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物権法 所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令、管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令

民法第2編 物権
第3章 所有権

第4節 所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令

1 所有者不明土地管理命令・所有者不明建物管理命令の意義 

 所有者不明土地管理命令・所有者不明建物管理命令は、令和3年改正により新設された、財産管理制度である。

2 所有者不明土地管理命令・所有者不明建物管理命令の趣旨

① 所有者不明土地がもたらす問題

ⅰ 近隣被害 ⅱ 資産の過少利用

② 不在者財産管理制度、相続財産管理制度は、所有者不明土地の問題は不十分であること

ⅰ 不在者財産管理制度(民法25条1項)、相続財産管理制度(現行民法952条1項)は、特定人の財産を管理する制度である。→土地の所有者が不明である場合は利用できない。

ⅱ 不在者財産管理制度、相続財産管理制度は、対象財産が所有者不明土地に限定されない。→制度利用のため、予納金(管理費用に充てられる)が高額になる場合もある。

ⅲ 不在者財産管理制度は、事件が長期化し、終了時点が見えにくい。→予納金の高額化

ⅳ 対象土地が複数の所在不明共有者である場合、当該共有者毎に管理人の選任が必要となる。

 

以上の課題への対策として、「所有者の特定を要せず、対象となる財産を限定し、終了を見やすい管理制度を設けることが望ましい。」(文献①50頁)

 

ⅱⅲⅳについて、費用効果の観点から合理性に乏しいとの指摘があった(文献②166頁)。

 

 令和3年改正法は、

① 現行の財産管理制度の課題(上記)を踏まえ、

② 所有者又はその所在を知ることができない土地又は建物の効率的かつ適切な管理を実現し、

③ ひいてはその円滑・適切な利用を図るため、

所有者不明土地管理制度&所有者不明建物管理を創設した。

(文献⑤167頁)

3 条文の配列・構造

民法第2編 物権

第3章 所有権

第4節 所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令

○ 法264条-枝番号

­­2 所有者不明土地管理命令

-3 所有者不明土地管理人の権限

­4 所有者不明土地等に関する訴えの取扱い

5 所有者不明土地管理人の義務

6 所有者不明土地管理人の解任及び辞任

7 所有者不明土地管理人の報酬等

8 所有者不明建物管理命令

 

文献①Q59

文献③No35「制度の趣旨と他制度との関係」

〇 民法264条の2 (所有者不明土地管理命令)[令和3年改正] 

1項 裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地(土地が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る土地又は共有持分を対象として、所有者不明土地管理人(第四項に規定する所有者不明土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「所有者不明土地管理命令」という。)をすることができる。 

2項 所有者不明土地管理命令の効力は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である土地)にある動産(当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地の所有者又は共有持分を有する者が所有するものに限る。)に及ぶ。 

3項 所有者不明土地管理命令は、所有者不明土地管理命令が発せられた後に当該所有者不明土地管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び当該所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。 

 4項 裁判所は、所有者不明土地管理命令をする場合には、当該所有者不明土地管理命令において、所有者不明土地管理人を選任しなければならない。

1 所有者不明土地管理命令の要件

① 土地の所有者(共有土地の場合は共有者)を知ることができないこと、又は土地の所有者(共有土地の場合は共有者)の所在を知ることができないこと。

② 命令の必要性

③ 利害関係人の地方裁判所に対する請求

 ②③ついて

ⅰ 土地の管理不全により不利益を被っている者

ⅱ 土地の時効取得を主張する者

ⅲ 土地を利用又は取得しようとする者

ⅳ 不在者財産管理命令の請求をすることができる者

  所有者不明土地管理制度の趣旨より、認めるべき。

  負担:総財産の管理 > 特定の土地の管理

ⅴ 土地の所有権移転登記請求権を有する者

  (文献②172頁)

ⅵ 国の行政機関の長又は地方公共団体の長は、所有者不明土地について、適切な管理のため特に必要があると認められるとき、利害関係の有無を問わず、請求できる(所有者不明土地特措法38条2項)(文献②172頁)

 

2 所有者不明土地管理命令の効力の及ぶ範囲

①②③を「所有者不明土地等」という(民法264条の3第1項)。

① 所有者不明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である土地)

② ①の土地(共有土地)にある動産に及ぶ。

 但し、対象土地の所有者又は共有者が所有するものに限り、第三者の所有する動産には及ばない。

 この点に関して、対象土地上に動産が放置されている場合で、当該動産の所有者が対象土地の所有者と同一であるか否か不明な場合、動産の所有者が所有権を放棄して、無主物となっているケースは考えられる(文献⑤176~177頁)。

③ ①②の管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産(売却代金等)。 

 

文献①Q62、63

文献③No36(所有者不明土地管理命令の発令要件)

 

〇 民法264条の3(所有者不明土地管理人の権限) [令和3年改正]

 1項 前条第四項の規定により所有者不明土地管理人が選任された場合には、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産(以下「所有者不明土地等」という。)の管理及び処分をする権利は、所有者不明土地管理人に専属する。   

 2項 所有者不明土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意の第三者に対抗することはできない。 

 一 保存行為

 二 所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為 

1 本条は、所有者不明土地管理人の権限を定めたものである。所有者不明土地管理人による職務の円滑な遂行を可能とすること(必要性)及び所在等不明な所有者が管理処分権を行使することは現実には考えにくいこと(許容性)から、対象財産の管理処分権を所有者不明土地管理人に専属させた(本条1項)。(文献⑤174~175頁)  

 

2 対象財産

①②③を「所有者不明土地等」という(民法264条の3第1項)

① 所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分② 所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産

③ 管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産

 

 土地上の建物は対象外である。このため、状況に応じて、別途、所有者不明建物管理命令が必要となる。

3 権限

(1)対象財産を管理又は処分する権限

① 管理人に専属する。

② 登記

③ 不在者財産管理人も、対象財産について管理・処分することができない。

④ 所有者が管理・処分権限を回復するためには、命令の取消しが必要となる。

(2)裁判所の許可の要否

① 不要

ⅰ 対象財産の保存行為

ⅱ 対象財産の性質を変えない範囲内の利用行為、改良行為

② 必要

①以外の行為=変更行為、処分行為

 所有者に与える影響が大きいため、裁判所の許可を要するとされた。

 裁判所の許可を得ないでした行為の効力 

 善意の第三者に対抗不可 本条2項ただし書

 

 

  

 

 

 

 

 〇 民法264の4 (所有者不明土地等に関する訴えの取扱い) [令和3年改正]

  所有者不明土地管理命令が発せられた場合には、所有者不明土地等に関する訴えについては、所有者不明土地管理人を原告又は被告とする。

 〇 民法264の5(所有者不明土地管理人の義務)[令和3年改正] 

1項 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。 

2項 数人の者の共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられたときは、所有者不明土地管理人は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。 

〇 民法264の6(所有者不明土地管理人の解任及び辞任)[令和3年改正] 

 1項 所有者不明土地管理人がその任務に違反して所有者不明土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、所有者不明土地管理人を解任することができる。   

 2項 所有者不明土地管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。

 〇 民法264の7(所有者不明土地管理人の報酬等) 

1項 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。   

 2項 所有者不明土地管理人による所有者不明土地等の管理に必要な費用及び報酬は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)の負担とする。

 〇 民法264の8 (所有者不明建物管理命令) 

 1項 裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物(建物が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る建物又は共有持分を対象として、所有者不明建物管理人(第四項に規定する所有者不明建物管理人をいう。以下この条において同じ。)による管理を命ずる処分(以下この条において「所有者不明建物管理命令」という。)をすることができる。 

2項 所有者不明建物管理命令の効力は、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物(共有持分を対象として所有者不明建物管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である建物)にある動産(当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物の所有者又は共有持分を有する者が所有するものに限る。)及び当該建物を所有し、又は当該建物の共有持分を有するための建物の敷地に関する権利(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(所有権を除く。)であって、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物の所有者又は共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。 

3項 所有者不明建物管理命令は、所有者不明建物管理命令が発せられた後に当該所有者不明建物管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物又は共有持分並びに当該所有者不明建物管理命令の効力が及ぶ動産及び建物の敷地に関する権利の管理、処分その他の事由により所有者不明建物管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。 

4項 裁判所は、所有者不明建物管理命令をする場合には、当該所有者不明建物管理命令において、所有者不明建物管理人を選任しなければならない。 

5項 第264条の3から前条までの規定は、所有者不明建物管理命令及び所有者不明建物管理人について準用する。

第5節 管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令

〇 民法264の9 (管理不全土地管理命令) 

 1項 裁判所は、所有者による土地の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該土地を対象として、管理不全土地管理人(第三項に規定する管理不全土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「管理不全土地管理命令」という。)をすることができる。   

 2項 管理不全土地管理命令の効力は、当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地にある動産(当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)に及ぶ。   

 3項 裁判所は、管理不全土地管理命令をする場合には、当該管理不全土地管理命令において、管理不全土地管理人を選任しなければならない。

〇 民法264の10 (管理不全土地管理人の権限) 

1項 管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地及び管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により管理不全土地管理人が得た財産(以下「管理不全土地等」という。)の管理及び処分をする権限を有する。   

2項 管理不全土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意でかつ過失がない第三者に対抗することはできない。 

 一 保存行為 

 二 管理不全土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為   

3項 管理不全土地管理命令の対象とされた土地の処分についての前項の許可をするには、その所有者の同意がなければならない。

〇 民法264の11(管理不全土地管理人の義務) 

 1項 管理不全土地管理人は、管理不全土地等の所有者のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。  

 2項 管理不全土地等が数人の共有に属する場合には、管理不全土地管理人は、その共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。

〇 民法264の12 (管理不全土地管理人の解任及び辞任) 

1項 管理不全土地管理人がその任務に違反して管理不全土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、管理不全土地管理人を解任することができる。 

2項 管理不全土地管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。

〇 民法264の13(管理不全土地管理人の報酬等) 

1項 管理不全土地管理人は、管理不全土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。 

2項 管理不全土地管理人による管理不全土地等の管理に必要な費用及び報酬は、管理不全土地等の所有者の負担とする。

〇 民法264の14(管理不全建物管理命令) 

1項 裁判所は、所有者による建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該建物を対象として、管理不全建物管理人(第三項に規定する管理不全建物管理人をいう。第四項において同じ。)による管理を命ずる処分(以下この条において「管理不全建物管理命令」という。)をすることができる。   

2項 管理不全建物管理命令は、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物にある動産(当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)及び当該建物を所有するための建物の敷地に関する権利(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(所有権を除く。)であって、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者又はその共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。

3項 裁判所は、管理不全建物管理命令をする場合には、当該管理不全建物管理命令において、管理不全建物管理人を選任しなければならない。 

4項 第二百六十四条の十から前条までの規定は、管理不全建物管理命令及び管理不全建物管理人について準用する。

【参考・参照文献】

以下の文献を参考・参照して、このページを作成しました。

①  佐久間毅 新法解説 民法等の一部を改正する法律・相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(下)(法学教室496号50頁) 

② 村松秀樹・大谷太編著 Q&A令和3年改正民法・改正不登法・相続土地国庫帰属法(2022年、きんざい)166頁~

③ 潮見佳男・木村貴裕・水津太郎・高須順一・赫高規・中込一洋・松岡久和編著 Before/After民法・不動産登記法改正(令和5年、弘文堂)

④ 安永正昭 講義物権・担保物権法(第4版)(2021年、有斐閣)210頁

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