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親族法 婚姻

民法第4編 親族
第2章 婚姻

           第1節 婚姻の成立

第1款 婚姻の要件

1 婚姻の成立要件

① 実質的要件 

ⅰ 婚姻意思の合致

ⅱ 婚姻障害がないこと(732条~736条)

② 形式的要件

  戸籍法に従って届出(創設的届出)

 

   婚姻意思の理解

〇 実質的意思説(判例、通説)

「当事者間に真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思」(最判昭和44年10月31日民集23巻10号1894頁、婚外子として出生した子に嫡出子の地位を取得させることを目的とした事案

〇 形式的意思説

 戸籍への届出をする意思で足りる。

 

 実質的意思説では、臨終婚(最判昭和44年4月3日)や獄中婚など説明ができない又は説明に限界がある事案もある。

 この点、文献①47頁によると、実質的意思説により婚姻を無効にした事案は、他に内縁状態や法律婚の配偶者がいたこと、偽装結婚の意思が認定された事案であることから、実質的意思説は、「当事者が婚姻の届出をした意図や状況が一夫一婦制や夫婦・親子間の協力・扶助関係等等法が家族関係の本質と規定するものに合致するかどうか。」という観点に基づき判断されている。

〇 民法731条(婚姻適齢)

婚姻は、十八歳にならなければ、することができない。

1 婚姻適齢の趣旨

 一定の年齢への到達を婚姻の要件とすることによって、早熟な婚姻を防ぎ、当事者やその間に生まれる子の福祉を図る(文献①49頁)。

2 婚姻適齢の変遷(文献①49頁、文献②23頁)

① 旧法765条

  男17歳、女15歳

② 戦後~ 現行法

  男18歳、女16歳

③ 平成30年改正法(令和4年4月1日施行)

ⅰ 成年年齢 20歳 → 18歳

ⅱ 男18歳、女18歳

 

(参考)年齢計算に関する法律

明治三十五年法律第五十号(年齢計算ニ関スル法律)

① 年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス

② 民法第百四十三条ノ規定ハ年齢ノ計算ニ之ヲ準用ス

③ 明治六年第三十六号布告ハ之ヲ廃止ス

〇 民法732条(重婚の禁止)

配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。

1 本条の「婚姻」は、法律婚であり、内縁は含まない。

  重婚が生ずる原因として、戸籍吏の不注意による後姻の受理は、ほぼあり得ず、離婚後再婚したが、離婚が無効となった場合が最も多いといわれている(水野紀子・法学教室492号69頁)。 

2 失踪宣告が取り消された場合

(1)事案

 甲は、乙と結婚していたが失踪し、失踪宣告を受けた(民法30条)。その後、乙は丙と結婚した。その後、甲の生存が判明し、失踪宣告は取り消された(民法32条)。

 この場合、甲乙間の前婚が復活し、乙丙間の後婚は重婚に当たり、取り消されるのか。

(2)考え方

① 失踪宣告の取消しに関する民法32条がこの場合にも適用されるか、乙の意思の尊重等を考慮すべき問題であるが、最終的には、立法的解決に委ねられる問題である。

② 戸籍先例

ⅰ 甲乙間の前婚は失踪宣告により解消されており、失踪宣告が取り消された場合も復活しない(当事者の善意悪意を問わず)。→乙丙間の後婚は重婚とならない。

ⅱ ⅰは、失踪宣告取消後に、乙丙間の後婚が解消(離婚、死別)された場合でも、変わらない。

  

〇 民法733条(再婚禁止期間)

1項 女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して百日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。

2項 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。

一 女が前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなかった場合

二 女が前婚の解消又は取消しの後に出産した場合

1 最高裁判所大法廷平成27年12月16日判決

最高裁判所民事判例集69巻8号2427頁、判例タイムズ1421号61頁)

(争点)女性についてのみ再婚禁止期間6か月と定めていた旧733条の合憲性が争われた。

(判趣)

 ① 立法目的は合理的であること

ⅰ 昭和二二年法律第二二二号による民法の一部改正(以下「昭和二二年民法改正」という。)により、旧民法(昭和二二年民法改正前の明治三一年法律第九号をいう。以下同じ。)における婚姻及び家族に関する規定は、憲法二四条二項で婚姻及び家族に関する事項について法律が個人の尊厳及び両性の本質的平等に立脚して制定されるべきことが示されたことに伴って大幅に変更され、憲法の趣旨に沿わない「家」制度が廃止されるとともに、上記の立法上の指針に沿うように、妻の無能力の規定の廃止など夫婦の平等を図り、父母が対等な立場から共同で親権を行使することを認めるなどの内容に改められた。

 その中で、女性についてのみ再婚禁止期間を定めた旧民法七六七条一項の「女ハ前婚ノ解消又ハ取消ノ日ヨリ六个月ヲ経過シタル後ニ非サレハ再婚ヲ為スコトヲ得ス」との規定及び同条二項の「女カ前婚ノ解消又ハ取消ノ前ヨリ懐胎シタル場合ニ於テハ其分娩ノ日ヨリ前項ノ規定ヲ適用セス」との規定は、父性の推定に関する旧民法八二〇条一項の「妻カ婚姻中ニ懐胎シタル子ハ夫ノ子ト推定ス」との規定及び同条二項の「婚姻成立ノ日ヨリ二百日後又ハ婚姻ノ解消若クハ取消ノ日ヨリ三百日内ニ生レタル子ハ婚姻中ニ懐胎シタルモノト推定ス」との規定と共に、現行の民法にそのまま引き継がれた。

ⅱ 現行の民法は、嫡出親子関係について、妻が婚姻中に懐胎した子を夫の子と推定し(民法七七二条一項)、夫において子が嫡出であることを否認するためには嫡出否認の訴えによらなければならず(同法七七五条)、この訴えは夫が子の出生を知った時から一年以内に提起しなければならない(同法七七七条)と規定して、父性の推定の仕組みを設けており、これによって法律上の父子関係を早期に定めることが可能となっている。しかるところ、上記の仕組みの下において、女性が前婚の解消等の日から間もなく再婚をし、子を出産した場合においては、その子の父が前夫であるか後夫であるかが直ちに定まらない事態が生じ得るのであって、そのために父子関係をめぐる紛争が生ずるとすれば、そのことが子の利益に反するものであることはいうまでもない。

 民法七三三条二項は、女性が前婚の解消等の前から懐胎していた場合には、その出産の日から本件規定の適用がない旨を規定して、再婚後に前夫の子との推定が働く子が生まれない場合を再婚禁止の除外事由として定めており、また、同法七七三条は、本件規定に違反して再婚をした女性が出産した場合において、同法七七二条の父性の推定の規定によりその子の父を定めることができないときは裁判所がこれを定めることを規定して、父性の推定が重複した場合の父子関係確定のための手続を設けている。これらの民法の規定は、本件規定が父性の推定の重複を避けるために規定されたものであることを前提にしたものと解される。

ⅲ 以上のような立法の経緯及び嫡出親子関係等に関する民法の規定中における本件規定の位置付けからすると、本件規定の立法目的は、女性の再婚後に生まれた子につき父性の推定の重複を回避し、もって父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにあると解するのが相当であり(最高裁平成四年(オ)第二五五号同七年一二月五日第三小法廷判決・裁判集民事一七七号二四三頁(以下「平成七年判決」という。)参照)、父子関係が早期に明確となることの重要性に鑑みると、このような立法目的には合理性を認めることができる。

ⅳ これに対し、仮に父性の推定が重複しても、父を定めることを目的とする訴え(民法七七三条)の適用対象を広げることにより、子の父を確定することは容易にできるから、必ずしも女性に対する再婚の禁止によって父性の推定の重複を回避する必要性はないという指摘があるところである。

 確かに、近年の医療や科学技術の発達により、DNA検査技術が進歩し、安価に、身体に対する侵襲を伴うこともなく、極めて高い確率で生物学上の親子関係を肯定し、又は否定することができるようになったことは公知の事実である。

 しかし、そのように父子関係の確定を科学的な判定に委ねることとする場合には、父性の推定が重複する期間内に生まれた子は、一定の裁判手続等を経るまで法律上の父が未定の子として取り扱わざるを得ず、その手続を経なければ法律上の父を確定できない状態に置かれることになる。生まれてくる子にとって、法律上の父を確定できない状態が一定期間継続することにより種々の影響が生じ得ることを考慮すれば、子の利益の観点から、上記のような法律上の父を確定するための裁判手続等を経るまでもなく、そもそも父性の推定が重複することを回避するための制度を維持することに合理性が認められるというべきである。

② 100日の再婚禁止期間を設ける部分は、憲法14条1項、24条2項に違反しないが、100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分は、平成20年当時において、これら憲法条項に違反するに至っていた。 

ⅰ 本件規定の立法目的は、父性の推定の重複を回避し、もって父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにあると解されるところ、民法七七二条二項は、「婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。」と規定して、出産の時期から逆算して懐胎の時期を推定し、その結果婚姻中に懐胎したものと推定される子について、同条一項が「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。」と規定している。そうすると、女性の再婚後に生まれる子については、計算上一〇〇日の再婚禁止期間を設けることによって、父性の推定の重複が回避されることになる。夫婦間の子が嫡出子となることは婚姻による重要な効果であるところ、嫡出子について出産の時期を起点とする明確で画一的な基準から父性を推定し、父子関係を早期に定めて子の身分関係の法的安定を図る仕組みが設けられた趣旨に鑑みれば、父性の推定の重複を避けるため上記の一〇〇日について一律に女性の再婚を制約することは、婚姻及び家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超えるものではなく、上記立法目的との関連において合理性を有するものということができる。

 よって、本件規定のうち一〇〇日の再婚禁止期間を設ける部分は、憲法一四条一項にも、憲法二四条二項にも違反するものではない。

ⅱ これに対し、本件規定のうち一〇〇日超過部分については、民法七二二条の定める父性の推定の重複を回避するために必要な期間ということはできない。

 旧民法七六七条一項において再婚禁止期間が六箇月と定められたことの根拠について、旧民法起草時の立案担当者の説明等からすると、その当時は、専門家でも懐胎後六箇月程度経たないと懐胎の有無を確定することが困難であり、父子関係を確定するための医療や科学技術も未発達であった状況の下において、再婚後に前夫の子が生まれる可能性をできるだけ少なくして家庭の不和を避けるという観点や、再婚後に生まれる子の父子関係が争われる事態を減らすことによって、父性の判定を誤り血統に混乱が生ずることを避けるという観点から、再婚禁止期間を厳密に父性の推定が重複することを回避するための期間に限定せず、一定の期間の幅を設けようとしたものであったことがうかがわれる。また、諸外国の法律において一〇箇月の再婚禁止期間を定める例がみられたという事情も影響している可能性がある。上記のような旧民法起草時における諸事情に鑑みると、再婚禁止期間を厳密に父性の推定が重複することを回避するための期間に限定せず、一定の期間の幅を設けることが父子関係をめぐる紛争を未然に防止することにつながるという考え方にも理解し得る面があり、このような考え方に基づき再婚禁止期間を六箇月と定めたことが不合理であったとはいい難い。このことは、再婚禁止期間の規定が旧民法から現行の民法に引き継がれた後においても同様であり、その当時においては、国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超えるものであったとまでいうことはできない。

 しかし、その後、医療や科学技術が発達した今日においては、上記のような各観点から、再婚禁止期間を厳密に父性の推定が重複することを回避するための期間に限定せず、一定の期間の幅を設けることを正当化することは困難になったといわざるを得ない。

 加えて、昭和二二年民法改正以降、我が国においては、社会状況及び経済状況の変化に伴い婚姻及び家族の実態が変化し、特に平成期に入った後においては、晩婚化が進む一方で、離婚件数及び再婚件数が増加するなど、再婚をすることについての制約をできる限り少なくするという要請が高まっている事情も認めることができる。また、かつては再婚禁止期間を定めていた諸外国が徐々にこれを廃止する立法をする傾向にあり、ドイツにおいては一九九八年(平成一〇年)施行の「親子法改革法」により、フランスにおいては二〇〇五年(平成一七年)施行の「離婚に関する二〇〇四年五月二六日の法律」により、いずれも再婚禁止期間の制度を廃止するに至っており、世界的には再婚禁止期間を設けない国が多くなっていることも公知の事実である。それぞれの国において婚姻の解消や父子関係の確定等に係る制度が異なるものである以上、その一部である再婚禁止期間に係る諸外国の立法の動向は、我が国における再婚禁止期間の制度の評価に直ちに影響を及ぼすものとはいえないが、再婚をすることについての制約をできる限り少なくするという要請が高まっていることを示す事情の一つとなり得るものである。

 そして、上記のとおり、婚姻をするについての自由が憲法二四条一項の規定の趣旨に照らし十分尊重されるべきものであることや妻が婚姻前から懐胎していた子を産むことは再婚の場合に限られないことをも考慮すれば、再婚の場合に限って、前夫の子が生まれる可能性をできるだけ少なくして家庭の不和を避けるという観点や、婚姻後に生まれる子の父子関係が争われる事態を減らすことによって、父性の判定を誤り血統に混乱が生ずることを避けるという観点から、厳密に父性の推定が重複することを回避するための期間を超えて婚姻を禁止する期間を設けることを正当化することは困難である。他にこれを正当化し得る根拠を見いだすこともできないことからすれば、本件規定のうち一〇〇日超過部分は合理性を欠いた過剰な制約を課すものとなっているというべきである。

 以上を総合すると、本件規定のうち一〇〇日超過部分は、遅くとも上告人が前婚を解消した日から一〇〇日を経過した時点までには、婚姻及び家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超えるものとして、その立法目的との関連において合理性を欠くものになっていたと解される。

ⅲ 以上の次第で、本件規定のうち一〇〇日超過部分が憲法二四条二項にいう両性の本質的平等に立脚したものでなくなっていたことも明らかであり、上記当時において、同部分は、憲法一四条一項に違反するとともに、憲法二四条二項にも違反するに至っていたというべきである。

2 1の最高裁判決を踏まえて、平成28年民法改正により、再婚禁止期間は100日に改められた。

3 平成28年民法改正において、適用除外事由も整理された。

① 733条2項1号 新設

② 733条2項2号 旧法2項と趣旨は同じ。 

〇 民法734条(近親者間の婚姻の禁止)

1項 直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。

 ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。

2項 第八百十七条の九の規定により親族関係が終了した後も、前項と同様とする。

1 一定範囲の近親婚が禁止される理由

① 優生学的配慮 ② 社会倫理的観点

2 1項

① 自然血族のほか法定血族を含む。

② 1項ただし書

 A男がCの実子、B女がCの養子である場合、ABは兄弟姉妹の関係にあるが、婚姻できる。

3 2項

 A男B女がCの実子である(ABは兄弟姉妹)場合、B女がD夫婦の特別養子となったとしても、ABは婚姻できない。  

〇 民法735条(直系姻族間の婚姻の禁止)

 直系姻族の間では、婚姻をすることができない。第728条又は第817条の9の規定により姻族関係が終了した後も、同様とする。

1 直系姻族間の婚姻禁止は、民法728条(①離婚による姻族関係の終了、②配偶者と死別した者の姻族関係の意思表示による終了)、民法817条の9(特別養子縁組による姻族関係の終了)にも適用される。

(例)夫と死別したA女は、姻族関係終了の意思表示をしても、夫の父と婚姻できない。

 傍系姻族には適用されない。

(例)夫と死別したA女は、夫の弟と婚姻できる。

〇 民法736条(養親子等の間の婚姻の禁止)

 養子若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、第729条の規定により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない。

※ 民法729条 離縁による親族関係の終了

(例)A男は、妻B女がいたが、C男の養子なった。ABは離婚し、ACは離縁した。BとCは婚姻できない。

〇 民法737条(未成年者の婚姻についての父母の同意)

平成30年改正(令和4年4月1日施行)により削除

成年年齢と婚姻年齢が一致するため、必要がなくなった。

〇 民法738条(成年被後見人の婚姻)

 成年被後見人が婚姻をするには、その成年後見人の同意を要しない。

〇 民法739条(婚姻の届出)

1項 婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。

2項 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。

〇 民法740条(婚姻の届出の受理)

第七百四十条 婚姻の届出は、その婚姻が第七百三十一条から第七百三十六条まで及び前条第二項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。

〇 民法741条(外国に在る日本人間の婚姻の方式)

 外国に在る日本人間で婚姻をしようとするときは、その国に駐在する日本の大使、公使又は領事にその届出をすることができる。この場合においては、前二条の規定を準用する。

第2款 婚姻の無効及び取消し

〇 民法742条(婚姻の無効)

 婚姻は、次に掲げる場合に限り、無効とする。

一 人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。

二 当事者が婚姻の届出をしないとき。ただし、その届出が第七百三十九条第二項に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻は、そのためにその効力を妨げられない。

〇 民法743条(婚姻の取消し)

 婚姻は、次条から第七百四十七条までの規定によらなければ、取り消すことができない。

〇 民法744条(不適法な婚姻の取消し)

1項 第731条から736条までの規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族又は検察官から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、検察官は、当事者の一方が死亡した後は、これを請求することができない。

2項 第732条又は第733条の規定に違反した婚姻については、当事者の配偶者又は前配偶者も、その取消しを請求することができる。

1 婚姻障害がある場合、本来、婚姻届は受理されないが、過誤により受理され戸籍に反映された場合、法の定める要件に従って取消しの対象となる。

〇 民法745条(不適齢者の婚姻の取消し)

1項 第七百三十一条の規定に違反した婚姻は、不適齢者が適齢に達したときは、その取消しを請求することができない。

2項 不適齢者は、適齢に達した後、なお三箇月間は、その婚姻の取消しを請求することができる。ただし、適齢に達した後に追認をしたときは、この限りでない。

〇 民法746条(再婚禁止期間内にした婚姻の取消し)

 第七百三十三条の規定に違反した婚姻は、前婚の解消若しくは取消しの日から起算して百日を経過し、又は女が再婚後に出産したときは、その取消しを請求することができない。

〇 民法747条(詐欺又は強迫による婚姻の取消し)

1項 詐欺又は強迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができる。

2項 前項の規定による取消権は、当事者が、詐欺を発見し、若しくは強迫を免れた後三箇月を経過し、又は追認をしたときは、消滅する。

〇 民法748条(婚姻の取消しの効力)

1項 婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる。

2項 婚姻の時においてその取消しの原因があることを知らなかった当事者が、婚姻によって財産を得たときは、現に利益を受けている限度において、その返還をしなければならない。

3項 婚姻の時においてその取消しの原因があることを知っていた当事者は、婚姻によって得た利益の全部を返還しなければならない。この場合において、相手方が善意であったときは、これに対して損害を賠償する責任を負う。

〇 民法749条(離婚の規定の準用)

 第七百二十八条第一項、第七百六十六条から第七百六十九条まで、第七百九十条第一項ただし書並びに第八百十九条第二項、第三項、第五項及び第六項の規定は、婚姻の取消しについて準用する。

          第2節 婚姻の効力

〇 民法750条(夫婦の氏)

 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

〇 民法751条(生存配偶者の復氏等)

1項 夫婦の一方が死亡したときは、生存配偶者は、婚姻前の氏に復することができる。

2項 第七百六十九条の規定は、前項及び第七百二十八条第二項の場合について準用する。

〇 民法752条(同居、協力及び扶助の義務)

 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

〇 民法753条(婚姻による成年擬制)

平成30年改正(令和4年4月1日施行)により削除

〇 民法754条(夫婦間の契約の取消権)

 夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

1 夫婦間の契約の取消権の趣旨

 夫婦間で契約の履行を裁判所に訴求して実現することは、夫婦間の円満を害する。法は、家庭に入らず。

2 契約取消権の濫用への対応

取消権の制限

○ 最判昭和33年3月6日

 贈与契約時に夫婦関係が破綻していた夫婦間の契約取消しの可否が争点となった。判例は、当該贈与は事実上の離婚給付契約であることから、取消権の行使を認めなかった。

○ 最判昭和42年2月2日

 贈与契約時に夫婦関係は破綻していなかったが、取消し時に破綻していた場合にも、昭和33年判例の法理を及ぼし、取消権の行使を認めなかった。

 

[参考・参照文献]

① 水野紀子 講座日本家族法を考える 第9回 夫婦の財産関係を考える 法学教室496号79頁

    

  

 

 

          第3節 夫婦財産制

第1款 総則

〇 民法755条(夫婦の財産関係)

 夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、その財産関係は、次款に定めるところによる。

〇 民法756条(夫婦財産契約の対抗要件)

 夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。

〇 民法757条

〇 民法758条(夫婦の財産関係の変更の制限等)

1項 夫婦の財産関係は、婚姻の届出後は、変更することができない。

2項 夫婦の一方が、他の一方の財産を管理する場合において、管理が失当であったことによってその財産を危うくしたときは、他の一方は、自らその管理をすることを家庭裁判所に請求することができる。

3項 共有財産については、前項の請求とともに、その分割を請求することができる。

〇 民法759条(財産の管理者の変更及び共有財産の分割の対抗要件)

 前条の規定又は第七百五十五条の契約の結果により、財産の管理者を変更し、又は共有財産の分割をしたときは、その登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。

第2款 法定財産制

〇 民法760条(婚姻費用の分担)

 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

〇 民法761条(日常の家事に関する債務の連帯責任)

 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

〇 民法762条(夫婦間における財産の帰属)

1項 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。

2項 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。

【参考・参照文献】このページは以下の文献を参考・参照して作成しました。

① 常岡史子 家族法(2020年 新世社)41頁

② 松川正毅・窪田充見編 新基本法コンメンタール親族(第2版)(2019年、日本評論社)25頁

③ 窪田充見 親族法(第4版)(2019年、有斐閣)15頁

 

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