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使用者の労働者に対する損害賠償請求の制限
労働者の使用者に対する求償

使用者の労働者に対する損害賠償請求の制限の法理

  労働者が誠実に労働義務を果たしていても、時として、ミスにより、使用者に損害を与えることがある。この場合、労働者が、使用者に与えた損害の全額を賠償しなければならないとすると、使用者の損害は莫大な金額となることもあるから、労働者の財産や生活を奪いかねない結果となるおそれがある。

 そこで、裁判所は、係争事件を通じて、「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において」のみ、労働者に対し損害賠償請求又は求償請求できるとし、信義則(民法1条2項)に依拠する責任制限法理を形成した。

 

茨城石炭商事(株)((株)茨石)事件
最高裁(第一小法廷)昭和51年7月8日判決
(判例タイムズ340号157頁)
 

 

【事案】

 X会社に勤務する従業員Yが重油を満載したタンクローリーを運転中に追突事故(本件事故)を起こした。本件事故の損害賠償して、Xは、被追突車両の所有者Aに対し7万円余りを支払った。XはYに対し、① Aに対し支払った7万円、及び② タンクローリーの修理費及び休車損害の損害を被ったと主張し33万円余りの支払請求に及んだ。法律構成は、①が民法715条3項による求償、②が民法709条による損害賠償請求である。

【判決要旨】

 使用者が業務用車両を多数保有しながら対物賠償責任保険及び車両保険に加入せず、また、本件事故はYが特命により臨時的に乗車中に生じたものであり、Yの勤務成績は普通以上である等の判示の事実関係のもとでは、使用者は、信義則上、本件損害のうち4分の1を限度として、Yに対し、賠償及び求償をしうるに過ぎない。

 

福山通運事件
最高裁(第二小法廷)令和2年2月28日判決

【事案】

① Xは、Y社にトラック運転手として勤務していたところ、業務トラックを運転中、交通事故を起こし、Aを死亡させた。Y社が業務で使用するトラックには任意保険が付保されていなかった。

② Aの相続人CはY社に損害賠償請求訴訟を提起し、その後、C・Y社間で訴訟上の和解が成立し、Y社はCに対し同和解に基づき1300万円を支払った。

③ Aの相続人BはXに損害賠償請求訴訟を提起し、その後、Xに1383万円余り及び遅延損害金の支払いを命ずる判決が確定した。その後、Xは、Bを被供託者として、1552万円余りを弁済供託した。

④ XはY社に対し、逆求償権があると主張して、③の弁済供託額の支払いを求めて提訴した(本訴)。Y社はXに対し、求償権があると主張して、②の支払額の支払いを求めて提訴した(反訴)。

 

【判決要旨】

 原判決破棄(反訴請求部分)、差戻し

(Xの本訴請求について)

① 使用者責任(民法715条)の趣旨

 使用者が被用者の活動によって利益を上げる関係にあることや、自己の事業範囲を拡張して第三者に損害を生じさせる危険を増大させていることに着目し、損害の公平な分担という見地から、その事業の執行について被用者が第三者に加えた損害を使用者に負担させることにとしたものである。

② 使用者の被用者に対する損害の負担

 ①の趣旨からすると、使用者は、その事業の執行により損害を被った第三者に対する関係において損害賠償義務を負うのみならず、被用者との関係においても、損害の全部又は一部について負担すべき場合があると解すべきである。

③ 使用者の被用者に対する求償権の制限との関係

  使用者が第三者に対して使用者責任に基づく損害賠償義務を履行した場合には、使用者は、その事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防又は損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し求償することができると解すべき(最判昭和51年7月8日)。

 この「使用者の被用者に対する求償権行使の場合」と「被用者が第三者の被った損害を賠償した場合」とで、使用者の損害の負担について異なる結果となることは相当でない。

④ 結論

 被用者が使用者の業務の執行について第三者に損害を加え、その損害を賠償した場合には、被用者は、上記諸般の事情に照らして、損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について、使用者に対して求償することができるものと解すべきである。

 

【参考・参照文献】

下記文献を参考・参照して作成しました。

① 水町勇一郎・ジュリスト1543号4頁

② 田中洋・法学教室477号141頁 

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