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〇 民法169条(判決で確定した権利の消滅時効)
1項 確定判決又は同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年により短い時効期間の定めがあるものについても、その時効期間は十年とする。
2項 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。
旧174条の2(判決で確定した権利の消滅時効)
1項 確定判決によって確定した権利については、十年により短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は十年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。
2項 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。
1 平成29年改正は、文言の調整に止まり、実質的な変更はない。
2 主債務物の短期消滅時効期間が本条によって10年に延長された場合は、保証債務の消滅時効期間も10年に変更される(最判昭和43年10月17日)
保証債務の付従性がその理由である(酒井廣幸(新版)時効の管理83頁、平成19年、新日本法規)。
1 意義
民法制定当初、判決等により確定した債権についての特則は設けられていなかった。この点、起草者の梅謙次郎博士によると、判決等によっても権利の性質は変わるところはないところ、時効期間が短期か長期かは権利の性質に関するものであり、判決等で権利が認められたとしても、時効期間が短期から長期に変化することはないという理由から、あえて特則は設けられなかった。
しかし、例えば、1年の短期消滅時効の債権(旧法174条)の支払いを命ずる判決が確定したにもかかわらず、判決確定から1年間で消滅時効にかかるというのは、債権者の保護に欠ける。また、この結論をとると、債権者は、時効中断効を得るために、何度も判決をとらなければならなくなる。
そこで、昭和13年の民法改正により、上記必要性のほか、判決等により権利の存在について確証が生じたことを理論的理由として、特則が設けられた。
2 適用される債権
(1)①&② or ①&③
① 時効期間が10年より短い権利
② 確定判決
③ 確定判決と同一の効力を有するもの
ⅰ 裁判上の和解(民事訴訟法267条)
ⅱ 調停(民事調停法16条、家事事件手続法268条)
ⅲ 支払督促の確定(民事訴訟法396条)など
(2)確定当時、弁済期未到来の債権は別であり(169条2項)、これは、弁済期の到来により時効が進行する。
石田穣は、別扱いすることに疑問とする(文献②1146頁)。
3 判決後、中断・更新事由が生じた後の時効期間
(例)1年の短期消滅時効の債権(旧法174条)の支払いを命ずる判決が確定した直後、債務者は債権者に一部弁済したが、その後、未払いの状態が継続している。この場合、一部弁済から1年で消滅時効にかかるのか、それとも10年で消滅時効にかかるのか。
(結論)
一般的に、10年と考えられている。下記大阪地裁判決も、この見解に依拠している。
(理由)
① 短期消滅時効に服すると考えるのは、債権者の保護に欠ける。
② 判決等によって権利が公に確定している。
主債務物の短期消滅時効期間が本条によって10年に延長された場合は、保証債務の消滅時効期間も10年に変更される(最判昭和43年10月17日)
保証債務の付従性がその理由である(酒井廣幸(新版)時効の管理83頁、平成19年、新日本法規)。
【裁判例】大阪地方裁判所平成10年9月24日(D1-Law.com 判例ID28040161)
(事案)
1 X信用保証協会 YのA銀行からの借入れについて保証
2 X 昭和50年12月 代位弁済
3 昭和56年5月 Yに対し求償債務をXに弁済するよう命ずる判決が出される。その後、判決が確定する。
4 平成元年12月、平成3年11月、平成5年6月
Y→X 内入弁済
5 平成10年5月
最後の内入弁済から5年を経過する前に、Xが再訴する。
(裁判所の判断)
① 本訴請求権は、各内入弁済により消滅時効が中断し、最後の内入弁済日である平成5年6月7日から10年間の消滅時効期間が進行する。
② 現時点では未だ時効期間のおそよ半分が経過したに過ぎず、訴えによる時効中断の必要性が認められず、訴えの利益はない。
③ 結論 訴え却下
[コメント]
【参考・参照文献】
下記文献を参考・参照して作成しました。
① 平野裕之 民法総則(第3版)(2011年、日本評論視野)552頁
② 石田穣 民法総則(2014年、信山社)1146頁
③ 酒井廣幸 続時効の管理(令和2年、新日本法規)84頁
④ 鈴木銀治郎・滝口博一・椿原直編著 時効の法律相談(2018年、青林書院)113頁