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有期労働契約(その3)有期労働契約の更新等

○ 労働契約法19条(有期労働契約の更新等)

 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす

一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

 

1 労働契約法改正前の判例法理

   期間の定めのある労働契約(有期労働契約)により就労している労働者は、当該労働契約の期間が終了すれば、使用者との契約関係は終了します。たとえ、当初の労働契約終了後、使用者との間で再契約又は契約更新により契約関係が続くことがあっても、それは結果であって、契約自由の原則を有する使用者に再契約をする義務や契約更新をする義務を負いません。これが原則ですが、この原則を貫徹すると、有期労働契約により就労している労働者にとって酷な事態が生じます(例えば、契約期間1年の有期労働契約を9回更新して通算10年間就労している労働者が、10回目の更新の際、使用者が何の理由もなく更新しなかった場合)ので、使用者の契約自由の原則を制限しても、原則を修正し、労働者を保護すべき場面があります。

 このような問題意識から、判例は、有期労働契約の更新拒絶を制限し労働者の雇用保障を図る法理を発展させてきました。

① 東芝柳町工場事件・最高裁(第一小法廷)昭和49年7月22日判決

【事案】

 使用者Y会社から、採用の際、「2か月の期間が満了しても真面目に働いていれば解雇されることはない。安心して長く働いて欲しい。」等と長期継続雇用・本工への登用を期待させる事を言われて、雇用期間2か月の基幹臨時工として採用され、職務は本工と同じであり、その後、5回から23回、簡単な手続で(手続は形骸化していた)契約が更新された。基幹臨時工は昭和37年当時、Yの総工員数の約3割を占めていた。2か月間の期間満了により雇止めされた基幹臨時工はおらず、自主退職者以外は長期雇用されている実態があった。

 昭和35年11月から昭和38年5月にかけて勤務成績不良等を理由として雇止め(更新拒絶)の措置を受けたXらは、Y会社に対し、労働契約存在確認を請求した。

【判旨】

① 原審(労働者7名のうち6名の請求を認容した)の次の事実認定は正しい。本件労働契約は、期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していた。雇止めの意思表示は、実質的に解雇の意思表示に当たり、解雇に関する法理を類推適用すべき。

② 本件労働契約が実質的に期間の定めのない契約と異ならない状態であったこと、Y会社における基幹臨時工の採用、雇止めの実態、その作業内容、Xらの採用時及びその後におけるXらに対するY会社側の言動に鑑みると、本件労働契約において、単に期間が満了したという理由だけではY会社において雇止めをせず、Xらもこれを期待、信頼し、このような相互関係のもとに労働契約関係が存続、維持されたきたものというべきである。

③ 経済事情の変動により余剰人員が生じる等Y会社において従来の取扱いを変更することがやむを得ないと認められる特段の事情が存在しない限り、期間満了を理由として雇止めすることは、信義則上からも許されない。

② 日立メディコ事件・最高裁(第一小法廷)昭和61年12月4日判決

③ パナソニックプラズマディスプレイ(パスコ)事件・最高裁(第二小法廷)平成21年12月18日判決

 

2 有期労働契約のタイプ

有期労働契約のタイプ
ネーミング 内容 解雇権濫用法理が類推適用されるか。
純粋有期契約タイプ 契約期間の満了により当然に契約関係が終了する。 ×
実質無期契約タイプ 契約の反復更新によって実質的に期間の定めのない契約となっている。 ○ 東芝柳町工場事件
期待保護タイプ 更新手続が厳格に行われ、期間の定めのない契約と同視できないが、雇用継続の合理的期待が認められる場合 ○ 日立メディコ事件

3 判例による雇止めの法的規制

(1)2段階の審査

 まず、解雇権濫用法理が類推適用されるか契約に当たるか否かについて審査がなされ(第1段階の審査)、

 次に、解雇権濫用法理が類推適用される契約に当たる場合、雇止めに合理的理由があるか否かについて審査がなされる(第2段階の審査)。

 日立メディコ事件最高判決は、第1段階の審査について解雇権濫用法理を類推適用したが、第2段階の審査について雇止めを有効とした事例である。

(2)第1段階の審査において考慮される事情

① 職務内容・勤務実態

  正社員・常用に近い程 → 類推を肯定する方向

  臨時的性格 → 類推を否定する方向

② 契約締結・更新の状況

  有無・回数・勤続年数が多い → 類推を肯定する方向

  有無・回数・勤続年数が少ない→ 類推を否定する方向

③ 更新手続の態様

  厳格 → 類推を肯定する方向

  簡素 → 類推を否定する方向

④ 雇用継続を期待させる使用者の言動

  有り → 類推を肯定する方向

  無し → 類推を否定する方向

⑤ その他

 

4 労働契約法の改正

   以上の判例の展開を受けて、平成24年の労働契約法改正法は、反復更新される労働契約のうち、

実質無期契約タイプ(一号)及び

期待保護タイプ(二号)について、

所定の期間内に労働者の更新の申込みがあったことを要件とし、同申込みに対する使用者の承諾を擬制することにより、

更新後の労働契約の成立を認める、実質法定更新制度(菅野329頁)を採用した。 

 

【参考・参照文献】西谷敏・野田進・和田肇編「新基本法コンメンタール労働基準法・労働契約法」423頁、菅野和夫・労働法第11版補正版326頁、土田道夫・労働契約法第2版763頁、渡辺章・労働法講義(下)431頁

福岡地方裁判所令和2年3月17日判決、無期転換申込権発生直前の雇止め適法性、博報堂事件

1 事案

昭和63年4月 

 Xは、大学卒業後、Y社に採用され入社した。契約形態は、1年間の雇用契約である。

その後 

 XY間で、雇用契約は29回に亘り更新された。

平成25年4月 

 有期契約の通算期間が5年を超える場合、契約を更新しないとする「最長5年ルール」の就業規則がXに適用されることになった。

平成29年2月

 Y→X 不更新条項付きの雇用契約書交付など

その後

 X→Y 契約書に署名捺印した後、提出

平成30年3月30日

 Y→X 契約終了を伝えた。

その後

 X→Y 雇用契約上の権利を有する地位確認、賃金支払等を求めて提訴

 

2 裁判所の判断

① 本件雇用契約書に署名捺印したからといって、雇用契約は合意によって終了したものと認めることはできず、Yは、契約満了日にXを雇い止めした。

② 平成25年以降、毎年、契約更新通知書を交付し面談を行うようになった等 → 無期雇用契約と同視することはやや困難 → 労働契約法19条1号には直ちには該当しない。

③ 入社~平成25年 形骸化した契約更新が繰り返された。この時点で、Xの契約更新に対する期待は相当高く、合理的理由に裏付けられたものである。

 平成25年~ Xを含めて適用される「最長5年ルール」は一定の例外も設けられている。

→ Xの更新期待は、労働契約法19条2号により保護されるべきである。

④ Xの雇止めには、雇止めを合理的であると認めるに足りる客観的な理由が必要である。

 本件では、その理由がない。

 

結論として、従前の契約を更新した有期労働契約としての地位が確認された。

 

【参考・参照文献】

 水町勇一郎・法学教室1548号98頁

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