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【事案】
浦和さんというある女性(30歳)が子供(8歳、4歳、2歳)と無理心中をしようとし、子供を絞殺したが、自分は死にきれなかった事件について、浦和地裁が懲役3年執行猶予5年の判決を言い渡したところ、当時(昭和23年)の参議院法務委員会が、量刑不当(軽すぎる)という決議を行った。
これに対し、最高裁判所は、個々の具体的裁判について事実認定及び量刑の当否を調査・批判することは司法権の独立を外し、国政調査権の範囲を超える旨抗議した。
国政調査権(憲法62条)の限界に関わる問題である。
学説は、おおむね、最高裁判所の立場に賛成である。
例えば、
国政調査権は他の国家機関の権限行使に重大な影響を及ぼすことは許されない観点から、法務委員会の調査は、明らかに調査権の範囲を逸脱したものである(佐藤幸治・日本国憲法論467頁)。
国政調査権は権力分立原理による限界があるとの観点から、裁判事件から裁判所と異なる目的からであれば平行調査が禁じられるわけではないが、裁判類似の手続(事実認定 → 法適用し量刑等結論を出す)で調査することは、司法権に対する不当な干渉として許されず、法務委員会の調査は調査権の限界をこえた疑いがある(長谷部恭男・憲法第6版354頁)。
【時系列】
昭和23年4月6日 事件発生
昭和23年7月2日 浦和地裁(牛山毅裁判長)判決
控訴されず判決確定
その後
参議院法務委員会が、戦後の民主化を反映して、「裁判官の刑事事件不当処理等に関する調査」を始める。これに対し、最高裁が「調査の方法如何によっては憲法の「裁判の独立」にふれる恐れがある」と警告する。参議院法務委員会は、最高裁の警告を無視して、浦和地裁の牛山裁判長らを調べたり、最高裁に対し報告を求めたり、浦和さん本人ら事件関係者を尋問する等する。
昭和24年3月30日
参議院法務委員会が調査報告書を出す。報告書は、判決の事実認定に疑問があり刑の量定も軽きに失する、担当裁判官及び検察官の封建的思想に対する批判・基本的人権の尊重の認識を欠くためではないかと思料する等を内容とする。
昭和24年5月20日
最高裁(三渕忠彦長官)は裁判官会議を開き、参議院に対し、判事全員一致の意見により議決・作成された申込書を手渡した。申込書の内容は、参議院法務委員会の調査は、国政調査の範囲を逸脱した意見の措置である。
その後
法曹界、学会、マスコミが最高裁を支持したこともあり、世論もその方向で形成され、参議院法務委員会は、勧告等の措置をとることができなかった。
【参考・参照文献】
山本祐司・最高裁物語(上巻)101頁