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○ 破産法2条(定義)
5項 この法律において「破産債権」とは、破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(第九十七条各号に掲げる債権を含む。)であって、財団債権に該当しないものをいう。
6項 この法律において「破産債権者」とは、破産債権を有する債権者をいう。
1 破産債権の定義(本条1項)
① 破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(97条各号に掲げる債権を含む。)
ⅰ 破産者に対する請求権
破産者に対する人的請求権である。
物権的請求権は、破産者の特定財産についての権利であり、破産者に対する人的請求権ではないため、当該要件を充足しない。
ⅱ 破産手続開始前の原因に基づいて生じた請求権
破産手続:破産手続開始決定時を基準として、破産者の債務について、破産者の財産をもって清算する。
→ 原因が破産手続開始決定前であればよく、弁済期未到来、条件成就未確定等でもよい。
ⅲ 財産上の請求権
金銭債権が典型である。非金銭債権であっても、金銭債権に転化したもの(損害賠償請求権)又は金銭評価できるものは、当該要件を充足する。
② 財団債権に該当しないもの
○ 破産法97条(破産債権に含まれる請求権)
次に掲げる債権(財団債権であるものを除く。)は、破産債権に含まれるものとする。
一 破産手続開始後の利息の請求権
二 破産手続開始後の不履行による損害賠償又は違約金の請求権
三 破産手続開始後の延滞税、利子税若しくは延滞金の請求権又はこれらに類する共助対象外国租税の請求権
四 国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権(以下「租税等の請求権」という。)であって、破産財団に関して破産手続開始後の原因に基づいて生ずるもの
五 加算税(国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第二条第四号に規定する過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税及び重加算税をいう。)若しくは加算金(地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第一条第一項第十四号に規定する過少申告加算金、不申告加算金及び重加算金をいう。)の請求権又はこれらに類する共助対象外国租税の請求権
六 罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金又は過料の請求権(以下「罰金等の請求権」という。)
七 破産手続参加の費用の請求権
八 第五十四条第一項(第五十八条第三項において準用する場合を含む。)に規定する相手方の損害賠償の請求権
九 第五十七条に規定する債権
十 第五十九条第一項の規定による請求権であって、相手方の有するもの
十一 第六十条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)に規定する債権
十二 第百六十八条第二項第二号又は第三号に定める権利
○ (優先的破産債権)破産法98条
破産財団に属する財産につき一般の先取特権その他一般の優先権がある破産債権(次条第一項に規定する劣後的破産債権及び同条第二項に規定する約定劣後破産債権を除く。以下「優先的破産債権」という。)は、他の破産債権に優先する。
2項 前項の場合において、優先的破産債権間の優先順位は、民法、商法その他の法律の定めるところによる。
3項 優先権が一定の期間内の債権額につき存在する場合には、その期間は、破産手続開始の時からさかのぼって計算する。
○ 破産法99条(劣後的破産債権等)
1項 次に掲げる債権(以下「劣後的破産債権」という。)は、他の破産債権(次項に規定する約定劣後破産債権を除く。)に後れる。
一 第九十七条第一号から第七号までに掲げる請求権
二 破産手続開始後に期限が到来すべき確定期限付債権で無利息のもののうち、破産手続開始の時から期限に至るまでの期間の年数(その期間に一年に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとする。)に応じた債権に対する破産手続開始の時における法定利率による利息の額に相当する部分
三 破産手続開始後に期限が到来すべき不確定期限付債権で無利息のもののうち、その債権額と破産手続開始の時における評価額との差額に相当する部分
四 金額及び存続期間が確定している定期金債権のうち、各定期金につき第二号の規定に準じて算定される額の合計額(その額を各定期金の合計額から控除した額が破産手続開始の時における法定利率によりその定期金に相当する利息を生ずべき元本額を超えるときは、その超過額を加算した額)に相当する部分
2項 破産債権者と破産者との間において、破産手続開始前に、当該債務者について破産手続が開始されたとすれば当該破産手続におけるその配当の順位が劣後的破産債権に後れる旨の合意がされた債権(以下「約定劣後破産債権」という。)は、劣後的破産債権に後れる。
第1 破産債権と財団債権
1 破産債権
破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(第97条各号に掲げる債権を含む。)であって、財団債権に該当しないもの(破産法2条5号)。
(特徴)
① 破産手続において行使することが必要である。
② 破産法の債権調査の対象である。
③ 弁済は配当手続による。
④ 免責の対象となる(原則)
2 財団債権
破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権(破産法2条7号)。
(特徴)
① 破産手続外で行使される。
② 破産法の債権調査の対象ではない。
③ 弁済は配当手続ではなく、(財団不足とならない限り)随時、弁済できる。
④ 免責の対象とならない。
3 財団債権の種類
(1)破産法148条1項に定められている下記8種類
1号 破産債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権
(例)債権申立ての場合の申立費用
2号 破産財団の管理、換価及び配当に関する費用の請求権
(例)破産管財人の報酬(裁判所が決定する)、破産財団に属する不動産について破産手続開始決定後に賦課される固定資産税・都市計画税
3号 破産手続開始前の原因に基づいて生じた租税等の請求権であって、破産手続開始当時、まだ納期限の到来していないもの又は納期限から1年を経過していないもの
4号 破産財団に関し破産管財人がした行為によって生じた請求権
5号 事務管理又は不当利得により破産手続開始決定後に破産財団に対して生じた請求権
6号 委任の終了又は代理権の消滅の後、急迫の事情があるためにした行為によって破産手続開始後に破産財団に対して生じた請求権
7号 破産法53条1項の規定により破産管財人が債務の履行をする場合(未履行の双務契約について破産管財人が履行を選択したこと)において相手方が有する請求権
8号 破産手続開始によって双務契約の解約の申入れ(破産法53条1項又は2項の規定による賃貸借契約の解除を含む。)があった場合において破産手続開始後その契約の終了に至るまでの間に生じた請求権
(2)破産管財人が負担付遺贈の履行を受けたときに、その負担した義務の相手方が有する当該負担の利益を受けるべき請求権・・・遺贈の目的の価格を超えない限度で財団債権(破産法148条2項)。
(3)保全管理人が権限に基づいてした行為によって生じた請求権(破産法148条4項)。
(4)労働債権の一部 破産法149条1項2項
(5)
第1 財団債権となる労働債権
1 破産法149条
1号 破産手続開始前3月間の破産者の使用人に対する給料の請求権
2号 破産手続終了前に退職した破産者の使用人に対する退職手当の請求権のうち、退職前3か月間の給料の総額と破産手続開始前3か月間の給料の総額のいずれか多い額に相当する額
2 破産手続開始前3か月の給料
① 労働の対価として支払われるもの
② 賞与も含まれる。
支給日が破産手続開始前3か月間にに到来すること。
③ 解雇予告手当は含まれない。
財団債権に当たらず、優先的破産債権となる。
④ 3か月分ではなく、3か月内の労務提供に対応する給料である。
3 退職手当の一部
① 退職の時期は破産手続開始の前後を問わないが、破産手続終了前に退職した者が対象である。
② (a)「退職前3か月間の給料の総額」、(b)「破産手続開始前3か月間の給料の総額」
(a)(b)いずれか多い金額
破産の場合、(a)<(b)があり得るので、最低限、(b)を保障する趣旨である。
>「退職前3か月間の給料の総額」
4 財団債権に当たらない労働債権は、すべて優先的破産債権となる(破産法98条1項、民法306条二号・308条[雇用関係によって生じた債権の債権者は債務者(使用人)の総財産について一般の先取特権を有する。])。
第2 労働債権の弁済許可
1 給料の請求権等の弁済の許可(破産法101条)は、優先的破産債権である給料・退職手当について、労働者の生活の維持を図るべく、配当手続によらないで、破産管財人が裁判所の許可を得て弁済する制度である。
2 要件
① 優先的破産債権に当たる給料の請求権又は退職手当の請求権であること
② 債権者が当該債権について届出をしたこと
③ 債権者が当該優先的破産債権の弁済を受けなければ、その生活の維持を図るのに困難を生じるおそれがあること
④ その弁済により財団債権又は他の先順位若しくは同順位の優先的破産債権を有する者の利益を害するおそれがないこと
⑤ 破産管財人による申立て又は裁判所の職権で、裁判所が許可をし、破産管財人が行う。労働者は申立て権者ではない。
第3 労働者健康安全機構による立替払い
1 国が、事業主の倒産時に、賃金の支払いを受けることができないまま退職した労働者に対し、事業主に代わって、一部を立て替えて支払う制度である。賃金の支払の確保等に関する法律に基づく。独立行政法人労働者健康安全機構が実施機関である。
2 事業主の要件・労働者の要件・倒産
(1)事業主の要件
① 労災保険の適用事業の事業主(法人・個人)
② 1年以上事業活動
(2)労働者の要件
① 労基法9条の労働者に当たること。
② 退職日が、
下記(a)又は(b)の6か月前の日
~
2年間
(a)法律上の倒産の場合
裁判所に対する破産手続開始等の申立日
→ 退職日(解雇日)から6か月以上経過して破産申立てがされた場合、労働者は立替払いを受けることができない。
(b)事実上の倒産(下記(3)②)の場合
労働基準監督署長に対する認定申請日)
(3)倒産
① 破産手続開始決定等法律上の倒産
② 中小企業事業主(※)については、企業が事実上の倒産すなわち事業活動が停止して再開する見込みがない、かつ、賃金支払能力がないことついて労働基準監督署長の認定があった場合も可能である。
※ 中小企業事業主
サービス業の場合
資本の額又は出資の総額:5千万以下の法人
常時使用する労働者の数:100人以下
□ 小売業の場合
資本の額又は出資の総額:5千万以下の法人
常時使用する労働者の数:50人以下
□ 卸売業の場合
資本の額又は出資の総額:1億円以下の法人
常時使用する労働者の数:100人以下
□ 一般産業(上記以外)の場合
資本の額又は出資の総額:3億円以下の法人
常時使用する労働者の数:300人以下
3 立替払いの請求ができる期間
下記(a)又は(b)の翌日から起算して2年以内に、未払賃金の立替払請求書を労働者健康安全機構に提出すること。
(a)法律の倒産
裁判所の破産手続開始決定日等
(b)事実上の倒産
労働基準監督署長の認定日
4 立替払いの対象となる未払賃金
① 退職日の6か月前の日から立替払いの請求日の前日までの間に支払期日が到来している定期賃金(毎月の給料等)及び退職手当(労働契約・就業規則等に基づき支払われる退職金)
② 未払賃金総額の80/100
退職日における年齢による限度額である。
45歳以上
未払賃金総額の限度額:370万円
立替払の上限額 :296万円
30歳以上45歳未満
未払賃金総額の限度額:220万円
立替払の上限額 :176万円
30歳未満
未払賃金総額の限度額:110万円
立替払の上限額 : 88万円
詳細は、独立行政法人労働者健康安全機構のHPをご覧下さい。
【参考・参照文献】
下記文献を参考・参照して作成しました。
① 森純子ほか編・はい6民です お答えします(倒産実務Q&A)(2015年 大阪弁護士協同組合)頁
② 川畑正文ほか編・(第3版)破産管財手続の運用と書式(2020年、新日本法規)209頁、232頁
③ 全国倒産処理弁護士ネットワーク編・破産実務Q&A220問(2019年、金融財政事情研究会)頁
④ 加藤哲夫 破産法(第5版)(平成21年、弘文堂)