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1 本条は、破産手続開始の原因を定めたものである。
2 支払不能(本条1項)
この法律において「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(信託財産の破産にあっては、受託者が、信託財産による支払能力を欠くために、信託財産責任負担債務(信託法(平成十八年法律第百八号)第二条第九項に規定する信託財産責任負担債務をいう。以下同じ。)のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態)をいう(破産法2条11項)。
支払不能の要素
① 支払能力を欠くために
② 債務のうち弁済期にあるものについて
③ 一般的・継続的に弁済することができない状態
ⅰ 一般的
一部ではない。
弁済できない債務が債務の全部又は大部分
ⅱ 継続的
一時ではない。
3 支払停止(本条2項)
(1)支払停止の意義
債務者が資力欠乏のため債務の支払をすることができない旨明示的・黙示的に外部に表明する行為(判例)
例:銀行取引停止処分
(2)支払停止 → 推定 → 支払不能
(3)支払不能・支払停止の違い
支払不能:債務者の客観的状態
支払停止:外部に表明する行為
1 債務超過の意義
債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態をいう。
2 法人(合名会社・合資会社を除く。)は、支払不能(破産法15条)に加えて、債務超過が破産手続開始原因となっている。
1 債権者申立てと債務者申立て(自己破産)との違い
債権者申立てでは、債権の存在及び破産手続開始の原因となる事実を疎明することが必要である(本条2項)。一般的には、予納金の額は、債権者申立てが債務者申立て(自己破産)が高い。
1 準自己破産
法人としての意思決定ができない場合においても、本条1項所定の者は、破産手続開始を申し立てることができる。これを「準自己破産」という。
1 破産手続開始決定の方法
口頭弁論は必要的でない。書面審理及び審尋により行われる。
2 破産手続開始原因
3 下記①②の事由(破産障害事由)がないこと
① 破産手続費用の予納(破産法21条1項)がないこと(本条1項1号)
② 不当な目的で破産手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき(本条1項2号)
【例】債務者申立て:破産手続に適切に対応するつもりがないにもかかわらず、債権者の追及を逃れるため、申し立てた。
債権者申立て:債権者が、自己の債権の回収を図るため、申立てをし、債務者に対し、支払いを条件として、申立ての取下げを提案した。
1 本条は、裁判所が、破産手続開始決定をする場合、同時に定めなければならない事項(同時処分)を定めたものである。
① 破産管財人の選任
② 破産債権の届け期間(本条1項1号)
③ 財産状況報告集会の期日(本条1項2号)
④ 破産債権の調査をするための期間又は期日(本条1項3号)
2 留保型
裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足するおそれがあると認めるとき
上記②④の決定を定めないことができる(本条2項)
○ 破産決定書の例
【同時廃止型】
令和4年(フ)第○○○○号
決 定
住所 ○○○○
破産者 ○○ ○○
主 文
1 債務者○○ ○○につき、破産手続を開始する。
2 本件破産手続を廃止する。
理 由
一件記録によれば、債務者が支払不能の状態にあり、かつ、破産財団をもって破産手続費用を支弁するに足りないことが認められる。
よって、主文のとおり決定する。
なお、この決定に併せて、下記のとおり定める。
記
免責についての意見申述期間
令和4年○月○日まで
令和4年○月○日
大阪地方裁判所第6民事部
裁判官 ○○ ○○
これは正本である。
令和4年○月○日
大阪地方裁判所第6民事部
裁判所書記官 ○○ ○○
○ 破産決定書の例
【管財型】
令和4年(フ)第○○○○号 破産事件
決 定
住所 ○○○○
破産者 ○○ ○○
主 文
1 債務者○○ ○○について、破産手続を開始する。
2 破産管財人に次の者を選任する。
大阪市○○○○ ○○法律事務所
弁護士 ○○ ○○
3 財産状況報告集会・廃止意見聴取集会・計算報告集会の各期日を次のとおり定める。
令和4年○月○日午後○時○○分
4 破産者の免責について書面により意見を述べることができる期間を次のとおり定める。
令和4年○月○日まで
5 破産管財人は、破産者について破産法252条1項各号に掲げる事由の有無及び同条2項の規定による免責許可の決定をするに当たって考慮すべき事情についての調査を行い、3の期日の1週間前の日までに書面で報告しなければならない。
6 破産管財人は、次の各行為については、当裁判所の許可を得ないでこれを行うことができる。
(1)自動車の任意売却
(2)取戻権の承認
(3)財団債権の承認
(4)有価証券の市場における時価での売却
7 破産管財人は、6の各行為について、少なくとも1か月に1回、財産目録及び収支計算書に記載し、破産管財人口座の通帳写しを裁判所に提出しなければならない。
8 破産管財人は、任務終了時に破産管財人口座を解約した後、すみやかに収支計算書及び破産管財人口座の通帳写しを裁判所に提出しなければならない。
9 信書の送達の事業を行う者に対し、破産者にあてた郵便物等を破産管財人に配達すべき旨を嘱託する。
理 由
証拠によれば、債務者には破産法15条1項所定の破産手続開始原因となる事実があることが認められる。また、破産法30条1項各号に該当する事実があるとは認められない。
よって、本件申立ては理由があるので主文第1項のとおり決定し、併せて破産法31条1項、2項、217条1項、135条2項、251条1項、250条1項、157条2項、78条3項2号、81条1項の規定に基づき、主文第2項から第9項のとおり決定する。
令和4年○月○日午後3時
大阪地方裁判所第6民事部
裁判官 ○○ ○○
これは正本である。
令和4年○月○日
大阪地方裁判所第6民事部
裁判所書記官 ○○ ○○
【参考・参照文献】
下記文献を参考・参照して作成しました。
① 川畑正文ほか編・はい6民です お答えします(倒産実務Q&A)(平成30年 大阪弁護士協同組合)
② 川畑正文ほか編・(第3版)破産管財手続の運用と書式(2020年、新日本法規)
③ 全国倒産処理弁護士ネットワーク編・破産実務Q&A220問(2019年、金融財政事情研究会)