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○ 民法1022条(遺言の撤回)
遺言は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
1 遺言は、遺言者の最終意思を表す法律行為(単独行為)であり、要式行為である。
2 遺言者の最終意思を表す機会を保障するために、遺言者は、遺言を自由に撤回できる。文献④【CASE529】
撤回の方式は、後日の紛争を避けることを企図し、撤回の意思表示の真意性と明確性を確保するため、(撤回行為自体は遺言でないが)遺言の方式による(文献④526頁)。文献④【CASE531】
3 当初の遺言の方式と撤回遺言の方式は異なってもよい。文献④【CASE532】
(例)前者:公正証書遺言 後者:自筆証書遺言
文献④【CASE529】
○ 民法1023条(前の遺言と後の遺言との抵触等)
1項 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2項 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。
1 本条は、遺言の撤回について、意思表示によるもののほか、遺言者の行為により遺言が撤回されたものと評価される場合を、遺言の撤回とみなす(擬制撤回)とした。
2 抵触遺言(本条1項)
抵触する遺言による、撤回とみなされる場合
3 抵触行為(本条2項)
抵触する生前処分等による、撤回とみなされる場合
4 抵触
(1)抵触の意義
① 後の遺言又は生前処分等により、前の遺言の執行が不能となる場合
(例)唯一の遺産である不動産について、相続人甲に相続させると遺言した後(前の遺言)、相続人乙に相続させると遺言した(後の遺言)。文献④【CASE533】
② 後の行為が前の遺言と両立しない趣旨でされたことが明白な場合
(2)抵触の範囲
解釈により決する。文献④【CASE534】
○ 民法1024条(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。
遺言書が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。
最高裁判所(第二小法廷)平成27年11月20日判決(判例タイムズ1421号105頁)は、次のとおり判示しました。
[事案]
医院を経営していたAは、昭和61年6月、罫線を印刷された1枚の用紙に、Aの遺産の大半を長男Yに相続させる旨の自筆証書遺言を作成した。Aは、平成14年5月に死亡した。その後、Aの自宅に隣接する倉庫から、封筒に入れられた本件遺言書(但し、封筒の上部は切られていた)が発見されたが、本件遺言書に、斜線が赤色ボールペンで遺言書の文面全体の左上ら右下にかけて引かれていた(※)。本件遺言書が有効であるか否かをめぐり、Yと、Aの長女との間で係争となった。
※ 裁判所は、本件斜線を引いた者はAであると認定した。
[判決要旨]
その行為の一般的な意味に照らして、本件遺言書の全全体を不要のものとし、そこに記載された遺言の全ての効力を失わせる意思の表れとみるのが相当であり、民法1024条前段所定の「故意に遺言書を破棄されたとき」に該当する。
[コメント]
元の文字が判読できる状態であっても、Aのとった行為の意味合いから考えて、民法9688条2項の変更の問題ではなく、民法1024条前段の故意破棄の問題として取り扱ったものである。
○ 民法1025条(撤回された遺言の効力)
前三条の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。
ただし、この行為が錯誤、詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。(平成30年改正)
1 本文
【旧遺言】←【旧遺言を撤回する旨の新遺言等】←<撤回>
旧遺言は復活しない(非復活主義)。
← 遺言の最終意思の尊重
2 ただし書き
錯誤、詐欺・強迫に基づく取消し
旧遺言は復活する(復活主義)。
← 旧遺言の効力を維持するのが遺言者の意思
3 平成30年改正
平成29年改正により、錯誤について、無効→取消し
この変更を受けて、ただし書き(復活主義)に錯誤取消しが付加された。
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旧1025条(撤回された遺言の効力)
前三条の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。
ただし、この行為が詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。
○ 民法1026条(遺言の撤回権の放棄の禁止)
遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができない。
本条は、遺言者の有する遺言撤回権を放棄できないものとすることにより、遺言者の最終意思を尊重するため、遺言者の遺言撤回の自由を保障するものである。
文献④【530】
○ 民法1027条(負担付遺贈に係る遺言の取消し)
負担付遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行を催告することができる。
この場合において、その期間内に履行がないときは、その負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
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【参考・参照文献】
下記文献を参考・参照して作成しました。
① 中込一洋・実務解説改正相続法(2019年、弘文堂)
② 潮見佳男編著・民法(相続関係)改正法の概要(2019年、金融財政事情研究会)57頁(冷水登紀代)
③ 常岡史子・家族法(2020年、新世社) 487頁
④ 潮見佳男 詳解相続法第2版(2022年、弘文堂)525頁
⑤ 本山敦編 逐条ガイド相続法(2022年、日本加除出版)376頁