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債権法改正、保証債務(その5)
事業に係る債務についての保証契約

民法 第3編 債権
第1章 総則
第3節 多数当事者の債権及び債務
第5款 保証債務

    第3目 事業に係る債務についての保証契約の特則

第3目 事業に係る債務についての保証契約の特則(平成29年改正により新設)

 [経過措置]施行日前に締結された保証契約に係る保証債務については、旧法が適用される(附則21条1項)。

〇 民法465条の6(公正証書の作成と保証の効力(平成29年改正により新設)

1項 事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前1箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。

2項 前項の公正証書を作成するには、次に掲げる方式に従わなければならない。

(1)保証人になろうとする者が、次のイ又はロに掲げる契約の区分に応じて、それぞれ当該イ又はロに定める事項を公証人に口授すること。

イ 保証契約(ロに掲げるものを除く。)

 主たる債務の債権者及び債務者、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものの定めの有無及びその内容

並びに

 主たる債務者がその債務を履行しないときには、その債務の金額について履行する意思(保証人になろうとする者が主たる債務者と連帯して債務を負担しようとするものである場合には、債権者が主たる債務者に対して催告をしたかどうか、主たる債務者がその債務を履行することができるかどうか、又は他に保証人があるかどかにかかわらず、その全額について履行する意思)を有していること。

ロ 根保証契約

 主たる債務の債権者及び債務者、主たる債務の範囲、根保証契約における極度額、元本確定期日の定めの有無及びその内容

並びに

 主たる債務者がその債務を履行しないときには、極度額の限度において元本確定期日又は第465条の4第1項各号若しくは第2項各号に掲げる事由その他元本を確定すべき事由が生ずる時までに生ずべき主たる債務の元本及び主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものの全額について履行する意思(保証人になろうとする者が主たる債務者と連帯して債務を負担しようとするものである場合には、債権者が主たる債務者に対して催告をしたかどうか、主たる債務者がその債務を履行することができるかどうか、又は他に保証人があるかどかにかかわらず、その全額について履行する意思)を有していること。

(2)公証人が保証人になろうとする者の口授を筆記し、これを保証人になろうとする者に読み聞かせ、又は閲覧させること。

(3)保証人になろうとする者が、筆記の正確なことを承認した後、署名し、印を押すこと。

 ただし、保証人になろうとする者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。

(4)公証人が、その証明は前3号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を捺印すること。

第3項 第二項の規定は、保証人になろうとする者が法人である場合には、適用しない。

1 金融機関の中小零細企業に対する融資

(1)従前 法人の経営者のみならず、経営者の親族等第三者の個人保証を徴収して行われてきた。

 ところが、現実に中小零細企業の経営が破綻した場合、事業負債は消費者負債よりも多額であるのが通常であるから、第三者は返済能力以上の貸金等債務の返済を金融機関から迫られ、破産や最悪の場合自殺に追い込まれた。

 かかる「保証被害」の発生が社会問題化するに至り、平成18年頃から、第三者保証、更には経営者保証を徴収しない融資が金融実務で模索された。

 本条は、このような流れを踏まえて、事業のための貸金等債務(金銭の貸渡し又は手形割引を受けることによって負担する債務[465条の3第1項])についての第三者保証の手続を、原則として、公正証書において、保証債務を履行する意思を表示しなければならない旨を規定した。

(2)保証人の保護を、① 保証意思の存否、② 保証リスクの評価に区分して考えると、本条は、①に関わる。(文献⑤47頁)

① 対象

(ⅰ)事のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約

(ⅱ)主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約

 

 保証委託の有無を問わない(文献⑤47頁)。

② 保証意思宣明公正証書の作成時期

 (根)保証契約締結に先立ち、その締結の日前1箇月以内

2 保証意思宣明公正証書(本条2項)

① 保証人が自ら公正役場に出頭して保証意思を表明する必要がある。代理人による作成は認められない。

② 公証人の注意及び説明義務

  公証人法26条、公証人法施行規則13条1項

  適用又は類推適用

③ 作成時期について法の定めを厳格に遵守する必要があり、

これを逸すると、保証契約は無効となる。

④ 保証意思宣明公正証書と保証契約が内容が一致しない場合、保証契約は無効となる。

 例えば、主債務額について、前者が500万円とされていたが、後者が1000万円となった場合

 全体として無効であり、500万円の範囲で有効となるのではない。

⑤ 保証意思宣明は、保証契約締結までに撤回できると解すべき。

〇 民法465条の7(保証に係る公正証書の方式の特則)(平成29年改正により新設)

1項 前条第1項の保証契約又は根保証契約の保証人になろうとする者が口がきけない者である場合には、公証人の前で、同条第2項第1号イ又はロに掲げる契約の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事項を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、同号の口授に代えなければならない。

 この場合における同項第2号の規定の適用については、同号中「口述」とあるのは、「通訳人の通訳による申述又は自書」とする。

2項 前条第1項の保証契約又は根保証契約の保証人になろうとする者が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同条第2項第2号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により保証人になろうとする者に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる。

3項 公証人は、前二項に定める方式に従って公正証書を作ったときは、その旨をその証書に付記しなければならない。

1 465条の6に定める公正証書の作成方法(原則)に対する例外を定めたものである。公正証書遺言の作成方法に関する民法969条の2の内容とほぼ同じ内容である。

 

〇 民法465条の8(公正証書の作成と求償権についての保証の効力)(平成29年改正により新設)

1項 第465条の6第1項及び第2項並びに前条の規定は、事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約の保証人の主たる債務者に対する求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約について準用する。

 主たる債務の範囲にその求償権に係る債務が含まれる根保証契約も、同様とする。

2項 前項の規定は、保証人になろうとする者が法人である場合には、適用しない。

 

 民法465条の6・465条の7の規制を、主債務者に対する求償権を主債務とする個人保証及び主債務に含む根保証に及ぼす。

 

① 事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約 又は

② 主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約

 

①②の契約の保証人の主たる債務者に対する求償権に係る債務を主たる債務とする保証契約

①②の契約の保証人の主たる債務者に対する求償権に係る債務

が含まれる根保証契約 

〇 民法465条の9(公正証書の作成と保証の効力に関する規定の適用除外)(平成29年改正)

前三条の規定は、保証人になろうとする者が次に掲げる者である保証契約については、適用しない。

一 主たる債務者が法人である場合の理事、取締役、執行役又はこれらに準ずる者

二 主たる債務者が法人である場合の次に掲げる者

イ 主たる債務者の総株主の議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除く。以下この号において同じ。)の過半数を有する者

ロ 主たる債務者の総株主の議決権の過半数を他の株式会社が有する場合における当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者

ハ 主たる債務者の総株主の議決権の過半数を他の株式会社及び当該他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者が有する場合における当該他の株式会社の総議決権の過半数を有する者

ニ 株式会社以外の法人が主たる債務者である場合におけるイ、ロ又はハに掲げる者に準ずる者

三 主たる債務者(法人であるものを除く。以下この号において同じ。)と共同して事業を行う者又は主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者

1 経営者保証及びこれに準じる場合、民法465条の6~8の規制を及ばさない特則を定めたものである。

【一号】法人の役員等が保証人になる場合(狭義の経営者保証)

【二号】法人の支配株主等が保証人になる場合

【三号】共同事業経営者等が保証人になる場合

(論点)主債務者の配偶者が主債務者の事業に現に従事している場合、共同して事業を行っていなくても(例、単なる事務仕事、接客等)、三号に当たるか。

【A】説 当たる。← 文言

【B】説 当たらない(文献③144頁)

 個人保証(特に近親者保証)の情誼性を考慮して保証意思の確認に慎重を期したという立法趣旨からすると、例外は限定的に考えるべきであり、3号後段に該当するのは1号・2号・3号前段に該当する者と実質的に同視される者に限定すべき。

〇 民法465条の10(契約締結時の情報の提供義務)(平成29年改正により新設)

1項 主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証又は主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受ける者に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。

一 財産及び収支の状況

二 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況

三 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容

2項 主たる債務者が前項各号に掲げる事項に関して情報を提供せず、又は事実と異なる情報を提供したために委託を受けた者がその事項について誤認をし、それによって保証契約の申込み又はその承諾の意思表示をした場合において、主たる債務者がその事項について情報を提供せず又は事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り又は知ることができたときは、保証人は保証契約を取り消すことが出来る。

3項 前二項の規定は、保証をする者が法人である場合には、適用しない。

1 意義

(1)保証人が保証契約を締結する際、そのリスクを判断するために、主債務の経済状況を知ることが必要である。

 保証人が保証リスクの判断を誤ったとして錯誤主張をしても、実務では、なかなか認められない現実がある(文献⑤49~50頁)。

→ 主債務の個人保証人に対する情報提供義務を課し、一定の場合に、保証人の保証契約の取消権を付与した。

(2)保証人の保護を、① 保証意思の存否、② 保証リスクの評価に区分して考えると、本条は②に関わる。(文献⑤49頁)

 

2 対象となる保証契約の範囲

① 事業のために負担する債務を主たる債務とする保証

又は

② 主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証

 

 貸金等債務に限られず、事業のための不動産賃貸借契約や継続的売買契約についての保証契約も含まれる。

3 義務者

  主たる債務者

 「保証委託契約」の当事者であるが「保証契約」の当事者ではない。それにもかかわらず、主債務者の義務違反があれば、債権者の悪意・有過失を要件として、保証契約の取消しを認める。「保証委託契約」と「保証契約」の密接な関連性を前提としている。

4 義務の相手方

  保証又は根保証の委託を受ける個人

  主債務者(法人)の取締役等も適用される(民法465条の9のような適用除外規定がない)。

5 情報提供の内容

① 本条1項一号二号三号

 保証リスクの評価を基礎付ける現在の事実で、保証人がこれらの情報提供を受けないで保証意思に真に形成することは困難である。(文献⑤51頁)

② 態様

a 情報不提供

  提供すべき情報を提供しない。

b 不実情報提供

  事実と異なる情報を提供する。

 

 主債務者の故意・過失を問わない。 

 

6 保証人の取消権(本条3項)

(1)第三者の詐欺(民法96条2項)と同様の構造

  要件(文献⑤52頁)

① 主債務者の保証人に対する情報提供義務違反

② 債権者の悪意・有過失

③ ①と④との間の因果関係

 情報提供義務違反により保証契約が締結されたという関係であり、正確にいうと、下記ⅰとⅱより成る(二重の因果関係)。

ⅰ「したために」情報提供義務違反→保証人の誤認

ⅱ「それによって」保証人の誤認→保証契約締結  

④ 保証契約締結

(2)第三者の詐欺による取消権との相違点(文献⑤49頁)

 第三者の詐欺による取消権は、第三者=債務者の保証人に対する故意行為(なお、平成29年改正法により、有過失にも拡張された)に限定されていた。

 これに対し、本条は、不適切な情報提供又は情報不提供が故意・過失によりなされたか否かを問わない。

 

 

【参考・参照文献】

 このページは、下記文献を参考・参照して作成しました。

① 第一東京弁護士会司法制度調査委員会編・新旧対照でわかる改正債権法の逐条解説(平成29年、新日本法規)139頁

② 日本弁護士連合会編・実務解説改正債権法(第2版)(2020年、弘文堂)240頁

③ 潮見佳男著 民法(債権関係)改正法の概要(平成29年、金融財政事情研究会)133頁

④ 齊藤由起「保証人に対する情報提供義務」法学教室478号23頁

⑤ 三枝健治「保証-事業債務の個人保証人の保護を中心に」法学教室481号46頁

⑥ 松岡久和・中田邦博編 新・コンメンタール民法(財産法)(第2版)(2020年、日本評論社)761頁

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