項ただし書があるため再分割を否定する論拠とはならない。ここでいう法的安定性は、複雑・微妙な手続を経て成立した遺産分割の効力を否定して、再分割することは煩瑣であるという意味において、共同相続人間での法的安定性を意味する。
文献②427頁
決定的な理由は②である。すなわち、一部の相続人が約束を守らないことを理由に全相続人が再度遺産の全体について分割をやり直すことは大変であり、また、何年も経って解除されると、原状回復も難しい。
2 判例の立場であっても、遺産分割とは別に負担付贈与がされ、その負担の不履行を理由に贈与契約を解除したといえる事案は認められる。最判昭和53年2月17日
【論点】遺産分割の合意解除
【参考・参照文献】
以下の文献を参考にして、作成しました。
① 潮見佳男 詳解相続法第2版(2022年、弘文堂)288頁
② 内田貴 民法Ⅳ(補訂版)親族・相続(2004年、東京大学出版会)426頁
③ 松原正明 全訂判例先例相続法Ⅱ(平成18年、日本加除出版)534頁