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個人再生手続

第1 個人再生手続

 個人再生手続とは、民事再生法第13章 小規模個人再生及び給与所得者等再生に関する特則の適用を受ける民事再生手続である。

 民事再生法(平成11年制定)の定める手続は複雑かつ重厚であること、及び監督委員が選任される場合がある等手続の費用負担の面でも大変であることから、主に株式会社等法人が利用することが想定されていたといえる。もちろん、個人も、民事再生法の定める手続を履践すればよいのであるが、前述した手続の特徴から、利用は少なかったといえる。

 このような状況を踏まえて、平成12年改正で、個人で一定の要件を満たす者は、民事再生法の本則に定められた手続を簡素化することにより、また、手続の費用負担の面でも軽減することにより、個人が民事再生手続を利用し易くする制度を導入した(平成13年4月1日施行)。

   あわせて、住宅ローンを特別扱いすることにより、住宅を手放すことなく維持したまま、再生を図る特則が導入された(民事再生法第10章 住宅資金貸付債権に関する特則)。

 個人再生手続は、次の2種類ある。

 個人再生手続は、通常の民事再生手続の特則である。また、給与所得者等再生は、小規模個人再生の特則である。

① 小規模個人再生

  民事再生法第13章 第1節

  法221条~238条

② 給与取得者等再生

  民事再生法第13章 第2節

  法239条~245条

 

第2 個人再生手続の適用要件

   後記

第3 再生計画案

   後記

第4 裁判所の認可決定

   後記

第5 スケジュール

1  申立てまで

(1)申立人(通常は申立人から個人再生手続申立て等を受任した弁護士)による、下記①~⑤に関する調査及び資料収集

① 資産(預貯金・現金、保険契約、貸金、退職金、自動車、不動産・・・) ② 負債・担保 ③ 家計収支 ④ 事業収支(個人事業主の場合) ⑤ その他(可処分所得)

 このほか、

(a)申立てに至った事情 (b)再生計画の見通し

 

 あわせて、債務者に対し、・節約+弁済原資の積立て ・家計収支表の作成 ・偏ぱ弁済の禁止等を指導する。

 弁済原資の積立ては、再生計画認可決定確定後における弁済に備えてのものであること、また、認可決定の判断に当た再生計画案の履行可能性の判断材料とするためであることから、積み立てた金員は、清算価値を判断するに当たっては考慮外とする(文献①186頁)。

(2)申立書作成等

① 申立書 ② 債権者一覧表 ③ 財産目録 ④ 陳述書 ⑤ 家計収支表 ⑥ その他

 

2  申立て後

 以下は、大阪地方裁判所における標準的なスケジュールである。

① 手続開始決定

  申立てから2週間以内

  事件記録符合

  (再イ)小規模個人再生事件

  (再ロ)給与所得者等再生事件

 

 再生債務者は、遅くとも開始決定後から、再生計画案で想定される月次弁済額を専用口座で積み立てる必要がある。この積立て状況は、再生計画案の提出時に報告する必要があり、再生計画案は、再生計画案の履行可能性を判断する資料とする。

② 債権届出期間

  開始決定日から4週間

③ 一般異議申述期間

  債権届出期間の終期から1週間後

④ 再生計画案の提出期限

ⅰ 一般異議申述期間の終期から1週間後

ⅱ 再生計画案の提出期限は、個人再生手続では伸張されないのが原則である。また、提出期限までに再生計画案が提出されない場合(単純に期限を失念して徒過した場合を含む。)、手続は廃止される(民事再生法191条2号)。提出された再生計画案が決議に付するに足りないものである場合も、手続は廃止される。

⑤ 書面による決議に付する旨の決定又は(給与所得者等再生)意見聴取期間/書面による決議の回答期間又は意見聴取期間の満了

  再生計画案の提出日の3日後から4週間 

⑥ 認可決定

  回答期間(意見聴取期間)の終期の3日後

民事再生法 第十三章 小規模個人再生及び給与所得者等再生に関する特則 

第一節 小規模個人再生

○ 民事再生法221条(手続開始の要件等)

1項 個人である債務者のうち、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあり、かつ、再生債権の総額(住宅資金貸付債権の額、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額及び再生手続開始前の罰金等の額を除く。)が五千万円を超えないものは、この節に規定する特則の適用を受ける再生手続(以下「小規模個人再生」という。)を行うことを求めることができる。

2項 小規模個人再生を行うことを求める旨の申述は、再生手続開始の申立ての際(債権者が再生手続開始の申立てをした場合にあっては、再生手続開始の決定があるまで)にしなければならない。

3項 前項の申述をするには、次に掲げる事項を記載した書面(以下「債権者一覧表」という。)を提出しなければならない。

一 再生債権者の氏名又は名称並びに各再生債権の額及び原因

二 別除権者については、その別除権の目的である財産及び別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる再生債権の額(以下「担保不足見込額」という。)

三 住宅資金貸付債権については、その旨

四 住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思があるときは、その旨

五 その他最高裁判所規則で定める事項

4項 再生債務者は、債権者一覧表に各再生債権についての再生債権の額及び担保不足見込額を記載するに当たっては、当該額の全部又は一部につき異議を述べることがある旨をも記載することができる。

5項 第一項に規定する再生債権の総額の算定及び債権者一覧表への再生債権の額の記載に関しては、第八十七条第一項第一号から第三号までに掲げる再生債権は、当該各号に掲げる債権の区分に従い、それぞれ当該各号に定める金額の債権として取り扱うものとする。

6項 再生債務者は、第二項の申述をするときは、当該申述が第一項又は第三項に規定する要件に該当しないことが明らかになった場合においても再生手続の開始を求める意思があるか否かを明らかにしなければならない。ただし、債権者が再生手続開始の申立てをした場合については、この限りでない。

 

7項 裁判所は、第二項の申述が前項本文に規定する要件に該当しないことが明らかであると認めるときは、再生手続開始の決定前に限り、再生事件を通常の再生手続により行う旨の決定をする。ただし、再生債務者が前項本文の規定により再生手続の開始を求める意思がない旨を明らかにしていたときは、裁判所は、再生手続開始の申立てを棄却しなければならない。

1 民事再生の申立て

 個人再生手続は民事再生手続の特則であるため、利用に当たり、下記①②の要件を充たす必要がある。②の要件を充足しない場合、手続開始決定を受けることができず、申立ては棄却される。

① 民事再生法21条(再生手続開始の申立て)

1項 債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるときは、債務者は、裁判所に対し、再生手続開始の申立てをすることができる。債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないときも、同様とする。

 

② 民事再生法第二十五条(再生手続開始の条件) 

  次の各号のいずれかに該当する場合には、裁判所は、再生手続開始の申立てを棄却しなければならない。

一 再生手続の費用の予納がないとき。

二 裁判所に破産手続又は特別清算手続が係属し、その手続によることが債権者の一般の利益に適合するとき。

三 再生計画案の作成若しくは可決の見込み又は再生計画の認可の見込みがないことが明らかであるとき。

四 不当な目的で再生手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき。

 

2 小規模個人再生

<利用適格要件>(本条1項)

① 個人の債務者

② 将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがある

③ 再生債権の総額(住宅資金貸付債権の額、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額及び再生手続開始前の罰金等の額を除く。)が5000万円を超えないこと。

 

 ③は5000万円要件ともいい、おおまかにいうと、住宅ローンを除く負債総額が5000万円以下であることである。

3 給与所得者等再生

<利用適格要件>(民事再生法239条1項)

1の小規模個人再生の利用適格要件①~③のほか、利用に当たり下記④⑤の要件を充足する必要がある。

④ 収入定期・安定要件

(ⅰ)給与又これに類する定期的な収入を得る見込みがある者

+ (ⅱ)その額の変動の幅が小さいと見込まれるもの

⑤ 給与所得者等再生申立ての制限事由に当たらないこと

 民事再生法239条5項(後記)

4 個人事業者

 個人事業者も利用適格要件を満たせば、個人再生を利用できるが、一般的には、収入変動の幅が小さくないため、給与所得者等再生の利用適格要件のうち「給与又これに類する定期的な収入を得る見込みがある者 + その額の変動の幅が小さいと見込まれるもの」に当たることは難しいとされている(文献②510頁)。

 よって、小規模個人再生が利用されるのが一般と思われるが、この場合、リース物件(商売道具をリースにしている場合)の取扱いには注意を要する。

 リース債権も再生債権であるから、再生計画による弁済となるのが原則であるが(民事再生法85条)、そうすると、リース債権者は、約定に従い物件を引き揚げるおそれがあり、もしそうなると、債務者は事業継続が困難となるおそれがある。そこで、この場合、リース債権者者との間でいわゆる別除権協定を締結し、共益債権化し(民事再生法119条)弁済できる状況にしておく必要がある。詳細は、文献②503頁。

 

○ 民事再生法222条(再生手続開始に伴う措置)
1項 小規模個人再生においては、裁判所は、再生手続開始の決定と同時に、債権届出期間のほか、届出があった再生債権に対して異議を述べることができる期間をも定めなければならない。この場合においては、一般調査期間を定めることを要しない。
2項 裁判所は、再生手続開始の決定をしたときは、直ちに、再生手続開始の決定の主文、債権届出期間及び前項に規定する届出があった再生債権に対して異議を述べることができる期間(以下「一般異議申述期間」という。)を公告しなければならない。
3項 再生債務者及び知れている再生債権者には、前項に規定する事項を通知しなければならない。
4項 知れている再生債権者には、前条第三項各号及び第四項の規定により債権者一覧表に記載された事項を通知しなければならない。
5項 第二項及び第三項の規定は、債権届出期間に変更を生じた場合について準用する。
○ 民事再生法223条(個人再生委員)
1項 裁判所は、第二百二十一条第二項の申述があった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、一人又は数人の個人再生委員を選任することができる。ただし、第二百二十七条第一項本文に規定する再生債権の評価の申立てがあったときは、当該申立てを不適法として却下する場合を除き、個人再生委員の選任をしなければならない。
2項 裁判所は、前項の規定による決定をする場合には、個人再生委員の職務として、次に掲げる事項の一又は二以上を指定するものとする。
一 再生債務者の財産及び収入の状況を調査すること。
二 第二百二十七条第一項本文に規定する再生債権の評価に関し裁判所を補助すること。
三 再生債務者が適正な再生計画案を作成するために必要な勧告をすること。
3項 裁判所は、第一項の規定による決定において、前項第一号に掲げる事項を個人再生委員の職務として指定する場合には、裁判所に対して調査の結果の報告をすべき期間をも定めなければならない。
4項 裁判所は、第一項の規定による決定を変更し、又は取り消すことができる。
5項 第一項及び前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
6項 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
7項 第五項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。
8項 第二項第一号に掲げる事項を職務として指定された個人再生委員は、再生債務者又はその法定代理人に対し、再生債務者の財産及び収入の状況につき報告を求め、再生債務者の帳簿、書類その他の物件を検査することができる。
9項 個人再生委員は、費用の前払及び裁判所が定める報酬を受けることができる。
10項 第五十四条第三項、第五十七条、第五十八条、第六十条及び第六十一条第二項から第四項までの規定は、個人再生委員について準用する。

1 個人再生委員の意義

 個人再生手続において、裁判所の再生債務者に対する監督を補助する等の期間である。通常の場合、裁判所が、再生債務者及び債権者とは関係がない弁護士を選任する。

2 選任が民事再生法上、必要とされる場合

 民事再生法227条1項本文に規定する再生債権の評価申立てがあった場合(除く:不適法却下の場合)(本条1項ただし書) 

本条は、小規模個人再生手続に準用される(民事再生法224条)。

3 裁判所が裁量により選任する場合

  裁判所が必要があると認めた事件(本条1項本文)

  利害関係人の申立てによるほか、職権で選任できる。

  この点に関する大阪地方裁判所の運用は次のとおりである。なお、予納金として30万円が必要とされる。

ⅰ 債務者本人(受任者として弁護士を選任しない)申立人て

ⅱ 弁護士が債務者本人を代理して申立て(弁護士申立て)

  この場合は、下記例外に当たる場合を除き選任されない。

(a)事業に基づく負債が3000万円を超過する場合等

(b)申立て手続に不備があり、受任弁護士が手続に十分に対応できないと認められるとき 

○ 民事再生法224条(再生債権の届出の内容)
1項 小規模個人再生においては、再生手続に参加しようとする再生債権者は、議決権の額を届け出ることを要しない。
2項 小規模個人再生における再生債権の届出に関しては、第二百二十一条第五項の規定を準用する。
○ 民事再生法225条(再生債権のみなし届出) 
 債権者一覧表に記載されている再生債権者は、債権者一覧表に記載されている再生債権については、債権届出期間内に裁判所に当該再生債権の届出又は当該再生債権を有しない旨の届出をした場合を除き、当該債権届出期間の初日に、債権者一覧表の記載内容と同一の内容で再生債権の届出をしたものとみなす。

1 再生債権のみなし届出を定めたものである。

2 給与所得者等再生に準用(民事再生法244条)

○ 民事再生法226条(届出再生債権に対する異議)
1項 再生債務者及び届出再生債権者は、一般異議申述期間内に、裁判所に対し、届出があった再生債権の額又は担保不足見込額について、書面で、異議を述べることができる。ただし、再生債務者は、債権者一覧表に記載した再生債権の額及び担保不足見込額であって第二百二十一条第四項の規定により異議を述べることがある旨を債権者一覧表に記載していないものについては、異議を述べることができない。
2項 第九十五条の規定による届出又は届出事項の変更があった場合には、裁判所は、その再生債権に対して異議を述べることができる期間(以下「特別異議申述期間」という。)を定めなければならない。
3項 再生債務者及び届出再生債権者は、特別異議申述期間内に、裁判所に対し、特別異議申述期間に係る再生債権の額又は担保不足見込額について、書面で、異議を述べることができる。
4項 第百二条第三項から第五項までの規定は特別異議申述期間を定める決定又は一般異議申述期間若しくは特別異議申述期間を変更する決定をした場合における裁判書の送達について、第百三条第二項の規定は第二項の場合について準用する。
5項 再生手続開始前の罰金等及び債権者一覧表に住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思がある旨の記載がされた場合における第百九十八条第一項に規定する住宅資金貸付債権については、前各項の規定は、適用しない。
6項 再生債務者が債権者一覧表に住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思がある旨の記載をした場合には、第百九十八条第一項に規定する住宅資金貸付債権を有する再生債権者であって当該住宅資金貸付債権以外に再生債権を有しないもの及び保証会社であって住宅資金貸付債権に係る債務の保証に基づく求償権以外に再生債権を有しないものは、第一項本文及び第三項の異議を述べることができない。

1 個人再生手続における債権調査では、通常の再生手続と異なり、再生債権の存否及び額を実体的に確定するものではなき、手続で必要な範囲で再生債権の額を定めるものである(手続内確定)。

2 再生債務者は、債権者一覧表に記載した債権のうち異議留保していないものについて異議を述べることができないので(本条1項ただし書)、申立て段階で注意が必要である。 

3 給与所得者等再生に準用(民事再生法244条)

○ 民事再生法227条(再生債権の評価)

1項 前条第一項本文又は第三項の規定により再生債務者又は届出再生債権者が異議を述べた場合には、当該再生債権を有する再生債権者は、裁判所に対し、異議申述期間の末日から三週間の不変期間内に、再生債権の評価の申立てをすることができる。

 ただし、当該再生債権が執行力ある債務名義又は終局判決のあるものである場合には、当該異議を述べた者が当該申立てをしなければならない。

2項 前項ただし書の場合において、前項本文の不変期間内に再生債権の評価の申立てがなかったとき又は当該申立てが却下されたときは、前条第一項本文又は第三項の異議は、なかったものとみなす。

3項 再生債権の評価の申立てをするときは、申立人は、その申立てに係る手続の費用として裁判所の定める金額を予納しなければならない。

4項 前項に規定する費用の予納がないときは、裁判所は、再生債権の評価の申立てを却下しなければならない。

5項 裁判所は、第二百二十三条第一項の規定による決定において、同条第二項第二号に掲げる事項を個人再生委員の職務として指定する場合には、裁判所に対して調査の結果の報告をすべき期間をも定めなければならない。

6項 第二百二十三条第二項第二号に掲げる事項を職務として指定された個人再生委員は、再生債務者若しくはその法定代理人又は再生債権者(当該個人再生委員が同項第一号に掲げる事項をも職務として指定された場合にあっては、再生債権者)に対し、再生債権の存否及び額並びに担保不足見込額に関する資料の提出を求めることができる。

7項 再生債権の評価においては、裁判所は、再生債権の評価の申立てに係る再生債権について、その債権の存否及び額又は担保不足見込額を定める。

8項 裁判所は、再生債権の評価をする場合には、第二百二十三条第二項第二号に掲げる事項を職務として指定された個人再生委員の意見を聴かなければならない。

9項 第七項の規定による再生債権の評価については、第二百二十一条第五項の規定を準用する。

10項 再生手続開始前の罰金等及び債権者一覧表に住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思がある旨の記載がされた場合における第百九十八条第一項に規定する住宅資金貸付債権については、前各項の規定は、適用しない。

○ 民事再生法228条(貸借対照表の作成等の免除)
 小規模個人再生においては、再生債務者は、第百二十四条第二項の規定による貸借対照表の作成及び提出をすることを要しない。
○ 民事再生法第229条(再生計画による権利の変更の内容等)
1項 小規模個人再生における再生計画による権利の変更の内容は、不利益を受ける再生債権者の同意がある場合又は少額の再生債権の弁済の時期若しくは第八十四条第二項に掲げる請求権について別段の定めをする場合を除き、再生債権者の間では平等でなければならない。
2項 再生債権者の権利を変更する条項における債務の期限の猶予については、前項の規定により別段の定めをする場合を除き、次に定めるところによらなければならない。
一 弁済期が三月に一回以上到来する分割払の方法によること。
二 最終の弁済期を再生計画認可の決定の確定の日から三年後の日が属する月中の日(特別の事情がある場合には、再生計画認可の決定の確定の日から五年を超えない範囲内で、三年後の日が属する月の翌月の初日以降の日)とすること。
3項 第一項の規定にかかわらず、再生債権のうち次に掲げる請求権については、当該再生債権者の同意がある場合を除き、債務の減免の定めその他権利に影響を及ぼす定めをすることができない。
一 再生債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
二 再生債務者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
三 次に掲げる義務に係る請求権
イ 民法第七百五十二条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第七百六十六条(同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第八百七十七条から第八百八十条までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
4項 住宅資金特別条項によって権利の変更を受ける者と他の再生債権者との間については第一項の規定を、住宅資金特別条項については第二項の規定を適用しない。
 
※ 給与所得者等再生に準用(244条)

 1 権利変更に関する一般的基準

(1)原則 

 形式的平等

 全ての再生債権者間で平等(一律の扱い)でなければならず)、特定の再生債権者を優遇したり、劣後させてはならない。

 個人再生手続の簡便・迅速性を重視した(文献③115頁)。

(2)例外

① 不利益を受ける再生債権者の同意がある場合

② 少額の再生債権の弁済の時期

③ 民事再生法84条2項に掲げる請求権(再生手続開始後の利息、再生手続開始後の不履行による損害賠償及び違約金、再生手続参加の費用)

(3)定め

① 再生債権に対する権利の変更

② 再生債権に対する弁済の方法

2 再生債務者による再生計画案の作成

(1)弁済金額

① 法定の最低弁済金額以上とすること

② 再生手続開始決定後の利息・損害金の例外 本条

(2)弁済期(本条2項)

① 弁済期が3か月に1回以上到来する分割払の方法によること。

ⅰ 最終の弁済期を再生計画認可の決定の確定の日から三年後の日が属する月中の日とすること。
 
ⅱ 特別の事情がある場合には、再生計画認可の決定の確定の日から五年を超えない範囲内で、三年後の日が属する月の翌月の初日以降の日
 
ⅰ 債権カットする等の不利益を債権者に与える個人再生手続において、債務者には、将来の収入から3年間は精一杯の弁済を求めるのが相当である。→3年未満× 3年○ 
(文献④p209)
 
ⅱ 特別の事情が認められる場合
・ 債務者の収入から、住宅ローン債権を住宅資金特別条項に基づき支払いながら、一般の再生債権を3年で支払うことが困難である場合(文献④p211)
・ 安定した収入はあるものの3年では最低弁済規準をクリアーする計画が立てられないという場合(文献⑤p916)
 
③ 少額債権の例外 本条1項

2 本条3項は、非免責債権の取扱いを定めたものである。

(1)平成16年(2004年)改正により、個人再生手続において、非免責債権が規定された。

 租税等の請求権や雇用契約に基づいて生じた使用人の請求権等は、破産法では非免責債権と規定されている(同法253条1項1号5号)。これら請求権は、個人再生手続では、一般優先債権に該当し、再生計画によらない随時弁済の対象である(民事再生法122条)。

(2)非免責債権も、利用適格要件(5000万円要件)において考慮され、債権者一覧表に記載する必要もある。また、再生債権であるから、再生手続によらない弁済は禁止される(民事再生法85条)。これらの再生計画案認可決定に至るまでの手続においては、通常の再生債権と同じ取扱いである。

 非免責債権が通常の再生債権と異なる特別の取扱いを受けるのは、次のとおりである。

 非免責債権は、再生計画案における一般基準(民事再生法232条2項、156条)に従って弁済した後の残余について

免責されないため、弁済期間終了後、その残余を直ちに支払う必要がある(民事再生法232条4項)。

 

  

 

文献①189頁、文献②498頁。

 

○ 民事再生法230条(再生計画案の決議)

1項 裁判所は、一般異議申述期間(特別異議申述期間が定められた場合には、当該特別異議申述期間を含む。)が経過し、かつ、第百二十五条第一項の報告書(財産状況報告書)の提出がされた後でなければ、再生計画案を決議に付することができない。当該一般異議申述期間内に第二百二十六条第一項本文の規定による異議が述べられた場合(特別異議申述期間が定められた場合には、当該特別異議申述期間内に同条第三項の規定による異議が述べられた場合を含む。)には、第二百二十七条第一項本文の不変期間を経過するまでの間(当該不変期間内に再生債権の評価の申立てがあったときは、再生債権の評価がされるまでの間)も、同様とする。

2項 裁判所は、再生計画案について第百七十四条第二項各号(第三号を除く。住宅資金特別条項を定めた再生計画案については、第二百二条第二項第一号から第三号まで)又は次条第二項各号のいずれかに該当する事由があると認める場合には、その再生計画案を決議に付することができない。

3項 再生計画案の提出があったときは、裁判所は、前二項の場合を除き、議決権行使の方法としての第百六十九条第二項第二号に掲げる方法(書面による決議)及び第百七十二条第二項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定により議決権の不統一行使をする場合における裁判所に対する通知の期限を定めて、再生計画案を決議に付する旨の決定をする。

4項 前項の決定をした場合には、その旨を公告するとともに、議決権者に対して、同項に規定する期限、再生計画案の内容又はその要旨及び再生計画案に同意しない者は裁判所の定める期間内に同項の規定により定められた方法によりその旨を回答すべき旨を通知しなければならない。

5項 第三項の決定があった場合における第百七十二条第二項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、同条第二項中「第百六十九条第二項前段」とあるのは、「第二百三十条第三項」とする。

6項 第四項の期間内に再生計画案に同意しない旨を同項の方法により回答した議決権者が議決権者総数の半数に満たず、かつ、その議決権の額が議決権者の議決権の総額の二分の一を超えないときは、再生計画案の可決があったものとみなす。

7項 再生計画案に同意しない旨を第四項の方法により回答した議決権者のうち第百七十二条第二項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定によりその有する議決権の一部のみを行使したものがあるときの前項の規定の適用については、当該議決権者一人につき、議決権者総数に一を、再生計画案に同意しない旨を第四項の方法により回答した議決権者の数に二分の一を、それぞれ加算するものとする。

8項 届出再生債権者は、一般異議申述期間又は特別異議申述期間を経過するまでに異議が述べられなかった届出再生債権(第二百二十六条第五項に規定するものを除く。以下「無異議債権」という。)については届出があった再生債権の額又は担保不足見込額に応じて、第二百二十七条第七項の規定により裁判所が債権の額又は担保不足見込額を定めた再生債権(以下「評価済債権」という。)についてはその額に応じて、それぞれ議決権を行使することができる。

 

※ 給与所得者等再生に準用される。

1 

2 裁判所による再生計画案を決議に付する決定 本条3項

① 時期について、本条1項

② 再生計画案に不認可事由がある場合は決議に付する決定はできない。本条2項

 不認可事由

ⅰ 民事再生法174条2項各号(3号を除く)

ⅱ 住宅資金特別条項を定めた場合 民事再生法202条2項1号~3号

3 再生計画案の可決

  消極的同意(本条6項)で足りる。

○ 民事再生法231条(再生計画の認可又は不認可の決定)
1項 小規模個人再生において再生計画案が可決された場合には、裁判所は、第百七十四条第二項(当該再生計画案が住宅資金特別条項を定めたものであるときは、第二百二条第二項)又は次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする。
2項 小規模個人再生においては、裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合にも、再生計画不認可の決定をする。
一 再生債務者が将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがないとき。
二 無異議債権の額及び評価済債権の額の総額(住宅資金貸付債権の額、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額及び第八十四条第二項に掲げる請求権の額を除く。)が五千万円を超えているとき。
三 前号に規定する無異議債権の額及び評価済債権の額の総額が三千万円を超え五千万円以下の場合においては、当該無異議債権及び評価済債権(別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権及び第八十四条第二項各号に掲げる請求権を除く。以下「基準債権」という。)に対する再生計画に基づく弁済の総額(以下「計画弁済総額」という。)が当該無異議債権の額及び評価済債権の額の総額の十分の一を下回っているとき。
四 第二号に規定する無異議債権の額及び評価済債権の額の総額が三千万円以下の場合においては、計画弁済総額が基準債権の総額の五分の一又は百万円のいずれか多い額(基準債権の総額が百万円を下回っているときは基準債権の総額、基準債権の総額の五分の一が三百万円を超えるときは三百万円)を下回っているとき。
五 再生債務者が債権者一覧表に住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思がある旨の記載をした場合において、再生計画に住宅資金特別条項の定めがないとき。

1 再生計画における最低弁済額

(1)小規模個人再生手続の場合

① 負債総額基準による算出額、② 清算配当率基準による算出金額のうち高い金額

 

① 負債総額基準

  再生債権の総額(住宅ローン等を除く)により、次のとおり区分される。

 100万円未満の人・・・・・・総額全部

 100万円以上500万円以下の人・・・・・・100万円

 500万円を超え1500万円以下の人・・・・・・総額の5分の1

 1500万円を超え3000万円以下の人・・・・・・300万円

 3000万円を超え5000万円以下の人・・・・・・総額の10分の1

 

② 清算配当率基準

 破産した場合の配当(民事再生法230条2項、174条2項4号)

 

(2)給与所得者等再生手続の場合

① 負債総額基準による算出金額、② 清算配当率基準による算出金額、③ 可処分所得2年分基準による算出金額のうち、最も高い金額

 

① 負債総額基準(1)①と同じ。

 

② 清算配当率基準(1)②と同じ。

  民事再生法241条2項2号

 

③ 可処分所得2年分基準

  民事再生法241条2項7号 後記

 

○ 民事再生法232条(再生計画の効力等)
1項 小規模個人再生において再生計画認可の決定が確定したときは、第八十七条第一項第一号から第三号までに掲げる債権は、それぞれ当該各号に定める金額の再生債権に変更される。
2項 小規模個人再生において再生計画認可の決定が確定したときは、すべての再生債権者の権利(第八十七条第一項第一号から第三号までに掲げる債権については前項の規定により変更された後の権利とし、第二百二十九条第三項各号に掲げる請求権及び再生手続開始前の罰金等を除く。)は、第百五十六条の一般的基準に従い、変更される。
3項 前項に規定する場合における同項の規定により変更された再生債権であって無異議債権及び評価済債権以外のものについては、再生計画で定められた弁済期間が満了する時(その期間の満了前に、再生計画に基づく弁済が完了した場合又は再生計画が取り消された場合にあっては弁済が完了した時又は再生計画が取り消された時。次項及び第五項において同じ。)までの間は、弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為(免除を除く。)をすることができない。ただし、当該変更に係る再生債権が、再生債権者がその責めに帰することができない事由により債権届出期間内に届出をすることができず、かつ、その事由が第二百三十条第三項に規定する決定前に消滅しなかったもの又は再生債権の評価の対象となったものであるときは、この限りでない。
4項 第二項に規定する場合における第二百二十九条第三項各号に掲げる請求権であって無異議債権及び評価済債権であるものについては、第百五十六条の一般的基準に従って弁済をし、かつ、再生計画で定められた弁済期間が満了する時に、当該請求権の債権額から当該弁済期間内に弁済をした額を控除した残額につき弁済をしなければならない。
5項 第二項に規定する場合における第二百二十九条第三項各号に掲げる請求権であって無異議債権及び評価済債権以外のものについては、再生計画で定められた弁済期間が満了する時に、当該請求権の債権額の全額につき弁済をしなければならない。ただし、第三項ただし書に規定する場合には、前項の規定を準用する。
6項 第二項に規定する場合における第百八十二条、第百八十九条第三項及び第二百六条第一項の規定の適用については、第百八十二条中「認可された再生計画の定めによって認められた権利又は前条第一項の規定により変更された後の権利」とあるのは「第二百三十二条第二項の規定により変更された後の権利及び第二百二十九条第三項各号に掲げる請求権」と、第百八十九条第三項中「再生計画の定めによって認められた権利の全部(履行された部分を除く。)」とあるのは「第二百三十二条第二項の規定により変更された後の権利の全部及び第二百二十九条第三項各号に掲げる請求権(第二百三十二条第四項(同条第五項ただし書において準用する場合を含む。)の規定により第百五十六条の一般的基準に従って弁済される部分に限る。)であって、履行されていない部分」と、第二百六条第一項中「再生計画の定めによって認められた権利(住宅資金特別条項によって変更された後のものを除く。)の全部(履行された部分を除く。)」とあるのは「第二百三十二条第二項の規定により変更された後の権利(住宅資金特別条項によって変更された後のものを除く。)の全部及び第二百二十九条第三項各号に掲げる請求権(第二百三十二条第四項(同条第五項ただし書において準用する場合を含む。)の規定により第百五十六条の一般的基準に従って弁済される部分に限る。)であって、履行されていない部分」とする。
7項 住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の決定が確定した場合における第三項から第五項までの規定の適用については、これらの規定中「再生計画で定められた弁済期間」とあるのは「再生計画(住宅資金特別条項を除く。)で定められた弁済期間」と、第三項本文中「再生計画に基づく弁済」とあるのは「再生計画(住宅資金特別条項を除く。)に基づく弁済」と、同項ただし書中「又は再生債権の評価の対象となったもの」とあるのは「若しくは再生債権の評価の対象となったものであるとき、又は当該変更後の権利が住宅資金特別条項によって変更された後の住宅資金貸付債権」とする。
8項 第一項及び第二項の規定にかかわらず、共助対象外国租税の請求権についてのこれらの規定による権利の変更の効力は、租税条約等実施特例法第十一条第一項の規定による共助との関係においてのみ主張することができる。

○ 民事再生法233条(再生手続の終結)

 小規模個人再生においては、再生手続は、再生計画認可の決定の確定によって当然に終結する。

○ 民事再生法234条(再生計画の変更)
1項 小規模個人再生においては、再生計画認可の決定があった後やむを得ない事由で再生計画を遂行することが著しく困難となったときは、再生債務者の申立てにより、再生計画で定められた債務の期限を延長することができる。この場合においては、変更後の債務の最終の期限は、再生計画で定められた債務の最終の期限から二年を超えない範囲で定めなければならない。
2項 前項の規定により再生計画の変更の申立てがあった場合には、再生計画案の提出があった場合の手続に関する規定を準用する。
3項 第百七十五条(第二項を除く。)及び第百七十六条の規定は、再生計画の変更の決定があった場合について準用する。
○ 民事再生法235条(計画遂行が極めて困難となった場合の免責)
1項 再生債務者がその責めに帰することができない事由により再生計画を遂行することが極めて困難となり、かつ、次の各号のいずれにも該当する場合には、裁判所は、再生債務者の申立てにより、免責の決定をすることができる。
一 第二百三十二条第二項の規定により変更された後の各基準債権及び同条第三項ただし書に規定する各再生債権に対してその四分の三以上の額の弁済を終えていること。
二 第二百二十九条第三項各号に掲げる請求権(第二百三十二条第四項(同条第五項ただし書において準用する場合を含む。)の規定により第百五十六条の一般的基準に従って弁済される部分に限る。)に対してその四分の三以上の額の弁済を終えていること。
三 免責の決定をすることが再生債権者の一般の利益に反するものでないこと。
四 前条の規定による再生計画の変更をすることが極めて困難であること。
2項 前項の申立てがあったときは、裁判所は、届出再生債権者の意見を聴かなければならない。
3項 免責の決定があったときは、再生債務者及び届出再生債権者に対して、その主文及び理由の要旨を記載した書面を送達しなければならない。
4項 第一項の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
5項 免責の決定は、確定しなければその効力を生じない。
6項 免責の決定が確定した場合には、再生債務者は、履行した部分を除き、再生債権者に対する債務(第二百二十九条第三項各号に掲げる請求権及び再生手続開始前の罰金等を除く。)の全部についてその責任を免れる。
7項 免責の決定の確定は、別除権者が有する第五十三条第一項に規定する担保権、再生債権者が再生債務者の保証人その他再生債務者と共に債務を負担する者に対して有する権利及び再生債務者以外の者が再生債権者のために提供した担保に影響を及ぼさない。
8項 再生計画が住宅資金特別条項を定めたものである場合における第二項及び第三項の規定の適用については、第二項中「届出再生債権者」とあるのは「届出再生債権者及び住宅資金特別条項によって権利の変更を受けた者」と、第三項中「及び届出再生債権者」とあるのは「、届出再生債権者及び住宅資金特別条項によって権利の変更を受けた者」とする。
9項 第六項の規定にかかわらず、共助対象外国租税の請求権についての同項の規定による免責の効力は、租税条約等実施特例法第十一条第一項の規定による共助との関係においてのみ主張することができる。

○ 民事再生法236条(再生計画の取消し)

 小規模個人再生において再生計画認可の決定が確定した場合には、計画弁済総額が、再生計画認可の決定があった時点で再生債務者につき破産手続が行われた場合における基準債権に対する配当の総額を下回ることが明らかになったときも、裁判所は、再生債権者の申立てにより、再生計画取消しの決定をすることができる。この場合においては、第百八十九条第二項の規定を準用する。

○ 民事再生法237条(再生手続の廃止)
1項 小規模個人再生においては、第二百三十条第四項の期間内に再生計画案に同意しない旨を同項の方法により回答した議決権者が、議決権者総数の半数以上となり、又はその議決権の額が議決権者の議決権の総額の二分の一を超えた場合にも、裁判所は、職権で、再生手続廃止の決定をしなければならない。この場合においては、同条第七項の規定を準用する。
2項 小規模個人再生において、再生債務者が財産目録に記載すべき財産を記載せず、又は不正の記載をした場合には、裁判所は、届出再生債権者若しくは個人再生委員の申立てにより又は職権で、再生手続廃止の決定をすることができる。この場合においては、第百九十三条第二項の規定を準用する。
○ 民事再生法238条(通常の再生手続に関する規定の適用除外)
 小規模個人再生においては、第三十四条第二項、第三十五条、第三十七条本文(約定劣後再生債権に係る部分に限る。)及びただし書、第四十条、第四十条の二(民法第四百二十三条第一項又は第四百二十三条の七の規定により再生債権者の提起した訴訟に係る部分を除く。)、第四十二条第二項(約定劣後再生債権に係る部分に限る。)、第三章第一節及び第二節、第八十五条第六項、第八十七条第三項、第八十九条第二項及び第九十四条第一項(これらの規定中約定劣後再生債権に係る部分に限る。)、第四章第三節(第百十三条第二項から第四項までを除く。)及び第四節、第百二十六条、第六章第二節、第百五十五条第一項から第三項まで、第百五十六条(約定劣後再生債権に係る部分に限る。)、第百五十七条から第百五十九条まで、第百六十三条第二項、第百六十四条第二項後段、第百六十五条第一項、第七章第三節(第百七十二条を除く。)、第百七十四条第一項、第百七十四条の二、第百七十五条第二項、第百七十八条から第百八十条まで、第百八十一条第一項及び第二項、第百八十五条(第百八十九条第八項、第百九十条第二項及び第百九十五条第七項において準用する場合を含む。)、第百八十六条第三項及び第四項、第百八十七条、第百八十八条、第二百条第二項及び第四項、第二百二条第一項、第二百五条第二項並びに第十二章の規定は、適用しない。

民事再生法 第十三章 小規模個人再生及び給与所得者等再生に関する特則

第二節 給与所得者等再生

○ 民事再生法239条(手続開始の要件等)
1項 第二百二十一条第一項に規定する債務者のうち、給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれるものは、この節に規定する特則の適用を受ける再生手続(以下「給与所得者等再生」という。)を行うことを求めることができる。
2 給与所得者等再生を行うことを求める旨の申述は、再生手続開始の申立ての際(債権者が再生手続開始の申立てをした場合にあっては、再生手続開始の決定があるまで)にしなければならない。
3 再生債務者は、前項の申述をするときは、当該申述が第二百二十一条第一項又は第二百四十四条において準用する第二百二十一条第三項に規定する要件に該当しないことが明らかになった場合に通常の再生手続による手続の開始を求める意思があるか否か及び第五項各号のいずれかに該当する事由があることが明らかになった場合に小規模個人再生による手続の開始を求める意思があるか否かを明らかにしなければならない。
 ただし、債権者が再生手続開始の申立てをした場合については、この限りでない。
4 裁判所は、第二項の申述が前項本文に規定する要件に該当しないことが明らかであると認めるときは、再生手続開始の決定前に限り、再生事件を通常の再生手続により行う旨の決定をする。
 ただし、再生債務者が前項本文の規定により通常の再生手続による手続の開始を求める意思がない旨を明らかにしていたときは、裁判所は、再生手続開始の申立てを棄却しなければならない。
5 前項に規定する場合のほか、裁判所は、第二項の申述があった場合において、次の各号のいずれかに該当する事由があることが明らかであると認めるときは、再生手続開始の決定前に限り、再生事件を小規模個人再生により行う旨の決定をする。
 ただし、再生債務者が第三項本文の規定により小規模個人再生による手続の開始を求める意思がない旨を明らかにしていたときは、裁判所は、再生手続開始の申立てを棄却しなければならない。
一 再生債務者が、給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者に該当しないか、又はその額の変動の幅が小さいと見込まれる者に該当しないこと。
二 再生債務者について次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に当該申述がされたこと。
イ 給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ロ 第二百三十五条第一項(第二百四十四条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
ハ 破産法第二百五十二条第一項に規定する免責許可の決定が確定したこと 当該決定の確定の日

○ 民事再生法240条(再生計画案についての意見聴取)

1項 給与所得者等再生において再生計画案の提出があった場合には、裁判所は、次に掲げる場合を除き、再生計画案を認可すべきかどうかについての届出再生債権者の意見を聴く旨の決定をしなければならない。

一 再生計画案について次条第二項各号のいずれかに該当する事由があると認めるとき。

二 一般異議申述期間が経過していないか、又は当該一般異議申述期間内に第二百四十四条において準用する第二百二十六条第一項本文の規定による異議が述べられた場合において第二百四十四条において準用する第二百二十七条第一項本文の不変期間が経過していないとき(当該不変期間内に再生債権の評価の申立てがあったときは、再生債権の評価がされていないとき)

三 特別異議申述期間が定められた場合において、当該特別異議申述期間が経過していないか、又は当該特別異議申述期間内に第二百四十四条において準用する第二百二十六条第三項の規定による異議が述べられたときであって第二百四十四条において準用する第二百二十七条第一項本文の不変期間が経過していないとき(当該不変期間内に再生債権の評価の申立てがあったときは、再生債権の評価がされていないとき)

四 第百二十五条第一項の報告書の提出がされていないとき。

2項 前項の決定をした場合には、その旨を公告し、かつ、届出再生債権者に対して、再生計画案の内容又はその要旨を通知するとともに、再生計画案について次条第二項各号のいずれかに該当する事由がある旨の意見がある者は裁判所の定める期間内にその旨及び当該事由を具体的に記載した書面を提出すべき旨を通知しなければならない。

3項 給与所得者等再生における第九十五条第四項及び第百六十七条ただし書の規定の適用については、これらの規定中「再生計画案を決議に付する旨の決定」とあるのは、「再生計画案を認可すべきかどうかについての届出再生債権者の意見を聴く旨の決定」とする。

○ 民事再生法241条(再生計画の認可又は不認可の決定等)
1項 前条第二項の規定により定められた期間が経過したときは、裁判所は、次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする。
2項 裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をする。
一 第百七十四条第二項第一号又は第二号に規定する事由(再生計画が住宅資金特別条項を定めたものである場合については、同項第一号又は第二百二条第二項第二号に規定する事由)があるとき。
二 再生計画が再生債権者の一般の利益に反するとき。(清算価値保証原則)
三 再生計画が住宅資金特別条項を定めたものである場合において、第二百二条第二項第三号に規定する事由があるとき。
四 再生債務者が、給与又はこれに類する定期的な収入を得ている者に該当しないか、又はその額の変動の幅が小さいと見込まれる者に該当しないとき。
五 第二百三十一条第二項第二号から第五号までに規定する事由のいずれかがあるとき。
六 第二百三十九条第五項第二号に規定する事由があるとき。
七 計画弁済総額が、次のイからハまでに掲げる区分に応じ、それぞれイからハまでに定める額から再生債務者及びその扶養を受けるべき者の最低限度の生活を維持するために必要な一年分の費用の額を控除した額に二を乗じた額以上の額であると認めることができないとき。
イ 再生債務者の給与又はこれに類する定期的な収入の額について、再生計画案の提出前二年間の途中で再就職その他の年収について五分の一以上の変動を生ずべき事由が生じた場合 当該事由が生じた時から再生計画案を提出した時までの間の収入の合計額からこれに対する所得税、個人の道府県民税又は都民税及び個人の市町村民税又は特別区民税並びに所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第七十四条第二項に規定する社会保険料(ロ及びハにおいて「所得税等」という。)に相当する額を控除した額を一年間当たりの額に換算した額
ロ 再生債務者が再生計画案の提出前二年間の途中で、給与又はこれに類する定期的な収入を得ている者でその額の変動の幅が小さいと見込まれるものに該当することとなった場合(イに掲げる区分に該当する場合を除く。) 給与又はこれに類する定期的な収入を得ている者でその額の変動の幅が小さいと見込まれるものに該当することとなった時から再生計画案を提出した時までの間の収入の合計額からこれに対する所得税等に相当する額を控除した額を一年間当たりの額に換算した額
ハ イ及びロに掲げる区分に該当する場合以外の場合 再生計画案の提出前二年間の再生債務者の収入の合計額からこれに対する所得税等に相当する額を控除した額を二で除した額
3項 前項第七号に規定する一年分の費用の額は、再生債務者及びその扶養を受けるべき者の年齢及び居住地域、当該扶養を受けるべき者の数、物価の状況その他一切の事情を勘案して政令で定める。

1 可処分所得2年分基準(本条2項7号、3項)が、小規模個人再生と異なり給与所得者等再生において設けられた趣旨

 再生債権者の決議を省略することにより、小規模個人再生より手続を簡素化したが、可処分所得2年分基準は、再生債権者の議決権を奪う代償として、再生債務者において、できる限りの弁済をさせる必要があり、この観点から設けられた(始関正光編著 一問一答個人再生手続291頁(平成13年、商事法務研究会))。

2 計算式

可処分所得=再生債務者の収入-(税金等+再生債務者・被扶養者の最低生活費

可処分所得 × 2年

 

可処分所得算出シートを使用して算出する。

→ 文献①74頁、文献②559頁

○ 民事再生法242条(再生計画の取消し)
給与所得者等再生において再生計画認可の決定が確定した場合には、計画弁済総額が再生計画認可の決定があった時点で再生債務者につき破産手続が行われた場合における基準債権に対する配当の総額を下回り、又は再生計画が前条第二項第七号に該当することが明らかになったときも、裁判所は、再生債権者の申立てにより、再生計画取消しの決定をすることができる。この場合においては、第百八十九条第二項の規定を準用する。

○ 民事再生法243条(再生手続の廃止)

給与所得者等再生において、次の各号のいずれかに該当する場合には、裁判所は、職権で、再生手続廃止の決定をしなければならない。

一 第二百四十一条第二項各号のいずれにも該当しない再生計画案の作成の見込みがないことが明らかになったとき。

二 裁判所の定めた期間若しくはその伸長した期間内に再生計画案の提出がないとき、又はその期間内に提出された再生計画案に第二百四十一条第二項各号のいずれかに該当する事由があるとき。

○ 民事再生法244条(小規模個人再生の規定の準用)

 第二百二十一条第三項から第五項まで、第二百二十二条から第二百二十九条まで、第二百三十二条から第二百三十五条まで及び第二百三十七条第二項の規定は、給与所得者等再生について準用する。

○ 民事再生法245条(通常の再生手続に関する規定の適用除外)
給与所得者等再生においては、第二百三十八条に規定する規定並びに第八十七条第一項及び第二項、第百七十二条、第百七十四条第二項及び第三項、第百九十一条並びに第二百二条第二項の規定は、適用しない。

小規模個人再生手続における認可決定に当たり考慮すべき事情
最高裁(第三小法廷)平成29年12月19日

【事案】

再生債務者が、実際には存在しない貸付債権を意図的に債権者一覧表に記載する等の信義則に違反する行為により再生計画案を可決させた疑いが存する事案

 

【決定要旨】

1 「再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき」の不認可事由(民事再生法202条2)

① 議決権を行使した再生債権者が詐欺、強迫又は不正な利益の供与等を受けたことにより再生計画案が可決された場合はもとより、

② 再生計画案の可決が信義則に反する行為に基づいてされた場合も含まれる。

2 1②の信義則に反する行為該当性の判断

 再生債権の届け出がされ(法225条による場合を含む)、法定の期間内に異議が述べられなかったとしても、当該再生債権の存否を含め、当該再生債権の届出等に係る諸般の事情を考慮することができる。

3 本件では、

 再生債務者の行為【事案】は、再生債務者として債権者に対し公平かつ誠実に再生手続を追行する義務を負う立場にあることに照らすと(法38条2項参照)、本件再生計画案の可決が信義則に反する行為に基づいてされた疑いが存する。

 

【参照・参考文献】

杉本和士・判例セレクトMonthly(法学教室451号(2018年)142頁)

 

 

 

ゐ【参考・参照文献】

下記文献を参考・参照して作成しました。

① 大阪地方裁判所・大阪弁護士会個人再生手続運用研究会 改正法対応 事例解説 個人再生 ~大阪再生物語~ (平成18年、新日本法規)

② 川畑正文ほか編 はい6民です お答えします 倒産実務Q&A p453~ (2018年10月第2版、大阪弁護士会協同組合)

③ 例題解説 個人再生手続(令和元年、法曹会)

④ 始関正光編著 一問一答 個人再生手続(平成13年、商事法務研究会)

⑤ 園尾隆司・小林秀之編 条解民事再生法(平成15年、弘文堂) 

⑥ 木内道祥監修 全国倒産処理弁護士ネットワーク編 個人再生の実務Q&A120問

(2018年、金融財政事情研究会)

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