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目黒電報電話局事件
最高裁第三小法廷昭和52年12月13日判決

【事案】

 Xは、目黒電報電話局(Y)に勤務していたが、

① 昭和42年6月、「ベトナム侵略反対、米軍立川基地拡張反対」と書いたプレーしを着用して勤務した(約1週間)(本件プレート着用行為)。

② 局長らYの管理職から、同プレートを取り外すよう命令を受けたが、これに従わなかった。

③ 休憩時間中、上記取外し命令の不当性を訴えて、「職場のみなさまへの訴え」と題するビラ数十枚を、休憩室及び食堂で職員に対し交付又は机上配布した(本件ビラ配布行為)。

 

Yは、Xの上記①ないし③の行為について、

①の行為が、職員は、局所内において、選挙運動その他の政治活動をしてはならないとする就業規則5条7項に違反し、「同5条の規定に違反したとき」(就業規則59条18号の懲戒事由)に該当し、

②の行為が、「上長の命令に従わないとき」(就業規則59条3号の懲戒事由)に該当し、

③の行為が、「職員は、局所内において、演説、集会、貼紙、提示、ビラの配布その他これに類する行為をしようするときには、事前に別に定めるその局所の管理責任者の許可を受けなければならない」とする就業規則5条6項に違反し、上記就業規則59条18号所定の懲戒事由に該当する

として、譴責処分にした。

 懲戒処分の有効性が争点となり、審及び原審は懲戒処分を無効とした。

【裁判所の判断】

 結論として、本件懲戒処分を有効とした。

1 企業内の政治活動について

 企業においては、元来、職場は業務遂行のための場であって政治活動その他従業員の私的活動のための場所ではないから、従業員は職場内において当然には政治活動をする権利を有するというわけのものでないばかりではなく、

 職場内における従業員の政治活動は、従業員相互間の政治的対立ないし抗争を生じさせるおそれがあり、また、それが使用者の管理する企業施設を利用して行われるものである以上、その管理を妨げるおそれがあり、

 しかも、それを就業時間中に行う従業員がある場合にはその労務提供義務に違反するにとどまらず他の従業員の業務遂行をも妨げるおそれがあり、また、就業時間外であっても休憩時間中に行われる場合には他の従業員の休憩時間の自由利用を妨げ、ひいてはその後における作業能率を低下させるおそれのあることなど、企業秩序の維持に支障をきたすおそれが強いものといわなければならない。

 したがって、一般私企業の使用者が企業秩序維持の見地から、就業規則により職場内における政治活動を禁止することは、合理的な定めとして許されるべきである。

2 本件プレート着用行為に対する懲戒処分について

(1)Xの①の行為(本件プレート着用行為)は、就業規則5条7項に違反する。

(2)就業規則5条7項は、局所内の秩序風紀の維持を目的としたものであることにかんがみ、形式的に同規定に違反するようにみえる場合であっても、実質的に局所内の秩序風紀を乱すおそれのない特別の事情が認められるときには、同規定の違反になるとはいえないと解するのが相当である。

   公社法34条2項は、「職員は、全力を挙げてその職務の遂行に専念しなければならない」旨を規定しているのであるが、これは職員がその勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職務遂行のために用い職務にのみ従事しなければならないことを意味するものであり、同規定の違反が成立するためには現実に職務の遂行が阻害されるなど実害の発生を必ずしも要件とするものではないと解すべきである。

 Xの勤務時間中における本件プレート着用行為は、職場の同僚に対する訴えかけという性質をもち、それ自体、公社職員としての職務の遂行に直接関係のない行動を勤務時間中に行ったものであって、身体活動の面だけからみれば作業の遂行に特段の支障が生じなかったとしても、精神的活動の面からみれば、注意力のすべてが職務の遂行に向けられなかったものと解されるから、職務上の注意力の全てを職務遂行のために用い職務にのみ従事すべき義務に違反し、職務に専念すべき局所内の規律秩序を乱すものであった。同時にまた、勤務時間中に本件プレートを着用し同僚に訴えかけるというXの行為は、他の職員の注意力を散漫にし、あるいは職場内に特殊な雰囲気をかもし出し、よって他の職員がその注意力を職務に集中することを妨げるおそれのあるのものであるから、この面からも局所内の秩序維持に反するものであった。

→ Xの①の行為(本件プレート着用行為)は、実質的にみても、局所内の秩序を乱すものであり、就業規則5条7項に違反し59条18号の懲戒事由に該当する。

→ 本件プレートを取り外し命令も適法であり、これに従わなかったXの行為は就業規則59条3号の懲戒事由に該当する。

3 本件ビラ配布に対する懲戒処分について

(1)本件ビラ配布行為は、形式的には、就業規則5条6項に違反する。

(2)同規定は、局所内の秩序風紀の維持を目的としたものであるから、形式的に同規定に違反するようにみえる場合でも、ビラの配布が局所内の秩序風紀を乱すおそれのない特別の事情が認められるときには、同規定の違反になるとはいえないと解するのを相当とする。

 本件ビラの配布、休憩時間を利用し、大部分は休憩室、食堂で平穏裡に行われたもので、その配布の態様についてはとりたてて問題にする点はなかったとしても、

 上司の適法な命令に抗議する目的でされた行動であり、その内容においても、上司の適法な命令に抗議し、また、局所内の政治活動、プレート着用等違法な行為をあおり、そそのかすことを含むものであって、職場の規律に反し局所内の秩序を乱すおそれのあったものであることは明らかである。

→ Xの③の行為(本件ビラ配布行為)は、実質的にみても、就業規則5条6項に違反し59条18号の懲戒事由に該当する。

 

【参考参照文献】

渡辺章・労働法講義上359頁、労働法判例百選(第6版)136頁(近藤昭雄)

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