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<過失相殺・総論>
1 過失相殺の意義
発生した損害について、被害者の過失が関係している場合、「損害の公平な分担」の観点から、それを損害賠償額の算定にあたり考慮して、損害賠償額を縮減し、損害賠償額の調整を図る制度である。
2 債務不履行における過失相殺 民法418条
3 過失相殺における過失の意義
判例の変遷
旧判例(最判昭和31年7月20日)
① 709条の過失と同じ
② 責任能力が必要
現判例(最大判昭和39年6月24日)
交通事故の被害者である8歳(小学二年生)の男児の過失を考慮することを肯定した。
過失相殺の問題は、不法行為者に対し積極的に損害賠償責任を負わせる問題とは趣を異にし、不法行為者が責任を負うべき損害賠償の額を定めるにつき、公平の見地から、損害発生についての被害者の不注意をいかにしんしゃくするかの問題に過ぎないのであるから、被害者たる未成年者の過失をしんしゃくする場合においても、未成年者に事理を弁識するに足る知能が具わつていれば足り、未成年者に対し不法行為責任を負わせる場合のごとく、行為の責任を弁識するに足る知能が具わつていることを要しないものと解するのが相当である。
〇 民法722条(損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺)
1項 第四百十七条及び第四百十七条の二の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
2項 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
<過失相殺の類推適用(1)被害者側の過失>
1 判例による、被害者側の過失の法理の採用
◇ 最判昭和42年6月27日
(事案・争点)幼稚園児(四歳の女児)が登園中にダンプカーにはねられて死亡した交通事故において、園児に付き添っていた保母の監督上の過失を過失相殺として考慮できるか。
(判旨)
① 「被害者と身分上ないし生活関係上一体をなすと認められるような関係にある者の過失」は、「被害者側の過失」として考慮して、過失相殺の対象となる。(例)被害者に対する監督者である父母 or その被用者である家事使用人
② ①に当たらない者の過失は、被害者側の過失に含まれない。
③ 本件における保母の過失は②に当たる。
2 判例による、被害者側の法理の拡張(配偶者)
◇ 最判昭和51年3月25日
(事案・争点)
交通事故
X1[運転者]X2[同乗者&X1の妻]
Y1[運転者]Y2[車両所有者]
[過失割合]X1:50% VS Y1:50%
X2 → Y1,Y2 損害賠償請求 において、
X1の過失を考慮できるか。
(判旨)
① Xらの婚姻関係が既に破綻に瀕している等の特段の事情のない限り、X1の過失をX2の過失として斟酌することができる。
② ①のように解することにより、求償関係をも一気に解決し、紛争を一回で処理することができるという合理性もある。
(評価)
身分上・生活関係上の一体関係を成す関係という要件を維持しつつ、そこに求償を回避するという合理的目的を付加して被害者側の過失論を拡張した (藤村339頁)。
<過失相殺の類推適用(2)交通事故訴訟>
1
<最判昭和63年4月21日>
1 事案
追突事故の被害者(女性)が事故後10年以上に亘り入通院を繰り返した。原審は、事故後3年間までに発生した損害のうち4割を加害者が負うべき責任とした。心因的素因による減額が争点である。
2 判旨
思うに、身体に対する加害行為と発生した損害との間に相当因果関係がある場合において、その損害がその加害行為のみによつて通常発生する程度、範囲を超えるものであつて、かつ、その損害の拡大について被害者の心因的要因が寄与しているときは、損害を公平に分担させるという損害賠償法の理念に照らし、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、その損害の拡大に寄与した被害者の右事情を斟酌することができるものと解するのが相当である。
<最判平成4年6月25日>
1 事案
2 判旨
<最判平成8年10月29日(頚椎後縦靱帯骨化症)>
1 事案
2 判旨
<最判平成8年10月29日(首長事件)>
1 事案
2 判旨
【参照・参考文献】このページは、次の文献を参照・参考西手、作成しました。
□ 潮見佳男 基本講義債権各論Ⅱ不法行為法第4版(2021年、新世社)頁
□ 近江幸治 民法講義Ⅵ 事務管理・不当利得・不法行為(第3版)(2018年、成文堂)201頁 略称:近江
□ 藤村和夫 新民法基本講義 不法行為法(2020年、信山社)329頁 略称:藤村
□ 中原太郎 講座点と点をつなぐ不法行為判例 第4回被害者側の過失 法学教室520号70頁 略称:中原