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〇 民法715条(使用者等の責任)
1項 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2項 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3項 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
1 使用者責任の意義
直接の加害行為をしたのではない使用者が被用者の行為について責任を負う理由は何か。
① 報償責任の原理
使用者は、被用者の行為によって自己の活動領域を広げ利益を享受している。
→ 被用者が第三者に損害を与えた場合は、損害を賠償すべきである。
② 危険責任の原理
使用者は、被用者の行為によって加害の危険を発生させている。
→ 危険が現実化したことについて責任を負うべき。
③ 機能面からの説明
被害者の保護を十分にする(文献②402頁)。
2 使用者責任の法的性質
〇 自己責任説
被用者の選任又は監督についての使用者自身の責任
〇 代位責任(通説・判例)
報償責任の原理及び危険責任の原理より、被用者の不法行為責任を被用者に代わって負う。
3 使用者責任の要件
(1)事業のため他人を使用していること
まず、取引行為が使用者の営む「事業」に含まれるかを検討し、それが認められるときに被用者の「職務」に含まれるかを検討する、二段構えの構造となっている(文献③226頁)。
① 事業
ⅰ 営利目的か非営利目的か問わない。
ⅱ 継続的か一時的か問わない。
ⅲ 適法か違法が問わない。
ⅳ 付随的業務を含む。
② 他人を使用する。
ⅰ 使用関係
ⅱ 指揮・監督関係
被用者の個人的取引であり、使用者の事業に属しないと認定されるものは、この(1)の要件を充たさない。この認定基準は、被用者と被害者との間でされた合意の内容等によって決まると解される。詐欺その他の加害行為が使用者の業務と関連して行われたとしても、取引の目的・動機、被害者・被用者間の人的関係、取引の内容、使用者に対する確認・問合せの有無、被用者個人名の使用等を考慮要素として、被害者が、取引の相手方として、使用者ではなく、被用者を選択したと判断される場合、当該行為は使用者の事業を離れて行われたものであり、使用者責任は成立しない。(文献③228~229頁)
(2)被用者が事業の執行について加害行為をしたこと
事業の執行に際して>事業の執行について>事業の執行のために
被用者の職務権限内の行為を遂行している場合、それが不法行為となることは通常の場合はない。
ここで検討すべきは、被用者の職務権限に基づく行為が適切でなかった場合や権限を濫用・逸脱した場合、どの範囲までを使用者責任に取り込むべきかである。
判例の変遷
不可分一体説(大判大正5年7月29日)
使用者の業務執行自体
+ それと一体をなし不可分の関係にあるもの
→ 地位の権限の逸脱・濫用の事案(株券・手形の偽造等)は、職務関連性を否定
最判昭和40年11月30日[手形の偽造]
事業の執行に付き(民法715条)とは、被用者の職務行為そのものには属しないが、その行為の外形から観察して、あたかも被用者の職務の範囲内の行為に属するとみられる場合を包含するものと解される。
と判示して、最高裁として初めて、外形標準説を明言した。
外形標準説
外形標準説の位置づけ
使用者の事業の範囲を問題とした判例に「外形上」の表現を使用したものも見受けられるが、外形標準説は、一般的には、被用者の職務との関連性についての問題と位置付けられている。文献③227頁
② 被用者の職務権限
〇 民法716条(注文者の責任)
注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。
【参考・参照文献】
このページは、下記文献を参考・参照して作成しました。
① 平野裕之・債権各論Ⅱ事務管理・不当利得・不法行為頁(2019年、日本評論社)
② 藤村和夫・不法行為法(令和2年、信山社)402頁
③ 森田亮ほか使用者責任の研究(佐々木茂美編民事実務研究Ⅲ(2008年、判例タイムズ社)208頁)