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1 後見の意義と種類
(1)未成年後見
(2)成年後見
2 本条1号は未成年後見の開始原因を、本条2
号は成年後見の開始原因を、それぞれ定めたものである。
3 本条1号
① 未成年者に対して親権を行う者がないとき(前段)
ⅰ 父母の一方の死亡
生存する父母の単独親権
ⅱ 父母の双方の死亡
未成年後見の開始
② 親権を行う者が管理権を有しないとき(後段)
父母が管理権喪失宣告を受けた場合 民法835条
父母が管理権者の地位を辞任した場合 民法837条1項
4 本条2号
後見開始の審判(民法7条)→成年後見開始
1 指定未成年後見人(本条1項)
① 指定者
ⅰ 未成年者に対して最後に親権を行う者(管理権を有する子場合に限る。)
ⅱ 親権を行う父母の一方が管理権を有しないときは、他の一方
② 方式:遺言(本条2項)
○ 民法840条(未成年後見人の選任)
1項 前条の規定により未成年後見人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によって、未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けたときも、同様とする。
2項 未成年後見人がある場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に規定する者若しくは未成年後見人の請求により又は職権で、更に未成年後見人を選任することができる。
3項 未成年後見人を選任するには、未成年被後見人の年齢、心身の状態並びに生活及び財産の状況、未成年後見人となる者の職業及び経歴並びに未成年被後見人との利害関係の有無(未成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と未成年被後見人との利害関係の有無)、未成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。
1 選定未成年後見人(本条1項)
① 請求
ⅰa 遺言により未成年後見人を指定する者がいない場合
b 未成年後見人が欠けた場合
後見人の死亡、辞任(民法844条)、解任(民法846条)、欠格(民法847条)など
ⅱ 未成年者、親族、利害関係人の請求
② 家庭裁判所が選任する。
家事事件手続法別表第1 71項
基準(本条3項、平成23年改正)
2 追加的選任(本条2項、平成23年改正)
未成年後見人の職務は大変
→ 複数の後見人による職務分掌、例えば、身上監護は親族が、財産管理は弁護士が行うことも可能である。
○ 民法841条(父母による未成年後見人の選任の請求)
父若しくは母が親権若しくは管理権を辞し、又は父若しくは母について親権喪失、親権停止若しくは管理権喪失の審判があったことによって未成年後見人を選任する必要が生じたときは、その父又は母は、遅滞なく未成年後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。
親権喪失・親権停止・管理権喪失の審判によって、親権に制限を受けた父母に対し、未成年後見人の選任の請求を義務付けた。
〇 民法842条(未成年後見人の数)
削除
〇 民法843条(成年後見人の選任)
1項 家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で、成年後見人を選任する。
2項 成年後見人が欠けたときは、家庭裁判所は、成年被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求により又は職権で、成年後見人を選任する。
3項 成年後見人が選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に規定する者若しくは成年後見人の請求により又は職権で、更に成年後見人を選任することができる。
4項 成年後見人を選任するには、成年被後見人の心身の状態並びに生活及び財産の状況、成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無)、成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。
1 成年後見人開始時における成年後見人の選任(本条1項)
(1)家事事件手続法別表第1、3項
家庭裁判所は、後見開始の審判をするとき、職権で成年後見人選任の審判をする。→ 選任の審判申立ては不要である。
(2)後見開始の原因 民法総則行為能力に規定されている(民法7条)。
2 成年後見人が欠けた場合における成年後見人の選任(本条2項)
(1)家事事件手続法別表第1、3項
成年後見人が欠けた場合:死亡、辞任(民法844条)、解任(民法846条)、欠格事由(民法847条)
3 成年後見人の追加的選任(本条3項)
(1)家事事件手続法別表第1、3項
4 成年後見人の選定基準(本条4項)
〇 民法844条(後見人の辞任)
後見人は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。
1 本条は、後見人の辞任の要件及び手続について定めたものである。未成年後見、成年後見双方に適用される。
2 辞任の要件
正事由事由
【例】後見人の心身の故障、後見人・本人間の信頼関係喪失
3 辞任の手続
家庭裁判所の審判(家事事件手続法別表第一・4項72項)
大弁会124頁
〇 民法845条(辞任した後見人による新たな後見人の選任の請求)
後見人がその任務を辞したことによって新たに後見人を選任する必要が生じたときは、その後見人は、遅滞なく新たな後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。
1 本条は、①後見人が辞任した場合&②新たに後見人を選任する必要が生じた場合、辞任した後見人に対し、新たな後見人の選任請求義務を課した ものである。
2 成年後見人
① 本条により、辞任した後見人による選任請求
② 家庭裁判所が職権で新後見人を選任することもできる(民法843条2項)。
3 未成年後見人
① 本条により、辞任した後見人による選任請求
② 民法843条2項に相当する規定はない。
〇 民法846条(後見人の解任)
後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、後見監督人、被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求により又は職権で、これを解任することができる。
1 本条は、後見人の解任の要件及び手続について定めたものである。未成年後見、成年後見双方に適用される。
2 解任の要件
不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由がある場合
(1)不正な行為
【例】後見人が本人の財産を横領した。
(2)著しい不行跡
(3)その他後見の任務に適しない事由
3 解任の手続
家庭裁判所の審判(家事事件手続法別表第1・5項・73項)後見監督人、被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求により又は職権により
大弁会125頁
〇 民法847条(後見人の欠格事由)
次に掲げる者は、後見人となることができない。
一 未成年者
二 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
三 破産者
四 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
五 行方の知れない者
〇 民法848条(未成年後見監督人の指定)
未成年後見人を指定することができる者は、遺言で、未成年後見監督人を指定することができる。
〇 民法849条(後見監督人の選任)
家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被後見人、その親族若しくは後見人の請求により又は職権で、後見監督人を選任することができる。
〇 民法850条(後見監督人の欠格事由)
後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、後見監督人となることができない。
〇 民法851条(後見監督人の職務)
後見監督人の職務は、次のとおりとする。
一 後見人の事務を監督すること。
二 後見人が欠けた場合に、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること。
三 急迫の事情がある場合に、必要な処分をすること。
四 後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること。
〇 民法852条(委任及び後見人の規定の準用)
第六百四十四条、第六百五十四条、第六百五十五条、第八百四十四条、第八百四十六条、第八百四十七条、第八百六十一条第二項及び第八百六十二条の規定は後見監督人について、第八百四十条第三項及び第八百五十七条の二の規定は未成年後見監督人について、第八百四十三条第四項、第八百五十九条の二及び第八百五十九条の三の規定は成年後見監督人について準用する。
成年後見制度
1 平成11年民法改正によって、時代に合わなくなっていた禁治産制度を廃止し、精神上の障害により判断能力の不十分な人を保護する成年後見制度が創設された。特徴は、次のとおりである。
① 被保護者を保護しつつ、被保護者の日常生活における自己決定を尊重する。
② 被保護者の要保護状態に応じて、「成年後見」、「保佐」、「補助」の3種類の保護制度を設ける。
③ 正常な精神能力ある状態で自分の意思で後見人を選定することができる、「任意後見制度」を導入した。
④ 成年後見・保佐について、保護者による被保護者の財産管理の職務だけではなく、身上監護の職務を設けた。
成年後見審判
1 管轄
成年被後見人となるべき者の住所地の家庭裁判所
(家事事件手続法117条1項)
2 精神状況の鑑定
家事事件手続法119条1項
3 本人の陳述
家事事件手続法120条1項
4 審判
(1)「できる」とあるが(民法7条)、申立てがあり要件を充足すれば、家庭裁判所は、後見開始の審判をしなければならない。
(2)誰を成年後見人に選任するかについては、家庭裁判所の専権事項である。親族が成年後見人に選任される場合、弁護士・司法書士等の専門職が成年後見人に選任される場合(成年被後見人が一定額以上の資産を有する場合、親族間に親族のいずれを成年後見人とするかについて意見の対立がある場合など)等がある。
5 取下げ
取下げには、家庭裁判所の許可が必要である(家事事件手続法121条)。
理論的には取下げは認められ得るが、成年被後見人となるべき者の利益に明らかに反する取下げを制限する趣旨である。家事事件手続法82条1項の「特別の定め」に当たる。
例えば、申立人が、同人の親を成年被後見人となるべき者として、申立人を成年後見人候補者とする成年後見を申し立てたが、家庭裁判所が、申立人は成年後見人として不適格として考え、第三者たる専門家(弁護士・司法書士)が成年後見人として適格であると考えた。申立人は、このような家庭裁判所の意向に気が付き、或いは、家庭裁判所の意向がそうである可能性があることをおそれて、申立てを取り下げる。このような取下げを制限する趣旨である。
6 成年後見登記
審判が確定すると、成年後見登記が裁判所書記官の嘱託により行われる(家事事件手続法116条1号)。
【参考参照文献】
① 梶村太市・徳田和幸編著「家事事件手続法(第3版)」(2016年・有斐閣)273頁
② 潮見佳男 民法(全)第3版(2022年、有斐閣)616 頁
◇ 参考・参照文献
次の文献を参考、参照して作成しました。
□ 大阪弁護士会 高齢者・障害者総合支援センター
【全訂版】成年後見人の実務2023
略称:大弁会
□ 赤沼康弘・池田惠理子・松井秀喜編「Q&A成年後見実務全書第4巻」(平成28年・民事法研究会)1417頁以下