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不法行為の効果

第3編 債権
第5章 不法行為

○ 民法709条(不法行為による損害賠償)

 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

○ 民法710条(財産以外の損害の賠償)

 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

○ 民法711条(近親者に対する損害の賠償)

第七百十一条 他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。

1 問題の所在

(1)不法行為の被害者は、加害者に対する損害賠償請求をするに当たり損害賠償請求の示談交渉や裁判手続を弁護士に委任し、その弁護士が被害者の代理人として活動した場合、当該弁護士に関する費用は「損害」に当たるとして、これについても、他の損害とあわせて、加害者から賠償を受けることができるのか。

 前提として、

① 訴訟費用(例 原告が訴え提起する時に所定額の収入印紙を訴状に貼付して裁判所に納付する当該収入印紙の費用)は敗訴者が負担するが(民訴法61条)、弁護士費用は訴訟費用に含まれない。

 よって、被害者は、被害者が委任する弁護士との間の示談交渉又は訴訟手続についての委任契約に基づいて、当該弁護士に、弁護士報酬を支払うことになる。

② 日本では、裁判をするために弁護士に委任することは強制されておらず(強制されている場合を「弁護士強制主義」という。)、被害者は、示談交渉はもちろん、裁判手続も、弁護士を委任しないで、できる。

③ ②にもかかわらず、裁判の手続や内容が複雑であること(特に、応訴した加害者が弁護士に委任し、違法性、因果関係、損害を争ってきた場合)は否定できず、被害者が自己の権利の実現を図るためには、弁護士に委任する必要性は高い。特に、戦後、モータリゼーションに伴う交通事故の激増を受けて、その必要性は高まった。

(2)契約の相手方から債務不履行を受けた契約の当事者が、契約に基づく債務の履行を求めて、裁判手続を弁護士に委任した場合も検討する。

1 不法行為の場合

(1)応訴による不法行為

 被告による応訴が別個の不法行為に当たる場合は、これによる損害賠償として認められる余地はあるが、この理論によると、認められる事例は限定される。

(2)弁護士費用が相続因果関係の範囲内といえる場合

① 最判昭和44年2月27日(民集23巻2号441頁)

 現在の訴訟は、ますます専門化され技術化された訴訟追行を当事者に対し要求する。→一般人が単独にて十分な訴訟活動を展開することはほとんど不可能に近い。

(被害者が)自己の権利擁護上、訴えを提起することを余儀なくされた場合、一般人は、弁護士に委任しなければ、十分な訴訟活動をなし得ない。

(結論として)

 弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる範囲内のものに限り、不法行為と相当因果関係に立つ損害といえる。

③ 最判昭和52年10月20日

 損害として算定された弁護士費用については過失相殺の規定は適用されない。

 

 交通事故損害賠償請求訴訟では、おおむね、認容額の10%が損害に当たるという運用がされている。 

 

 

2 債務不履行の場合

(1)安全配慮義務

 最判平成24年2月24日

 原告の損害の発生と額、安全配慮義務の内容、義務違反の事実について主張立証責任を負う点は、不法行為の場合と変わらない。

→ 弁護士に委任しないでは、十分な訴訟活動が困難な類型に属する請求権

→ 弁護士費用は損害に当たる。

(2)その他

 最(三小)判令和3年1月22日(村田大樹・法学教室488号138頁(2021年)

 土地売買契約の買主が、売主が契約締結後営業を停止する等の事態となったため、売主に対する履行請求訴訟を提起し、それに必要とした弁護士費用が損害に当たるかが争点となった事案

 結論として、否定

① 性質論

 侵害された権利利益の回復を求める不法行為による損害賠償請求ではなく、契約の目的を実現して履行による利益を得ようとするものである。

② 事前の対処可能性 

 契約を締結しようとする者は、任意の履行がされない場合があることを考慮して、契約内容を検討してり、契約を締結するか否かを決定できる。

③ 本件売主の債務は、土地の引渡しや所有権登記手続をすべき債務であり、契約から一義的に確定するものである。

 

 

○ 民法722条(損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺)

1項 第四百十七条損害賠償の方法及び第四百十七条の二中間利息の控除の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。

2項 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

1 金銭賠償の原則

  本条による民法417条の準用

 近代法は、金銭が社会の価値基準となっており、その価値によって代償させる趣旨である(近江)。

2 一時金賠償と定期金賠償

3 金銭賠償主義の例外

 不法行為制度=被害者の救済

→ 金銭賠償以外の救済方法で被害者が満足すれば、それも認められるべきである。

① 別段の意思表示

② 非金銭的救済

4 非金銭的救済

(1)原状回復

① 名誉の回復 民法723条

② その他

(2)差止め

① 差止請求の根拠

以下、近江171頁による整理

[A]権利説

a 物権的請求権説

b 人格権説

c 環境権説

 

[B]利益説(不法行為説)

[C]二元説

被侵害利益(法益)の種類により区分する。

① 生命・身体等の侵害

加害行為の社会的有用性が大きくても、差止めの効果を認める。

② 騒音等の被害 

衡量的判断により差止めの可否を決定する。具体的には、① 被侵害利益の種類・程度・蓋然性、② 加害行為(事業活動)の社会的有用性(公共性)

 

 

 

 

 

○ 民法723条(名誉毀き損における原状回復)

 他人の名誉を毀き損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。

【参考・参照文献】

 下記文献を参考・参照して、作成しました。

□ 平野裕之 債権各論Ⅱ事務管理・不当利得・不法行為(2019年、日本評論社)391頁

□ 平野裕之 民法総合6不法行為法(第3版)(2013年、信山社)395頁

□ 村田大樹・法学教室488号138頁(2021年)

□ 近江幸治 民法講義Ⅵ事務管理・不当利得・不法行為(第3版)(2018年、成文堂)167頁 略称:近江 

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