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一定期間経過後の遺産分割

民法第5編 相続
第3章 相続の効力
第2節 相続分

〇 民法904条の3 (期間経過後の遺産の分割における相続分)[令和3年改正]

 前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。 

 一 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。 

 二 相続開始の時から始まる十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

1 趣旨(村松・大谷Q89・245頁) 

 令和3年民法改正により、民法904条の3が新設された。

 遺産分割を促進する観点から、相続開始時から10年経過後にする遺産分割については、原則として、特別受益に関する規定(民法903条)及び寄与分(民法904条の2)は適用されず、これらにより法定相続分を修正した具体的相続分による遺産分割を行わない制度が採用された。

 

 具体的相続分による分割の利益は一定期間経過により消滅する。

 それにより、

① 利益を求める者による早期の請求を期待できる。

② 一定期間経過後は、法定相続分・指定相続分の割合による遺産分割をする。→協議・裁判により遺産分割することが容易になる。

潮見【CASE303】

 

2 例外

 904条ただし書

[1号]相続開始の時から10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

潮見【CASE304】

<注> (村松・大谷Q90・248頁)

① 家庭裁判所に対する遺産分割請求が10年経過前にされていれば、寄与分の請求(寄与分を定める処分の審判の申立て)は、相続開始時から10年を経過した後にされてもよい。なお、家事事件手続法193条。

② 特別受益主張・立証の時期も①と同様である。

③ 相続のいずれかが上記期間経過前に家庭裁判所に対し遺産分割請求すればよい。

→ 相続人甲が相続開始時から10年経過前に家庭裁判所に遺産分割請求をした場合、相続人乙は、相続開始時から10年経過後に、寄与分の請求をすることができるし、特別受益の主張・立証をすることができる。

 

 [2号]相続開始の時から始まる10年の期間の満了前6箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合

 その事由が消滅した時から6箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

潮見【CASE305】

<注>(村松・大谷Q90・249頁)

① やむを得ない事由の有無は、個々の相続人毎に判断される。

② 相続人の主観的事情だけ ×

  相続人において遺産分割請求することを期待することができない客観的な事情 ○

(例)

・ 相続開始から10年を経過する直前に遺産分割調停等の申立てが取り下げられた場合

・ 先順位相続人が相続開始後10年経過後に有効に相続放棄をした場合における、次順位相続人

③ やむを得ない事由は、法定の6か月以内の期間のいずれかの時点で存在していれば足りる。

3 施行日等

(1)施行日

   令和5年4月1日(改正法附則1条本文)

   村松・大谷Q146・386頁

(2)適用関係

 相続が施行日前に開始した遺産分割についても適用される。

(3)経過措置(附則3条)(村松・大谷Q150・393頁)

①②のいずれか遅い時

① 相続開始時から10年を経過する時

② 施行時から5年を経過する時

より後にする遺産分割については、原則として(例外は本条一号二号)、特別受益及び寄与分に関する規定は適用されなくなる。→ 施行日から少なくとも5年は、特別受益及び寄与分を反映した具体的相続分による遺産分割を行うことが認められる。

4 論点等

(1)相続人間の合意(村松・大谷Q90・250頁

 法定相続分・指定相続分によって分割した方が有利である者が、その利益を放棄して、具体的相続分による遺産分割することを合意した場合

(片岡・管野375頁)

① 合意の時期が相続開始時から10年経過後

  遺産分割協議における相続人間の合意で特別受益や寄与分を考慮することを禁止するものではない。

→ 合意がある場合、家庭裁判所は、合意に基づき、遺産分割の調停や審判をする。

② 合意の時期が相続開始時から10年経過前

 本条の趣旨を没却するため、合意の効力は認められない。 

〇 家事事件手続法199条2項(申立ての取下げの制限)

1項 第百五十三条の規定は、遺産の分割の審判の申立ての取下げについて準用する。

2項 第八十二条第二項の規定にかかわらず、遺産の分割の審判の申立ての取下げは、相続開始の時から十年を経過した後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。

〇 家事事件手続法(家事調停の申立ての取下げ)

1項 家事調停の申立ては、家事調停事件が終了するまで、その全部又は一部を取り下げることができる。

2項 前項の規定にかかわらず、遺産の分割の調停の申立ての取下げは、相続開始の時から十年を経過した後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。

3項 第八十二条第三項及び第四項並びに民事訴訟法第二百六十一条第三項及び第二百六十二条第一項の規定は、家事調停の申立ての取下げについて準用する。この場合において、第八十二条第三項中「前項ただし書、第百五十三条(第百九十九条第一項において準用する場合を含む。)及び第百九十九条第二項」とあるのは「第二百七十三条第二項」と、同法第二百六十一条第三項ただし書中「口頭弁論、弁論準備手続又は和解の期日(以下この章において「口頭弁論等の期日」という。)」とあるのは「家事調停の手続の期日」と読み替えるものとする。

<遺産分割の調停・審判の申立ての取下げ制限>

 

遺産分割の請求(調停・審判の申立て)の取下げ

相続開始時から10年経過後

相手方の同意を要する。

 相手方相続人が具体的相続分による遺産分割を求める機会を失うことになる不当な結果を避けるため。潮見【CASE306】

【参考・参照文献】

 このページは、以下の文献を参考・参照して作成しました。

◇ 片岡武・管野眞一編著「家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務」(第4版)287頁(略称:片岡・菅野)

◇ 島津一郎・松川正毅編「基本法コンメンタール(第5版)頁(略称:Kコンメ)

◇ 村松秀樹・大谷太編著 Q&A令和3年改正民法・改正不登法・相続土地国庫帰属法(2022年、きんざい)242頁以下(略称:村松・大谷)

◇ 潮見佳男 詳解相続法第2版(2022年、弘文堂)300頁(略称:潮見)

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