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預金に関する法律問題(その1)~預貯金は誰のものか?

第1 問題の所在

 金融機関の預金口座について、口座を開設した者とお金を出捐した者とが異なる場合がある。この場合、預金者は誰であるか。預金の種類によって結論は変わるのか。

 この点、基本的な考え方として、次の3説がある。

[A]説 客観説

 出捐者=預金者

[B]説 主観説

 自己の預金とする意思で預金契約をした者=預金者

[C]説 折衷説

① 原則 出捐者=預金者(客観説)

② 例外 預入行為者が自己を預金者であることを表示したとき、預入行為者=預金者

 

第2 定期預金

 最高裁(第三小法廷)昭和48年3月27日判決

 無記名定期預金契約において、当該預金の出捐者が、

① 自ら預入行為をした場合

② 他の者に金銭を交付し無記名定期預金をすることを依頼し、この者が預金行為をした場合

 

①の場合はもちろん

②の場合も、預金行為者が金銭を横領し自己の預金とする意図で無記名定期預金をした等の特段の事情の認められない限り、

 

出捐者が無記名定期預金の預金者である。

 

 無記名定期預金はその後廃止されたが、最高裁は、記名式定期預金についても、同様の判断を示した(昭和57年3月30日判決等)。

 

第3 普通預金

1 最高裁(第二小法廷)平成15年2月21日判決

 

 「甲保険会社代理店乙」名義の普通預金口座で、保険料を収受する口座

 

① 預金口座を開設した者は乙であること、名義が甲を表示してるものと認められないこと、甲が乙に対し預金契約締結の代理権を授与していた事情はないこと、口座の通帳及び届出印は乙が保管しており、口座についての入出金事務は乙であるから、預金口座の管理者は名実ともに乙である。

② 金銭の所有権は常に金銭の受領者(占有者)に帰属する。

→ 預金の原資は、保険契約者から収受した乙が所有していたものである。

③ ①②より、預金債権は、甲ではなく、乙に帰属する。

 

2 評価(文献③p311)

 ②より、客観説と矛盾しない。

 預金口座開設者(預金契約の当事者)、預金口座名義、預金口座管理者(通帳・届出印の管理状況)等の事実認定した上での判断 → 形式的な客観説そのものではない。

 上記事実認定に係る諸般の事情を総合考慮して、預金者を判断するアプロウチ(総合考慮説)である。

 

3 第2の最高裁判例との関係

○ 普通預金は、個々の預入れ毎にそれを組み込んだ新たな一個の預金債権が成立するという流動性があるため、個々の預入金毎に預金者を判断すること、特定の時点での口座残金について出捐者を確定することが困難であるという点において、定期預金の場合と事例を異にする。(文献③p315)

○ 福井章代

(佐々木茂美編民事実務研究Ⅱp1(2007年、判例タイムズ社))

① 従来の(平成15年判例より前)の最高裁判例

 預金契約締結の場面では、預入れをする側の内部的法律関係を尊重し、金融機関側の認識状況を問題にしない一方で、金融機関との利害調整が必要となる場面では、民法478条の類推適用によって金融機関の外観に対する信頼を保護し、全体のバランスをとる判断枠組み。(同書p18)

② 預金債権の帰属に関する最高裁判例は、平成15年判例を含めて、預金原資の出捐関係、預金開設者、出捐者の預金開設者に対する委任内容、預金口座名義、預金通帳及び届出印の保管状況等の諸要素を総合的に勘案した上で、誰が自己の預金とする意思を有していたかという観点から預金者を判断する。(同書p29)

③ 従来の最高裁判例と平成15年判例との間に預金の出捐関係についての重点の置き方に差異があるが、それは、定期預金と普通預金の違いによるものと解する。(同書p29)

【参考・参照文献】

下記文献を参考・参照して、作成しました。

① 内田貴 民法Ⅲ債権総論・担保物権(第4版)47頁(2020年、東京大学出版会)

② 最髙裁判所判例解説民事篇平成15年度(上)53頁(執筆者尾島明)(平成18年、法曹会)

③ 加藤新太郎・松田典浩編集 裁判官が説く民事裁判実務の重要論点<契約編>(執筆者大塚博喜)307頁(平成29年、第一法規)

④ 平野裕之 債権各論Ⅰ契約法412頁(2018年、日本評論社)頁

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