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      抵当権(その4)法定地上権

民法第2編 物権
第10章 抵当権
第2節 抵当権の効力

〇 民法388条(法定地上権)
 土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。
 この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。

1 はじめに

(1)法定地上権の意義

 抵当権の実行により土地の所有者と建物の所有者が異なる結果となった場合、法律(本条)の規定により、建物の存立のために、土地所有者と建物所有者との間で地上権が設定されたものとみなす。

(2)法定地上権の必要性 

① 日本では、土地と建物が別の不動産であり、よって、

(a)土地建物に抵当権を設定することのほか、

(b)土地のみに抵当権を設定すること、

(c)建物のみに抵当権を設定することも

できる。

② ①にもかかわらず、自己借地権の設定が認められておらず、抵当権設定時、抵当権設定者は建物のために土地に賃借権・借地権を設定することはできない。

③ ①②の結果、抵当権実行の結果、①(b)の場合、抵当権設定者は、土地の利用権原がないため建物を保持できない。また、①(c)の場合、買受人は、土地の利用権原がないため建物を保持できない。

 建物を取り毀さざるを得ない結果を招来し、社会経済的利益に反する。また、このような結果は、抵当権設定者の意思に反する。

            

2 成立要件(1)

抵当権設定時、土地の上に建物が存在すること(同時存在)

 登記上、このような状態であることが必要か?

 必要ない。(理由)抵当権の取得者は、担保価値評価のため、設定時に、地上建物が存在するという物理的状態を確認している。→登記がなくても、法定地上権の成立を認めたとしても、不測の損害はない。文献②358頁

【論点】更地に抵当権が設定された後に建物が築造された場合、その建物のために法定地上権が成立するか。

(結論)

① 成立しない。

② 抵当権者が、抵当権設定後に建物が築造されることを許諾し、法定地上権の成立を前提とした担保価値評価をしている場合でも、①の結論は変わらない。

(理由)

① 所有者は、更地として抵当権を設定したのであり、抵当権者に対し、抵当権設定後の築造した建物の存続のため、法定地上権の成立を主張できる立場にない。

② 抵当権者は、更地として土地の担保価値を評価している。それにもかかわらず、法定地上権の成立を認めると、競売価格が大幅に下落し、抵当権者が不測の損害を被る。

③ このような事案において建物の存立を図るために、一括競売の制度(民法389条)が用意されている。

④ 結論②について。競売の買受人は法定地上権が成立しないという前提で土地を買い受ける。それにもかかわらず、法定地上権の成立を認めると、買受人が不測の損害を被る。

【論点】建物の再築の事案

(事案)

  土地、建物(旧建物)存立で、土地のみに抵当権が設定

→ 旧建物 取り毀し

→ 新建物 築造

→ 抵当権実行

→ 新建物について法定地上権の成立を認めるか。

(結論)

判例(大判昭和10年8月10日)

①&②

① 法定地上権は成立する。

② 旧建物を基準とする。※1 ※2

(理由)

① 設定時における土地・建物の同時存在の要件は満たす。

② 抵当権者は、旧建物のための法定地上権の成立を前提として、土地の担保価値評価をしている。それにもかかわらず、新建物を基準として法定地上権の成立を認めると、「存続期間が長くなる→土地の負担が増大→土地の担保価値が下がる」という意味で、抵当権が不測の損害を被る。

 

※1 本来、目的物が滅失すれば、物権も消滅するというのが物権法の原則であるところ、もともと土地所有者は旧建物につき法定地上権が成立することを容認していたのであるから、新建物についても法定地上権を成立させてよい(容認解釈)。文献⑤191頁 

※2 最判昭和52年10月11日(抵当権者の利益を害しないと認められる特段の事情があるとして、新建物について法定地上権の成立を認めた。)の位置づけ

 文献②360頁

① 買受人の利益

  抵当権者の同意という主観的事情は分からない。

② 本件は、買受人が抵当権者であったという特殊事案である。

【論点】土地建物共同抵当で、建物再築の場合

(事案)

 所有者Aが債権者Gのために土地建物に共同抵当権を設定

 建物取り壊し

① AがHから融資を受け新建物を建築し、Hのために第1順位の抵当権を設定

② 土地一部を第三者に賃貸し、第三者が建物を建築する。

③ Aがバラックを建てて第三者に賃貸し、第三者が法定地上権を主張する。

 

 新建物について法定地上権が成立するとなると、法定地上権価格は新建物につき、土地価格は下落する。Gは、土地建物を共同抵当として担保価値を評価していたにもかかわらず、Gの利益を害する。また、執行妨害の手段として用いられることもある。

 

 判例(最判平成9年2月14日)-全体価値考慮説

(結論)

① 再築建物について法定地上権は成立しない。(原則)

② 再築建物に土地抵当権と同順位の共同抵当権が設定された場合は、法定地上権の成立を認める。

(理由)

① 土地・建物に共同抵当権が設定された場合、抵当権者は土地・建物全体の担保価値を把握している。

② 抵当権の設定された建物が存続する限りは、建物に法定地上権が成立することを許容する。

③ 建物が取り壊された場合、土地について法定地上権の制約のない更地として担保価値を把握しようとするのが、抵当権設定当事者の合理的意思である。

 

3  成立要件(2

  土地の所有者、建物の所有者が同一であること

4 成立要件(3)

  土地、建物について抵当権が設定されたこと

 文では1(b)、1(c)の場合に限定しているが、解釈により、1(a)の場合(※)も対象とされることに異論はない。

 

※ 土地建物双方に抵当権が設定され、一方だけが競売された。また、双方が競売された結果、買受人が別々であった。

5 成立要件(4)

 抵当権実行により、土地の所有権と建物の所有者が別になったこと

 

法文では1(2)(b)、1(2)(c)の場合に限定しているが、解釈により、1(2)(a)の場合(※)も対象とされることに異論はない。※ 土地建物双方に抵当権が設定され、一方だけが競売された。また、双方が競売された結果、買受人が別々であった。

7 効果

その建物について、地上権が設定されたものとみなす。」(民法388条)

〇 民法398条(抵当権の目的である地上権等の放棄)
 地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができない。

【参考・参照文献】

以下の文献を参考・参照して、このページを作成しました。

① 鎌田薫・松岡久和・松尾弘編、新基本法コンメンタール物権(令和元年、日本評論社)

② 安永政昭 講義物権・担保物権法第4版(2021年、有斐閣)356頁

③ 平野裕之・コア・テキスト民法Ⅱ物権法(第2版)(2018年、新世社) 

④ 潮見佳男 民法(全)第3版(2022年、有斐閣)228頁

⑤ 近江孝治 民法講義Ⅲ担保物権(第3版)(2020年、成文堂)263頁

⑥ 内田貴 民法Ⅲ 債権総論・担保物権第4版(2020年、東京大学出版会)513頁

 

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