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相続 特別の寄与

民法第5編 相続
第10章 特別の寄与

○ 第1050条(特別の寄与)(平成30年改正により新設)

1項 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。

2項 前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。

 ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6箇月を経過したとき、

 又は

 相続開始の時から1年を経過したときは、

この限りでない。

3項 前項本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。

4項 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価格から遺贈の価格を控除した残額を超えることができない。

5項 相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に第900条から第902条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する。

 

第1 総説

1 被相続人に対し無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者(特別寄与者)に対し相続人に対する寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払請求権を認めて、相続人・特別寄与者間の実質的な公平を図る制度である。

 平成30年改正前においては、寄与分は、相続人にのみ認められる制度であるため、相続人でない者の寄与については適用されない。例えば、相続人(子)の配偶者(妻)が被相続人(子の父)の療養看護をして被相続人の財産の維持が図られた場合、相続人の寄与分において相続人の配偶者の寄与を考慮する方法もある得る(「履行補助者」構成、東京高決平成22年9月13日)が、理論的に正しいとはいえず、また、子が父よりも先に死亡した場合には対応できない等の限界があった。

 これを受けて、改正法は、相続人以外の親族の特別の寄与に対応する制度を新設した。

 なお、改正法は、上記履行補助者構成を否定するものではなく、特別の寄与制度対象外である者・期間制限外である場合について、これを維持する実益がある(文献④459頁)。

2 施行日である令和元年7月1日以後に開始された相続について、適用される(附則2条)。

3 特別寄与料請求権の法的性質

 要件充足によって未確定の権利は生じ、具体的な権利は協議又は審判によって形成される。

 

 

第2 要件

1 被相続人の親族(民法725条)

(1)内縁の配偶者 ×  同性のパートナー ×

(2)基準時は、被相続人の相続開始時である。

(3)下記の者に該当しないこと

 ① 相続人 

 ② 相続放棄者

 ③ 相続欠格・廃除によって相続権を失った者

2 無償で療養看護その他の労務の提供をしたこと

 労務の提供に限定され、被相続人に対する財産上の給付は該当しない。→ 主な類型は、療養看護型、家事従事型

3 被相続人の財産の維持又は増加

4 2と3の因果関係

5 特別の寄与をしたこと。

  特別寄与者=非相続人、被相続人に対し扶養義務を負わない者も含まれる。

→ 特別の寄与とは、

 被相続人と相続人の身分関係に基づいて通常期待される

程度の貢献を超える高度なもの(寄与分)ではなく、

 その者の貢献に報いるのが相当と認められる程度の顕著な貢献

 

第3 権利行使期間等

1 家庭裁判所に対する調停・審判の申立て

① 特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6箇月以内 及び② 相続開始の時から1年以内(本条2項)

 ①②は、除斥期間である。

2 相続人が複数いる場合、特別寄与者は、その選択に従い、一人又は数人に対して特別寄与料の支払いを請求できる。

 

第4 特別寄与料の額

1 特別寄与料の額の上限

 「被相続人が相続開始の時において有した財産の価格」-「遺贈の価格」(本条4項)

 

※ 寄与分額の上限(民法904条の2第3項)と同じ。

2 相続分に応じた負担

 特別寄与料 実質は相続財産が負担すべき性質

→ 相続人が複数いる場合、特別寄与料の額は、【計算式】特別寄与料の総額 × その相続人の相続分(本条5項)

3 特別寄与料の算定方法

(1)家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。 (本条3項)

 一切の事情:相続債務の額(※)、被相続人による遺言の内容、各相続人の遺留分、特別寄与者が生前に受けた利益(対価性を有するものを除く。)等

 

※ 相続財産が債務超過であることは、特別寄与料の請求を否定する方向に働く。

4 療養看護型の場合

 被相続人が要介護度2以上の状態にあることが目安。

 例えば、

 特別寄与料=介護報酬相当額×療養介護の日数×裁量割合(0.7を平均的な数値とし、0.5~0.8の幅)                                           

第5 手続

1 まずは、当事者間の協議

2 調停手続

  家事事件手続法244条

(1)管轄

  下記①又は②

① 相手方の相続人の住所地を管轄する家庭裁判所

② 当事者が合意で定める家庭裁判所

  家事事件手続法245条

(2)併合

 法律上併合審理は強制されないが、特別寄与事件と、遺産分割事件又は他の相続人に対する特別寄与事件とを併合することは考えられる。

(3)当事者

① 申立人

  被相続人の親族(第2,1)

② 相手方

  被相続人の相続人、相続分譲受人、包括受遺者

 

3 当事者間の協議が不成立の場合又はできない場合

  家庭裁判所の審判

   → 家事事件手続法216条の2~216条の5

 

☆ 家事事件手続法

第2編 家事審判に関する手続

第18節の2 特別の寄与に関する審判事件

(第216条の2~第216条の5)

 

(管轄)

第216条の2 

特別の寄与に関する処分の審判事件は、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。

 

(給付命令)

第216条の3 家庭裁判所は、特別の寄与に関する処分の審判において、当事者に対し、金銭の支払を命ずることができる。

 

○(即時抗告)

第216条の4 次の各号に掲げる審判に対しては、当該各号に定める者は、即時抗告をすることができる。

一 特別の寄与に関する処分の審判 申立人及び相手方

二 特別の寄与に関する処分の申立てを却下する審判 申立人

 

(特別の寄与に関する審判事件を本案とする保全処分)

第216条の5 家庭裁判所(第百五条第二項の場合にあっては、高等裁判所)は、特別の寄与に関する処分についての審判又は調停の申立てがあった場合において、強制執行を保全し、又は申立人の急迫の危険を防止するため必要があるときは、当該申立てをした者の申立てにより、特別の寄与に関する処分の審判を本案とする仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができる。

【参考・参照文献】

 このページは、以下の文献を参考・参照して作成しました。

① 片岡武・管野眞一著 改正相続法と家庭裁判所の実務(2019年、日本加除出版 )161頁

② 東京家庭裁判所家事第5部編著・東京家庭裁判所家事第5部(遺産分割部)における相続法改正を踏まえた新たな実務運用(2019年、日本加除出版)114頁

③ 潮見佳男 詳解相続法第2版(2022年、弘文堂)454頁

④ 松岡久和・中田邦博編 新・コンメンタール民法(家族法)(2021年、日本評論社)459頁

 

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