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国家賠償法

国家賠償法

〇 国家賠償法1条(公権力の行使に基づく損害の賠償責任、求償権)

1項 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

2項 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

 

第1 総論

【A】説 代位責任説(通説)

 (理由)

   ① 公務員の故意・過失を要件としていること

   ② 公務員に対する求償を認めていること

【B】説 自己責任説

 

 

 

第2 責任要件

1 国又は公共団体の行使に当たる公務員

① 加害行為をした公務員の特定は必須ではなく、公務員の一連の行為のいずれかによって損害が発生し、いずれの行為についても同じ行政主体が賠償責任を負うときは、損害賠償責任が認められる(最判昭和57年4月1日)。

② 本来都道府県がもつ公的な権限を委ねられ、これを都道府県のために行為する場合におけるその者も含まれる(最判平成19年1月25日[児童養護施設の職員])。

2 公権力の行使

(1)位置づけ

 公権力の行使 該当 → 国賠法1条1項責任

 公権力の行使 非該当 → 使用者責任(民法715条)等

 

 国賠法1条1項責任と使用者責任(民法715条)の相違

① 使用者の免責が認められるか。

  認められない/認められる場合がある

② 使用者の公務員に対する求償

  限定されない/故意・過失がある場合に限定される

③ 被害者が行為者に対し損害賠償請求できるか。

  できない/できる 

(2)「公権力の行使」の意義

 私経済作用を除く行政作用(広義説)  

3 職務遂行性

4 違法性

 

【論点】規制権限不行使の違法(文献⑤)

1 視点

  公権力の行使

  行政庁の規制権限の不行使(不作為)を含む。

  規制権限の行使に関する行政庁の裁量(行政便宜主義)

2 考え方の筋道

 下記①②は、思考方法の違いであり、結論に差はない。

① 裁量ゼロ収縮論

 下記ⅰ~ を考慮要素

ⅰ 被侵害利益の重要性

  生命・身体の安全>財産権

ⅱ 予見可能性

  私人に対する被害の発生が予見できたか。

ⅲ 結果回避可能性

 行政庁が規制権限を行使することにより、被害の発生を防止できたか。

ⅳ 補充性

 行政庁の規制権限の行使以外の方法により、被害の発生を防止できたか。

ⅴ 期待可能性

 私人が行政庁の規制権限の行使による解決を期待したことに相当性があるか。

 

② 裁量消極的濫用論

 

3 判例

(1)最判平成元・11・24(宅建業法事件)

① 被侵害利益が法的に保護されていなければ、規制権限の不行使が違法とはいえない。

② 裁量論消極的濫用論に立った上で、規制権限の不行使が著しく合理性を欠くと認められれば、違法となる。

(2)最判平成26・10・9(泉南アスベスト事件)

 規制権限の不行使は、その権限を定めた法令の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、具体的事情の下において、その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、その不行使により被害を受けた者との関係において、国賠法1条1項の適用上違法となる。

 

 

 

 

 

 

□ 最高裁(第三小法廷)令和2年7月14日判決

 求償権(国家賠償法1条2項)の法的性質

(争点)求償義務を負う公務員が複数する場合、当該公務員は分割責任を負うのか、連帯責任を負うのか。

 

(結論)国又は公共団体の公権力の行使に当たる複数の公務員が、その職務を行うについて、共同して故意によって違法に他人に加えた損害につき、国又は公共団体がこれを賠償した場合、当該公務員らは、国又は公共団体に対し、連帯して求償義務を負う。

(理由)

① 当該公務員らは、国又は公共団体に対する関係においても一体をなす。

② 当該公務員の一部が無資力等の場合、国又は公共団体と当該公務員らとの間においては、当該公務員らにおいてその危険を負担すべきものとするのが公平の見地から相当であると解される。

 

【参考・参照文献】

① 徳本広孝・法学教室482号137頁

 国家賠償法2条(公の営造物の設置管理の瑕疵に基づく損害の賠償責任、求償権) 

1項 道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。

2項 前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。 

1 営造物責任の意義

① 国家賠償法制定前

  土地工作物責任(民法717条)が適用

② 国家賠償法(営造物責任)制定後

   土地工作物とはいえないもの(道路、河川等)について救済対象を拡大した。

2 営造物責任の成立要件

(1)公の営造物

国又は公共団体によって直接公の目的に供される個々の有体物(文献⑥)

 

公の営造物=公物=a「公用物」+b「公共用物」

 

a 公用物

 行政活動に用いられている施設(例:役場建物)

b 公共用物

 一般利用者のために提供されている施設(例:道路、河川、公園)

(2)公の営造物の設置・管理の瑕疵

 考え方

 客観説 物理的欠陥の存在

 主観説 管理義務違反

 

判例

□ 高知落石事件(最判昭和45年8月20日)

① 瑕疵の意義:公の営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態

② 無過失責任

③ 予算の抗弁は排斥

④ 結果責任ではなく、不可抗力の場合又は回避可能性がない場合は免責されうる。

 

□ 防護柵転落事件(最判昭和53年7月4日)

通常有すべき安全性の判断基準

 

営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等の諸般の事情を総合考慮して、具体的・個別的に判断すべき。

□ 港湾施設転落事件(最判昭和55年9月11日)

 公の営造物の利用に付随して死傷等の事故の発生する危険性が客観的に存在し、かつ、それが通常の予測の範囲を超えるものでない限り(予見可能性)、管理者としては、事故の発生を未然に防止するための安全設備を設置する(回避可能性)必要がある。

 

 

 

 

 

〇 国家賠償法3条(賠償責任者)

1項 前二条の規定によつて国又は公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合において、公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者と公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任ずる。

2項 前項の場合において、損害を賠償した者は、内部関係でその損害を賠償する責任ある者に対して求償権を有する。

〇 国家賠償法4条(民法の適用)

 国又は公共団体の損害賠償の責任については、前三条の規定によるの外、民法の規定による。

〇 国家賠償法5条(他の法律の適用)

 国又は公共団体の損害賠償の責任について民法以外の他の法律に別段の定があるときは、その定めるところによる。

〇 国家賠償法6条(相互保証主義)

 この法律は、外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り、これを適用する。

〇 附 則 抄 

① この法律は、公布の日から、これを施行する。

⑥ この法律施行前の行為に基づく損害については、なお従前の例による。

 

【参考・参照文献】

 このページは、以下の文献を参考・参照して作成しました。

① 宇賀克也・行政法(2012年、有斐閣)頁

② 村上裕章・スタンダード行政法第21回(法学教室483号80頁)  

③ 橋本博之・現代行政法(2017年、岩波書店)頁

④ 中原茂樹 基本行政法(第2版)(2015年、日本評論社)頁

⑤ 渡井理佳子 行政法教室-トピックで学ぶ第22回「国家賠償法1条」(法学教室508号62頁)

⑥ 渡井理佳子 行政法教室-トピックで学ぶ第23回「国家賠償法2条」(法学教室509号82頁)

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