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労働基準法上の労働者の人権保護規定 その2

賠償予定の禁止(労働基準法16条)

○ 労働基準法16条(賠償予定の禁止)

 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

[コメント]

1 使用者が労働者が労働契約の不履行により生じる損害について予め違約金を定めたり、損害賠償額を予定する契約を締結することは、民法では有効であるが(民法420条)、これを認めると、労働者が使用者から高額の違約金や損害賠償金の支払いを請求されることをおそれて、やむを得ず仕事が辞められずその使用者の下で就労せざるを得なくなる結果をもたらすおそれがある。このような労働者の足かせとなる定めを禁止し、不当な労働への拘束からの解放・自由を保障したものである。

2 労働者が労働契約の不履行により使用者に損害を与えた場合、使用者が労働者に対し損害賠償請求することは妨げられない。しかし、その制限はある。→ 使用者の労働者に対する損害賠償請求の制限の法理

3 御礼奉公

 典型的な場合は、例えば、美容院において、一定期間の見習いを経て一人前となった後、○年間は勤務するものとし、これに違反した場合は、見習い期間に使用者が支出した見習い育成のための費用を支払う契約である。

4 研修・留学費用の返還

 近年では、使用者が労働者の能力向上のため労働者に研修参加や留学をさせて、その費用は使用が負担するが、研修・留学後すぐに辞められては使用者の目的達成上困るので、その足止めを図るため、例えば、研修・留学後5年間継続勤務した場合は費用の使用者への返還を免除する、それを満たさない場合、労働者は使用者へ費用を返還することを義務付ける。

 このような定めが労基法16条の賠償予定の禁止に当たらないか。

   3の御礼奉公でいう費用は、本来は、使用者が負担すべき業務費であり、それを労働者に負担させることは理由のないものであり、それを違約金・賠償予定の形式により労働者を心理的に拘束することは、労基法16条に違反することは明白である。

 ところが、本来は、労働者が負担すべき費用であれば、費用を立て替えた使用者が一定の条件を満たせば労働者の返還義務を免除し、そうでない場合は原則どおり労働者に返還してもらうというのは、労働契約(の不履行についての違約金・損害賠償金)とは関連するが理論的には別の契約(立替払契約又は金銭消費貸借契約)についての返還義務についての取り決めであるので、直ちに違法に当たるとまでいえないように思われる。

 しかしながら、許容される場合と労基法16条違反に当たる典型的な場合との区別が難しい。

 この点について、土田教授は、次の諸点から、個別的に判断すべきとする(土田87頁)。

① 留学・研修後の勤務期間の長短

→ 期間が長い程、労基法16条違反を肯定する要素となる。

② 返済免除の範囲・基準の明確さ

→ 不明確であれば、労基法16条違反を肯定する要素となる。

③ 研修の業務性の有無・程度

→ 業務との関連性が強い程、労基法16条違反を肯定する要素となる。

④ 労働者本人にとっての利益の有無

→ 労働者のキャリア形成の有益であれば、労基法16条違反を否定する要素となる。

⑤ 研修・留学についての労働者の自由意思の有無

→ 業務命令であれば労働者16条違反を肯定する要素に、労働者の自由意思に委ねられるのであれば労基法16条違反を否定する要素となる。

 

 

【参考参照文献】

菅野和夫・労基法第11版補正版234頁、土田道夫・労働契約法第2版85頁、西谷敏・野田進・和田肇編「新基本法コンメンタール労働基準法・労働契約法」55頁

 

 

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